特集

夏休みにこそ挑戦したい「自己マネジメント体験」のすすめ(2)

家庭学習の習慣をつけるためにおすすめの「スケジュールノート」づくり

――子どもが主体的・計画的に家庭学習に取り組めるようになるまでには、それなりに時間がかかると思いますが、どんな方法が有効でしょうか。

スケジュールノートをつけることに一緒に取り組んでみましょう。スケジュールノートをつけることを通して、「計画する→実行する→結果を評価する→自己修正・自己改善を図る」、いわゆる「PDCAサイクルを回す」練習をするのです。それが、最終的には家庭学習の習慣をつけること、また、「自己マネジメント力」を鍛えることにつながります。

わたしが監修した『小学生のための生活習慣力アップノート』(日本能率協会マネジメントセンター)では、週ごとに「今週やること」を、1日ごとに「今日やること」を書き出し、1日の終わり・週の終わりに振り返るという方法を紹介しています。また、1・2年生向けと3・4年生向けのノートでは、「朝、決まった時間に起きることができた」「時間を守った(ゲームやテレビ、遊び)」などの生活習慣に関するチェックリストも盛り込んでいます。こうして「計画する→実行する→結果を評価する→自己修正・自己改善を図る」というサイクルを回すことを習慣化することで、「自己マネジメント力」が鍛えられ、家庭学習の習慣もつくようになります。

――低学年の場合には難しいようにも思いますが、どんなふうに進めればよいでしょうか?

低学年の場合は、たとえば、「金魚の餌を毎朝あげる」「週3回、お風呂掃除を手伝う」「夕食の配膳の手伝いを毎日する」「弟と遊んであげる」「1日に何か1つ手伝いをする」「テレビの時間を守る」など、勉強以外の生活や遊び、家庭内での役割に関することなど、内容はなんでも構いません。それを、保護者と一緒に取り組み、楽しむことが大事です。一緒に計画を立てて、一緒に実行して、実行できればほめて、できなくても叱るのではなく計画を改善して、次にできたときにほめる。こうしてPDCAサイクルを回す楽しみを保護者と子どもが一緒になって体感しましょう。

その際、できなかったときに原因を追求するなど、子どもを追い込むことは禁物です。「まあ気にせず、来週またやってみよう」と気長に取り組み、だんだんできるようになればそれで構いません。

勉強については、まずは宿題と、さらに家庭学習の教材があれば、それらをスケジュールノートの項目に組み込むといいですね。おうちの方は、それができているか確認したり、できていればほめたりして、自分で計画を立て実行することを奨励していくのが大事です。

――中学年の場合はいかがでしょうか?

中学年は、保護者がつきっきりでいると幼さが抜けないままになってしまいますし、だからといって高学年のように理屈を理解できる年齢でもありません。ただ、スケジュールノートに書くことを純粋に楽しめる年齢ですから、「自分で計画してPDCAを回す」ということをとにかく体験してもらって、できたことはほめて、おもしろさや難しさを感じてもらいながら生活の中に組み込んでいくようにするのがよいかと思います。

保護者のかかわり方としては、最初のうちは毎日ノートを一緒に見るようにし、慣れてきたら1週間ごとに振り返りと計画を見て、ほめるべきときにほめる、という距離感でいいように思います。

 

――高学年の場合はいかがでしょうか? だんだんと反発心が出てきたりする年齢かと思いますが……。

高学年の場合も、PDCAサイクルを回せるようになることが第一の目的ですから、基本はできたことはほめて、できなかったら一緒に原因を考えたり、悩んだり、解決策を考えたり、励ましたりする。叱ったり否定的な言葉を投げかけたりはあまりしないほうがいいと思います。

反発心を示すような子に対しては、「自分で計画を立てて実践して、振り返ってよりよい自分になれるように頑張るというのは、自分の希望する学校に行ったり、自分の夢を実現したりするためなんだよ」「希望する中学や高校、大学に行っている人や、夢を実現させている人はこういうことを頑張っているらしいよ」などと将来の見通しを少しずつ語って納得してもらうのがよいと思います。

ただ、ここまで話したことはあくまで一例で、「低学年だから」「中学年だから」と一律に考えるのではなく、お子さんの個性や置かれた状況に応じてその子に合った声かけをするのが一番です。どうすれば達成感を得られて、意欲的にPDCAサイクルを回せるようになるかということを、お子さんに応じてよく考えて接していただきたいですね。

⇒次ページに続く 夏休みこそ、期間を区切ってPDCAの経験を

プロフィール

田中博之(たなか・ひろゆき)

早稲田大学教職大学院教授。専門は、教育工学および教育方法学。大阪大学人間科学部助手、大阪教育大学専任講師、助教授、教授を経て、2009年4月より現職。フィンランド・メソッドの教育応用研究、アクティブ・ラーニングの授業開発、学級力向上プロジェクトの研究、学力調査の開発研究など、これからの学校に求められる新しい教育手法の研究に従事。『小・中学校の家庭学習アイデアブック』(明治図書出版)、『小学生のための生活習慣力アップノート』(日本能率協会マネジメントセンター)など、著書・編書・監修書多数。

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