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友だちづきあい(1)

新学期が始まっておよそ1カ月。そろそろ新生活の緊張がほぐれ始めるころですが、お子さまの様子はいかがでしょうか? この時期、わが子が新しいクラスになじむことができたか、友だちをつくることができたか……と、保護者の皆さまも気をもむことが多く、気持ちが落ち着かないものですね。
そこで今回は、小学生、児童期の友だちづきあいについて、子どもの心の成長のメカニズムを研究されている法政大学文学部心理学科教授の渡辺弥生先生にお話をうかがいました。友だちづきあいのみならず、子育て全般へのヒントやアドバイスが満載です。
(取材・文 尾内通子)

目次

【インタビュー】子どもにとって、友だちづきあいとは?

  • 親にとっても悩ましい子どもの友だちづきあい
  • 人間関係を築くスキルとは?

【インタビュー】子どもの友だちづきあいをサポートするコツ

  • 子どもが悩んでいるとき、親がやるべきこととは?
  • 友だちづきあい、対人関係を過剰に恐れない

 

子どもにとって、友だちづきあいとは?

親にとっても悩ましい子どもの友だちづきあい

――「友だちとつきあう」ことには、子どもにとってどのような意義があるのでしょうか? 

あたりまえのことですが、この社会で生きていく限り、だれともかかわらずに生きていくことはできません。自分ではないだれか(=他者)と生きるなかで、自分という人間はどのような特徴をもっているかがわかるようになり、自分という存在をはっきりと自覚できるようになるのです。人づきあいというのは、自分という人間を理解し、自分をよりよく生かすために欠かせないものなのです。
これは小学生も同じで、子どもは友だちだけでなく、先生や周りにいるさまざまな立場の人とかかわることによって、自分がどんな人間であるかを徐々に理解していき、自分というかけがえのない存在を認識することができるようになります。その中心は自分と他者との比較になりますが、比較することで自分ではない“他者”への理解も深めることになります。
ただ、小学校中学年くらいまでは、発達段階としてはまだまだ自己中心的(わがままという意味ではなく、他人も自分と同じように考えていると思い込みがちな特性)なので、人とかかわるとどうしても「けんか」や「いざこざ」が起こりがちです。しかし、この「けんか」や「いざこざ」は互いに自分の考えをぶつけ合う大切な機会で、子どもたちは「やり合う」なかで対人関係を良好に保つために必要な配慮や思いやり、我慢を学び、自己中心的な発想や行動から徐々に抜け出していくことになります。親からしてみると、できるだけ周囲とは波風立たずに過ごしてほしいと思うかもしれませんが、子どもたちは波風立たせながら成長していくものです。悩ましくとも真正面から向き合い、子どもにつきあっていく必要があるでしょう。
最近の小学校では、授業にペアワークやグループワークが盛んに取り入れられ、他者と一緒に学び合う学習スタイルが主流となっています。そのため、周りの人とうまくつきあえないと授業に入り込めない(=参加することができない)ということになりかねません。実際、最近の論文では、社会性や自分の感情のマネジメントに優れている人、つまり人づきあいが上手な人のほうが学力が伸長するというエビデンスも発表されています。友だちを含め、人づきあいができるかどうかは学力にも大きな影響を与える可能性があるのです。

――子どもが人並みの友だちづきあいができるようになるためには、親はどんなことに気をつけたらよいのでしょうか?

まず、子どもの友だちづきあいで何か問題が起きたときに、その子の性格のせいにしないことです。
「子どもになかなか友だちができない」→「あなたが引っ込み思案だから友だちができないのだ」、「子どもが友だちをたたいた」→「あなたは攻撃的な性格だからすぐに手が出てしまうんだ」などと、トラブルの原因を子どもの性格にしてしまう事例がよくみられます。しかし、トラブルの原因として挙げた性格が本当にその子の性格なのかどうか、立ち止まって考えてほしいものです。多くの親は、性格について参考にできるサンプルが極端に少ないまま――その子のきょうだいや友だち、親がこれまでつきあいのあった人物などとの比較で――そう思い込んでしまっている場合も多いのです。
実は、うまく人づきあいができないのは性格のせいではありません。人間関係を築き、維持する、発展させるのに必要なスキルが十分ではないからです。

人間関係を築くスキルとは?

――友だちづくりに必要なスキルとは、具体的にはどのようなものですか?
 
 
「相手の話を聞くスキル」と、「相手に自分の考えを伝えるスキル」つまり「話すスキル」です。
  
――そういう受け応えというのは日常生活のなかのやりとりで自然と身につき、上達していくものなのではないでしょうか?

そうではありません。聞く、話すスキルというのは、放っておいてもいつのまにか身につくようなものではないのです。それは、ちょうど親が「子どもがお風呂に一人で入れるように入浴のしかたを教える」のと同じようなもので、長い時間をかけて徐々に親が教えていくものなのです。
自分の子どもが一人でお風呂に入れるようになるのにどのくらい時間がかかったか思い出してみてください。湯につかるということに慣れさせ、着替えのしかた、湯船への入り方、身体の洗い方、シャンプーのしかたなど、一つひとつ説明し、ときには親が見本を見せ、子どもにリハーサルをさせ、フィードバックし……を繰り返して、ようやく一人でお風呂に入れるようになったはずです。相手の話を聞く、相手に伝わるように話すスキルも同じこと。親が必要なことを説明し、モデルとなり、長い時間をかけて身につけさせるスキルなのです。
 
――親自身が自分の親から教わった記憶があまりないのは、どうしてなのでしょうか?

今のお父さん、お母さんたちが子どものときは、今よりも地域の人間関係が濃密なうえ、近所の子どもの数やきょうだいの人数なども多かったので、親が積極的にかかわらなくても、不足部分を補ってくれる要素がたくさんあったのだと思います。昔は、今の子どもたちよりも多くの人たちとかかわって過ごす時間的余裕もあったため、遊びのなかで人間関係を築くスキルを学習する機会を確保することができたのでしょう。

しかし、今の子どもたちは自由な時間が少ないうえに、かかわる人間の数も限られていて、学習機会の絶対数が不足しています。親と子が向き合う時間すら限られている状況ですので、スキルを自然と獲得していくのは厳しい。親はまず、今の子どもたちが人間関係構築のための基本的なスキルを学び取るには難しい環境にいることを理解し、必要なことは親が子どもに積極的に教えていく役目を担っていることを自覚しましょう

プロフィール

渡辺弥生 (わたなべ・やよい)

法政大学 文学部 心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長も務める。教育学博士。専門は発達心理学、発達臨床心理学。ソーシャルスキルやモラルの意識がどのように育まれていくのか、そのメカニズムについて研究を行っている。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か−乗り越えるための発達心理学』(光文社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)、『シリーズ心理学と仕事 発達心理学 5巻』(北大路書房)などがある。

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