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Z会幼児コース教材『ぺあぜっと』食育監修者 坂本廣子先生のご逝去によせて

2018年6月28日、Z会幼児コース「食育」連載の監修者である坂本廣子先生がご逝去されました。
先生のご功績を偲び、謹んで哀悼の意を表します。

坂本廣子先生のご協力あってこそ開講できた幼児コース教材

幼児コースが世に出たのは2010年の4月。準備期間から数えると、約10年近くもの間、廣子先生にご協力いただいたことになります。

開講準備当初から、Z会スタッフの中には、目先の成果よりも、長い目で見て伸びる力、まさに「あと伸び力」を育てるような講座にしたいという思いがありました。それには、ドリル学習だけでは補えない、五感を使った体験が必要なはず――。そう考えたとき、「食育」を教材として扱いたいと思い立ったのは、ごく自然なことだったと思います。

しかし、当時「食育」を本格的に扱った教材は、長年通信教育を行ってきたZ会にも前例がありません。そのとき、幼児向け通信教育における「食育」のあり方をともに考えてくださる方として、最初に思い浮かんだのが『台所育児』や『子どもがつくるほんものごはん』など数々の良書を世に出していらっしゃった廣子先生でした。

▲1990年出版の著書『台所育児』で初めて提案した、包丁を使った食育実践

すでに、教材の試作品をいくつか完成させてはいたものの、目安にすべき「教科書」のない幼児向けの教材・カリキュラム作りに、Z会スタッフ一同、今までにない難しさを感じていました。初めて廣子先生にお会いしたのはそんな時期です。
「子どもたちが五感を使った体験を楽しむうちに、自然と力をつけていく、そんな講座にしたいんです」とお伝えすると、廣子先生は目を輝かせながらこうおっしゃいました。

「こんなお話がくるのを待っていたんですよ。
私の考える食育は、子どもに料理を教えることではなく、
料理をとおして【自分で考える】【自分で決める】力を育てること。
Z会の教材になれば、子どもたちに本物の食体験を広めることができる。これはまさに天命ね」

そうおっしゃって、二つ返事で監修を引き受けてくださり、数週間後には、ご長女の佳奈先生とともに最初の体験課題が完成していました。

▲食育インストラクターの養成も行っていた廣子先生

料理をとおしてつけた自信が、人生を支える力になる

廣子先生とお会いしたことで、ようやく幼児コースの食育教材制作がスタートできたように思います。試作品を見ながら先生と侃侃諤諤の議論になり、気がつけば深夜。スタッフが新幹線の終電を逃してしまう……という笑い話のようなこともありました。
廣子先生は、食にまつわる文化的・科学的な知識はもちろんのこと、ハンズオン(体験型)の学習全般について造詣が深く、全国の幼稚園や保育園、自治体での食育実践例、国内・海外の伝統料理に実際に触れた経験などがアイデアの源泉となり、理想の教材について熱く話し始めると、毎回、時間があっという間だったのを思い出します。

ところで、幼児コースを受講された方のなかには、「食材を用意するのが面倒」「こんなに時間をかけられない」とお感じになったことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その点はZ会スタッフと廣子先生との間でも、幾度となく議論を重ねてきたことでした。

「保護者の方の忙しさは重々わかっているのよ。
でも、この1回の体験に出合わなければ、その子が、
すりばちで胡麻をする香りや、まるごとの魚や、炊き立てのお赤飯に触れる機会は
こないかもしれないでしょ?」

先生はよくそんなふうにおっしゃっていましたが、これは決して大げさな話ではなかったと思います。
大学でも教鞭をとっていらっしゃった先生は、すでに、「すりこぎの動かし方がわからない」「お赤飯を自宅で作るなんて考えられない」という大学生に何人も会ったことがあるとおっしゃっていました。

「幼児に料理なんてできるんですか?という人もいるけれど、
料理って経験なんですよ。何歳だからできるというものじゃないんです。
大人でも経験がなくてまったくできない人がいる代わり、
小さな子でも、ちゃんとやり方を示してあげれば必ずできるようになります。
だからこそ料理は、『大人でもできないような難しいことが、子どもの自分にできた!』と
自信をつけるのに効果てきめんなんです。
そうやって自信をつけた子は、どんどん未知のことに挑戦できるようになるんですよ」

 

▲Z会も参加していた全国食育大会での1コマ。 どんな小さな子でも、「自分でできた!」と実感できるよう配慮

ふだん、危ないから・面倒だからと遠ざけられている体験ほど、「大丈夫だよ、やってごらん」と言われた子どもは「やってみたい!」と目を輝かせるもの。
しかし、大人が気持ちに余裕をもって「やってごらん」と言える機会は決して多くなく、子どもたちは経験のないままに成長していってしまう――。

そのことを痛感していらっしゃったのでしょう。手軽さよりも、「本物」で「丸ごと」の実体験に子どもたちを出合わせたいという廣子先生の信念は、教材制作においても揺らぐことはありませんでした。

未来を生き抜く力を、子どもたちに

料理に取り組む子どもたちは、みな真剣そのもの。大人が驚くような瑞々しい発見をすることもしばしばです。そんな子どもたちの姿に触れることが、廣子先生にとって一番の喜びだったのではないでしょうか。

通信教育である幼児コースでは、「ぺあぜっとシート」に描かれた絵を通じて、食材に触れた子どもたちの喜びや驚きを感じとることができます。廣子先生が、目を潤ませながらそれはそれはうれしそうにご覧になっていた表情を、忘れることはありません。

▲ユーモアたっぷりの関西弁で、子どもたちにも大人気

2018年夏、廣子先生は多くの方に惜しまれつつ旅立ってしまわれましたが、幸いにも私たちは、先生が遺してくださった体験課題やレシピを通じて、そこに込められた思いに触れることができます。

食体験を通じて得た自信が、新たなものに挑戦しようとする子どもたちの背中をあと押しし、未来を生き抜く力となることを、廣子先生は何よりも望んでいらっしゃいました。
われわれZ会幼児コーススタッフも、廣子先生と一緒に、そうしたお手伝いができたことを誇りに思います。

廣子先生、本当にありがとうございました。

 

Z会幼児コーススタッフ一同

プロフィール

坂本廣子(さかもと・ ひろこ)

学術博士(教育学)。料理研究家。兵庫県神戸市出身。幼児期からの食育実践は40年に及び、子どもによる料理番組の草分けとなった、『ひとりでできるもん!』(NHK)の監修を務めるなど、体験を重視した食育の第一人者。農林水産技術会議委員、キッズキッチン協会会長なども務める。食育のみならず、『台所防災術』『国産米粉でクッキング』(いずれも農文協/長女・佳奈氏との共著)など、防災や米粉に関する著書も多数。

*2019年度幼児コース教材『ぺあぜっと』の食育ページは、坂本廣子先生のご遺志を継ぐ坂本佳奈先生に監修いただいています。

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