特集

生活リズムを見直そう~睡眠を大事にすることは子育てを考えること~(3)

神山先生に聞く!生活習慣に関するQ&A

頭では必要だと理解していても、実際に子どもに早寝早起きをさせるのは難しいもの。せっかく寝かせても「ただいま、パパだよ~。お土産あるよ」など、思わぬ伏兵が現れることも。引き続き、神山潤先生に、生活リズムを整える必然性、コツなどを聞きました。何を優先すべきか、具体的にわかりそうです。(文:松田 慶子)

Q

<睡眠不足の子は太りやすいってホント?>
睡眠不足が続くと太ると聞いたことがあります。本当でしょうか?
うちの子はぽっちゃりしているので心配です。このままほうっておいてもいいでしょうか。

A

太りやすく、生活習慣病のリスクも大!

睡眠不足や夜更かしが続くと太るというのは、データでも示されています。因果関係はまだはっきりとはしていませんが、脳の判断力をつかさどる部分の機能が低下しカロリー摂取の加減が困難になること、あるいは食欲に関するホルモンのバランスの乱れ、昼間の活動量の低下など、いくつか理由があげられています。
怖いことに、睡眠不足は生活習慣病を招くとも指摘されています。夜更かしをすると細胞の酸化を防ぐメラトニンというホルモンの分泌が減るなどして、全身の老化が進みます。これに肥満が加わることで、生活習慣病やがんといった病気のリスクが高まると考えられるのです。生活を見直して、早く改善すべきでしょう。

Q

<寝だめはできない? あとで睡眠不足を取り戻すことは?>
サッカーのクラブチームに入っている息子は、平日どうしても寝るのが遅くなります。
その分、週末にしっかり睡眠をとらせていますが、これで睡眠不足を補えませんか?

A

寝だめは無理。まとめて寝てもダメージは残る

 1日8時間寝ていた人が、3時間や5時間という短い睡眠時間を続けることで、どの程度、作業の能力が落ちたかを「見落とした回数」に着眼して調べたデータがあります。その結果、短時間睡眠を1週間も続けると、見落とす回数は格段に増えます。注目すべきは、その後。短時間睡眠をしていた人が睡眠時間を8時間に戻しても、見落とす回数は、減りはしたものの調査期間中には元には戻りきらなかったのです。
つまり、寝不足が続いたことの悪影響は、十分に寝るようになっても後を引くのです。「寝だめ」も、「後でまとめて寝る」こともできないとわかりますね。一見遠回りに見えても、毎日必要な睡眠をとることが、結局は作業を効率的に進めるコツなのです。

Q

<朝の光は自然光じゃないとダメ?>
朝、光を浴びることが大事とのことですが、子どもの部屋は北向きで、ほとんど日光が
入りません。曇りの日などは朝でも暗いまま。わざわざ外に出る必要はありますか?

A

ガラス越しでもOK。曇天でも人工光より数倍の照度。

 曇っていても窓際では1,800~2,000ルクス程度の照度があります。かたや屋内は蛍光灯をつけていても600ルクス程度。明るさを感じるには自然光のほうが効果的です。屋外に出なくてもいいので、カーテンを開け、朝の光を取りこみましょう。
 ただ、お子さまの部屋が暗いなら、窓を開けて照明をつけるだけでも効果はあります。ちなみに夜に明るい光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制され、体内時計の周期が長く伸びてしまうといわれています。夜、コンビニに子連れで行くのは禁物です。
 寝る前にはテレビやパソコンを消すこと。そして部屋を暗くして寝かせます。暗いと怖がって寝ないというときは、豆電球にするなどできるだけ暗くして寝かせ、熟睡したら完全に照明を消すようにするといいでしょう。

Q

<効率よく睡眠をとらせる方法ってある?>

わたしの仕事の関係で、子どもに早寝をさせられません。7時間しか眠らないけれど9時間分に充当するような、効率のいい睡眠をとらせる方法はありませんか?

A

ありません。効率重視には注意が必要です。

  残念ながら、効率よく眠る方法はありません。むしろ、必要な時間、しっかり寝ることこそが、効率よく生活する要件なのです。
 厳しいことを言いますが、現代人は生活のすべてにおいて効率のよさを追求しています。短い睡眠を効率よくとって、時間を有効に使うべく深夜に会社近くのジムで走り、電車の中で携行食品を食べて効率的に栄養を補う。その結果、日中の作業効率が落ち、夜眠れないからと病院に通い、子どもは自分が何を食べたいのか、どうしたら快適な状態に持っていけるのかわからない、未成熟な大人になる――。これでは本末転倒です。
 自分の生体リズムを無視して効率を求めることが、結局は効率を悪くするのだと、ぜひ認識して欲しいものです。

Q

<起き抜けは食事をとりません。食事時間はずらしてもいい?>
朝早く起こすようにしていますが、起き抜けは朝食がのどを通らないようです。
それでも3食食べさせるべき? 夏休みや冬休みは、おやつをしっかり食べさせていますが……。

A

食事でも生体リズムは作られます。少量でも3食を

少しややこしいかもしれませんが、朝の光などによって作られる生体リズムのほかに、食事によっても体のリズムが作られます。夜行性のネズミに昼間エサを与えていると、昼に起きるようになるんですよ。だから3食、決まった時間に食べるということも非常に大事なのです。長期休み中であっても、できるだけそのリズムを守りましょう。夕食を早めに済ませると、朝起きたとき空腹を覚え、しっかり食べられるはず。
 まだ朝食をちゃんと食べる習慣がついていないうちは、バナナなど子どもが食べやすいものから始めるといいでしょう。ただし「しっかり食べなさい!」と、押しつけにならないように注意を。

Q

<子どもにも睡眠時無呼吸症候群はある?>
息子は以前から、ひどいいびきをかきます。そのせいか、いつも目覚めがよくありません。睡眠時無呼吸症候群を疑ったほうがよいのでしょうか。特に太っていませんが......。

A

可能性はあります。一度受診の検討を

太っていない子どもに睡眠時無呼吸が見られることはあります。最大の原因は生まれつき扁桃腺が大きいこと。寝ている間に扁桃腺が空気の通り道をふさいでしまっているため、呼吸のたびに気道の粘膜が震えていびきとなるのです。
ほかにも、睡眠中、呼吸するたびに胸がペコペコと上下する、しばしば目を覚ます、汗をかいて苦しそうな様子を見せるという場合は、睡眠時無呼吸の可能性が濃厚です。これが続くと慢性的な睡眠不足になり、昼間眠いだけでなく、集中力がなくなる、落ち着きがなくなるといった様子もみられるようになってしまいます。夜間や昼間の活動の様子を見て、おかしいと思った場合は、医療機関を受診したほうがいいでしょう。

プロフィール

神山 潤(こうやま・じゅん)

小児科医、東京ベイ・浦安市川医療センターC.E.O。東京医科歯科大学医学部医学科卒業。同大大学院助教授、東京北社会保険病院副院長、院長を経て現職。専門は臨床睡眠医学。日本子ども健康科学会理事、日本小児神経学会評議員、日本臨床神経生理学会評議員、日本睡眠学会理事など、重職も兼任。「子どもの早起きをすすめる会」の発起人として、睡眠をはじめとした現代の子どもをとりまく成育環境のあり方に警鐘を鳴らし、講演、執筆活動にも注力している。『四快のすすめ―子どもの「快眠・快食・快便・快動」を取り戻す』(新曜社)ほか、著書多数。

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