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自分で「調べ学習」ができる子になる!(1)

「ねえ、夏休みの調べ学習のテーマ、何にしたらいい?」
そんな言葉がお子さまから飛び出す時期になりました。
自分でテーマを決めて、調べ、まとめて報告するという「調べ学習」は、夏休みの宿題だけでなく、アクティブ・ラーニングの一環として、授業でも取り組まれるようになっています。しかし、どうやったら「調べ学習」をうまく進められるのかわからず、苦労した経験をおもちのご家庭も多いのではないでしょうか。
そこで「調べ学習」についての授業経験が豊富な赤木かん子先生に、取り組み方を教えてもらいました。

(取材・文 松田慶子)

目次

「調べなさい」の前にどうやって調べるのか教えることが大事

――赤木先生は、およそ15年前から、調べ学習の方法についてレクチャーしておられます。どのような理由から、この取り組みを始められたのですか。

公共図書館の司書から寄せられた声がきっかけです。カウンターに小学生が来て、調べ学習の手伝いを求めるものの、手の貸しようがない、と。
たとえばある時期に6年生がいっせいに来て、「縄文時代について調べたい」という。縄文時代の何について調べたいのか尋ねても、ただ立ったまま「縄文時代」と繰り返す。いったいどうしたらいいんだ、と、司書が悲鳴を上げていました。
背景を調べたところ、かわいそうな状況が見えてきました。2000年代に入り「総合的な学習の時間」がスタートすると、この時間を利用して調べ学習、つまり児童・生徒が自分でテーマを見つけて情報収集し発表するというスタイルの授業が積極的に行われるようになりました。しかし、具体的な調べ方やまとめ方を、多くの学校で十分に教えていない。「縄文時代」という幅広い分野の中でテーマをどう決めればいいのか、どうすれば調べられるのか、何も教わらないまま課題を与えられ、子どもたちが途方に暮れている状況でした。
私は当時、各地の学校図書館の改善に関わっており、そういう子どもたちに対して図書館は何ができるだろうと考え始めたのです。

――小学校で2020年度、中学校で2021年度から全面スタートとなる新学習指導要領では、自ら課題を見つけ、知識を元に考え、課題を解決していくような力の育成を重視しています。調べ学習の指導に関しても、当時とは状況が変わっているのでは?

熱心に取り組んでいる学校も増えていますが、そうではない学校もあるという現状です。学校の先生ご自身が、あまり経験してこなかったからなのかもしれません。
何かを調べるには、基礎知識が必要です。それには百科事典を引くことが一番の近道です。また調べたことをまとめるには、感想文とは違う報告書の書き方があります。それらを教えないで「調べてまとめなさい」というのは、ノコギリやカンナの使い方を教えずに建築現場に出すようなものです。

調べ学習は、調べて考え、報告する練習!AI時代にこそ重要

――そもそも調べ学習はなぜ大切なのでしょうか。今は、インターネットで検索すれば、何でも情報が出てきますが……。

そういう時代だからこそ、重要なんです。
調べ学習とは、自分が何を知りたいのかテーマを見つけ、自分なりに情報を集めて問題を解決するという、一連の流れの練習です。これは、1回覚えたら生涯に渡って実生活のなかで役に立つスキルです。
近い将来、多くの仕事がAIに代替されるといわれるなか、人間に求められるのは、単純な仕事をこなす能力ではなく、AとBをスパークさせて新しいものを生み出す、クリエイティブな力です。つまり、「この課題を解決するにはどんなものがあるといいのか」と、テーマを見つける力や、何と何をかけ合わせればスパークするのか、情報を集めて要素を絞り込む力、また、それらをわかりやすく発信する力が必要です。これらは、調べ学習が基礎になります。小学校での調べ学習は、その練習なのです。

――なるほど。練習ということは、経験すること自体に意味があるのだから、調べ学習で無理して新しいことを発見しようとしなくてもいいのですね。

大学生の卒論は、新しい切り口で、それまでになかった結論を出すことが重要です。でも小学校の調べ学習の目的は、すでにわかっていることを子ども自身が見つけること。それを学校の先生方や保護者の方がはっきり認識していないために、テーマ選びに苦労されるわけです。オリジナリティにこだわるよりも、最後まで完遂することのほうが重要です。

⇒次ページに続く 「自分で『調べ学習』ができる子になるための方法とは?」

プロフィール

赤木かん子(あかぎ・かんこ)

児童文学評論家。アンソロジスト。長野県生まれ、千葉県出身。1981年、法政大学英文学科卒業。高校・大学時代を通し、図書館でアルバイトをする。1984年に、タイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」としてデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介・書評などで活躍。図書館や本との付き合い方に関する講演活動も多く、学校図書館を中心にした図書館の活性化を牽引している。『しらべる力を育てる授業!』(塩谷京子氏との共著/ポプラ社)、『本で調べて、ほうこくしよう』(ポプラ社)、『お父さんが教える 図書館の使い方』(自由国民社)他、調べ学習に関する著書は多数。

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