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夏休みにこそ挑戦したい「自己マネジメント体験」のすすめ(3)

夏休みこそ、期間を区切ってPDCAの経験を

――夏休みが近づいていますが、家庭学習の習慣をつけるために、夏休みだからこそできることはありますか?

やはり、計画を立てて実行し、振り返り、また取り組むということを、「ちょっと頑張ってやってみない?」と保護者の方から誘ってみていただきたいですね。夏休みは長期間なので、計画を立ててコツコツ取り組む練習をするには格好の機会です。「宿題はすべて8月後半に終わらせればいい」「7月中に終わらせればあとは楽勝」というのは、どちらもムラや無理が出てきてしまいますから、たとえば、夏休みを1週間ごとに区切って、計画を立ててみてはどうでしょうか。宿題でなくても、読書やペットの世話など、お子さんの好きなものを何か1つ、計画的に取り組むのでも構いません。

学習以外でも、長期休みならではの活動があれば、意識してPDCAを取り入れるのがおすすめです。それが、究極的には家庭学習の習慣づくりにもつながりますから。

――どういうことでしょうか?

たとえば、家族旅行の計画をお子さんに立ててもらったり、親戚が来訪するときの食事の計画を立ててもらったりするんです。

おじいちゃん、おばあちゃんが家を訪れる予定があれば、どんなものが好きなのか、何を作ろうか、どこでその材料を調達するかなど、子どもたちに計画させて、親子でスーパーに行ったり、料理を作ったりするとよいでしょう。そして、おじいちゃん、おばあちゃんが帰ったあと、「喜んでくれたね」などと振り返る。

旅行の計画でしたら、中学年以上であれば、保護者がパンフレットを集めておいて、参考になるWebサイトの情報なども教えて予算を伝えれば、どんな旅程でどこに行くのがよいか考えて、ある程度の計画は立てられると思います。

そのときに大事なのは、その旅行先を選んだ「理由」をはっきりと説明してもらうことですね。それにより、わかりやすく説明する力や説得する力も鍛えられます。そうして出てきた提案を、親子で考え、よりよい計画をつくる。そして、旅行に行ってたくさん写真を撮って、帰ってきたら写真を見ながら「楽しかったね。またみんなで楽しいことをしようね」と振り返る。そうすれば、主体的に行動したことによって人が喜んでくれるという達成感も、PDCAサイクルを回す楽しさも味わうことができます。

家庭学習の習慣をつけることは、将来どんな力になる?

――最後に、家庭学習の習慣や、PDCAサイクルを回すことによって鍛えられる「自己マネジメント力」は、これからの社会で生きていくうえでどのように生かすことができるものでしょうか?

自主的に学習を行う習慣や「自己マネジメント力」は、一生涯、学び続けることのできる力につながります。現在、そしてこれからの変化の激しい社会においては、学ぶべき新しい知識がどんどん増えていっていますし、さまざまな国の人と一緒に働くことも多くなってくるでしょう。そのときに、英語に限らずほかの外国語であっても学び、意思の疎通ができるようになりたいものです。企業に勤めるにしても、世の中の変化に合わせて新しいことを覚えなければなりません。むしろ、大人になってからのほうが常に勉強ですし、自己の能力向上・自己成長に資する生き方をしていかなければ、やりたい仕事を続けることも難しいでしょう。

そのときに学び続けることの原動力となり、自らの未来を切り拓くのが、子どものころからPDCAサイクルを回して鍛えた「自己マネジメント力」だとわたしは考えます。Z会を受講するお子さまがたにも、ぜひ「自己マネジメント力」をつけて、自己決定や自己実現の経験を積んで、自ら未来を切り拓いていっていただきたいと思います。

――ありがとうございました。

プロフィール

田中博之(たなか・ひろゆき)

早稲田大学教職大学院教授。専門は、教育工学および教育方法学。大阪大学人間科学部助手、大阪教育大学専任講師、助教授、教授を経て、2009年4月より現職。フィンランド・メソッドの教育応用研究、アクティブ・ラーニングの授業開発、学級力向上プロジェクトの研究、学力調査の開発研究など、これからの学校に求められる新しい教育手法の研究に従事。『小・中学校の家庭学習アイデアブック』(明治図書出版)、『小学生のための生活習慣力アップノート』(日本能率協会マネジメントセンター)など、著書・編書・監修書多数。

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