特集

友だちづきあい(2)

子どもの友だちづきあいを親がうまくサポートするコツ

子どもが悩んでいるとき、親がやるべきこととは?

――たとえば、進級や進学で新しいクラスになり友だちができなくて悩んでいる子どもには、どのように対応したらいいのでしょうか?

進級や進学に限らず、子どもがうまくいかないと悩んでいるときというのは、子どもが未知の世界と向き合っているときで、親はそれを上手に乗り越えられるよう、適切にサポートすることが求められます。
まずやるべきは「悩んでいる状況・内容をしっかりと聞いてあげること」です。子どもの話に耳を傾け、うなずき、あいづちを打ってあげましょう。子どもがうまく気持ちを表現できなかったり、気持ちの整理がつかず、はっきり状況をつかめずにいたりすることもあります。それも計算に入れて聞くことが大切です。
次に、子どもの気持ちに理解を示します。
そして、子どもの能力に合わせて、アドバイスを与えてあげましょう
たったそれだけでいいのですか? と思われるかもしれませんが、そもそも人というのは、だれも自分の話を聞いてくれないから、悩みを抱えることになるのです。悩みを聞いてもらった、気持ちを受け止めてもらったということが、ストレスの解消になり、気持ちを前向きにします。

――具体的な解決策をいきなり親が提示するのではなく、まずは子どもの話をしっかり「聞く」ということが重要なんですね。

その通りです。聞くことは対人関係構築の最も基本的なスキルといえます。話に耳を傾け、うなずき、あいづちを打つ。特別難しい行為ではありませんが、世の中にはこの聞くスキルが欠けている大人も結構いるんですよ。「聞く」、あえていえば「聴く(傾聴)」ことを意識して行えば、子どもの友だちづきあいのみならず、大半の人間関係の悩みは解決するかも……なんて、わたしは考えたりするくらいです。

――友だち関係がこじれてしまったときや、友だちに嫌と言えず言いなりになってしまっているようなときは、どうしたらいいですか?

まずは子どもの話を聞いて、子どもの考えや気持ちを受け止め、理解してあげましょう。そして、子どもの心が安定するように自信をもたせてあげるようにするといいです。このとき効果を発揮するのが「リフレーミング」、つまり言い換えです。
たとえば、気が弱いことが端緒となって友だちづきあいがこじれてしまったと感じている子どもは、気の弱い自分を自己嫌悪しているものですが、「気の弱さ」もリフレーミングする、ポジティブに言い換えると「神経が細やか」とか「優しい」といえます。決して悪いことではないことがわかりますよね。性格や態度の傾向というのはコインの表と裏のようなもので、弱みも見方を変えれば強みになり、強みは弱点になりうる。だから嫌悪の対象にせず、「リフレーミング」によって良い側面に光を当て、それを対人関係のなかでいかせるように子どもの気持ちを誘導していくことが大切です。

――たとえば、わが子が学校で友だちとけんかをして怪我をさせたという連絡がきたら、親はどうしたらいいですか?

急にそのような連絡がきたら、だれでも驚いてしまいますよね。しかし、まずは心を落ち着けて、友だちに手を出してしまったときも、子どもの言い分をしっかり聞いてあげることが大切です。子ども同士のこととはいえ、トラブルの多くは「加害者vs被害者」というようにはっきり白黒つけられる単純なものばかりではありません。その事態に至った経緯をしっかり把握し、子どもの気持ちを受け止めたうえで、対応のしかたを考えるようにしましょう。

友だちづきあい、対人関係を過剰に恐れないことも大切

――こと対人関係については、親も子も穏便に過ごしたくて、かえって問題を複雑化させているようにもみえます。

それは、わたしも思います。さまざまな事例をみていて思うことですが、親も子も友だちづくりや対人関係に対してナイーブになりすぎです。しかし、対人関係が悪化することを過剰に恐れているわりに、良好な対人関係を維持するには「お互いのことを思いやり、振る舞う努力が必要である」ということを意識していないケースも……。このチグハグさが、対人関係のスキルの弱さをあらわしているようにも思えます。良好な対人関係を構築すること、維持することは覚悟のいることです。一筋縄でいかないことはあたりまえで、それ相応の時間もかかります。そういう側面を度外視してはいけません。
さらに、親に関してつけ加えるとしたら、子どもの悩みをともに背負うことができるのは親だけだということです。子どもの友だちづきあいの問題から早く楽になろうなどと思ってはいけません(笑)。腹をくくって臨むのが親の役目です。子どもが対人関係で悩むということは成長の証。じっくりとかかわって、子どもの悩みの内容が次第に変化することから、子どもの精神的な成長を実感してほしいです。

――最後に小学生の子どもをもつ保護者の方へメッセージをお願いします。

まず、小学生の子どもの親であることを楽しんでください。しっかりと子どもに向き合って「小学生という時間」を一緒になって過ごしてみるといいと思います。わたし自身も試行錯誤を重ねながら子育てをしている母親の一人ですが、これまでも、自分の子どもと向き合うなかでいろいろなことをたくさん想像しては、その都度腹をくくって前へ進んできました(笑)。覚悟を決めれば、だいじょうぶ。親子でうまく乗り越えられます。前向きに取り組んでください。

――ありがとうございました。

プロフィール

渡辺弥生 (わたなべ・やよい)

法政大学 文学部 心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長も務める。教育学博士。専門は発達心理学、発達臨床心理学。ソーシャルスキルやモラルの意識がどのように育まれていくのか、そのメカニズムについて研究を行っている。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か−乗り越えるための発達心理学』(光文社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)、『シリーズ心理学と仕事 発達心理学 5巻』(北大路書房)などがある。

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