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学びの土台“おもしろがる力”を図画工作ではぐくもう(1)

ちょっと前まではお絵描きが大好きだったのに、今は宿題用の画用紙がいつまでも真っ白。作品を見せようともしない……。お子さまのそんな様子に「なぜ?」と疑問を抱いた経験がある方も多いのではないでしょうか。図画工作の授業は、小学校6年間を通して年間50~70コマもあります。だから、できれば「いやいや」ではなく、積極的に取りくんでほしいもの。今回は図画工作の意義、楽しみ方について、美術教育の分野でも活躍されている図工作家のミノオカ・リョウスケさんにうかがいました。

(取材・文 松田慶子)

目次

「評価のある世界」にうまく適応できない子もいる。だからこそ家での接し方が大切

――幼稚園や保育園のころは、自分から絵を描いたり空き箱で何かを作ったりして遊んでいたのに、いつの間にか図工が苦手になったというお子さんは多いものです。なぜそうなってしまうのでしょう。

さまざまな理由があるとは思いますが……。ひとつには、小学校に入り図画工作の授業が始まると、どうしても先生の評価を受けるようになりますね。それまでとは異なる世界に放りこまれるわけですから、やはり子どもながらに評価を気にするようになってしまうということはあると思います。 

実は、指導する先生の側にも「評価をどうつけたらいいかわからない」と悩んでいる方が多いようです。東京都や京都府、兵庫県などの一部の自治体の小学校には、図画工作の時間だけを受け持つ「図工専科」の先生が配置されていますが、それ以外の多くの小学校では担任の先生が図工を教えます。専科でない先生は、どのように評価するかで悩むことが多く、その結果、どうしてもマニュアルに沿った指導になってしまう。

「評価のある世界」とその基準に、先生と子どもの両方が合わせようとして苦しむという現象が起こっているわけです。だからこそ、学校とは別の軸として、家での接し方が大切ともいえます。

図画工作は「おもしろがる練習」。「おもしろがる」力は、学びつづける心の支えに

――そもそも、図画工作を学ぶことにどんな意味があるのでしょうか。

まずは「実践力がつく」ということですね。図画工作というのは頭で考えたこと、思い描いたものを、体を動かして見える形にするわけですが、大きな魅力としては「失敗がない」ということがあります。親や先生の目から見てわかりやすい作品でなくても、きっと美しい部分やハッとさせられるような表現があります。なんでも考えたことにチャレンジできて、どういうかたちにせよ、作品として結実する――それが図画工作の魅力ですね。

ものをつくるとき、誰しも「この色をここに置いたらいいんじゃないかな」「この素材を使えば表現できるんじゃないかな」などと、さまざまなことを考えながら進めますね。それで実際に手を動かしてみる。これは、言うならば「想像して、仮説を立てて、検証して」いるわけですから、ものごとを実践していくトレーニングになります。と、堅い言い方をしてしまいましたが(笑)、ぼくは図画工作を「おもしろがる練習」だと思っているんです。

 

――「おもしろがる練習」ですか?

そうです。自分なりにおもしろいと思えるツボを見つける練習ともいえます。

これは、算数や国語などのいわゆる“勉強”にもつながる力です。計算したり暗記したりといった“勉強”は、疑問に思ったり考えたりといった、広い意味での“学び”の上に成り立っていると考えられますよね。“おもしろがる力” は、この“学び”の1つなのです。

――知識とか技能といった「見える学力」は、意欲や関心などの「見えない学力」の土台の上に育つものだと言われます。まさにその表から見えない力の1つが“おもしろがる力”だとお考えなのですね。

はい。“おもしろがる力”がなくても勉強はしていけます。でも多くの場合、どこかでふと「なぜ勉強しなくてはいけないんだろう」と行き詰まるときが来ます。そのとき“おもしろがる力”があれば、「これはおもしろいな」「これはできるようになりたいな」と、支えとなるものを見出して学びつづけることができるのですが、そうでないと心が折れたままになってしまう。だから、高いレベルを目指すご家庭こそ、端折らずにこの“おもしろがる力”を鍛えておくことが大事だと思います。

子どもはもともと、おもしろがることは大得意なんですよ。その喜びを、大人が「そんなことはつまらない」と否定してしまうと、“おもしろがる力”に蓋がされてしまう。だから、むしろ大人はどんどん乗っかってあげるほうがいい。図画工作は「脱線」ができる教科です。ちゃんと“おもしろがる力”を発散させ、伸ばしてあげることが、図画工作の意義だとぼくは考えています。

⇒次ページに続く 「大人も“おもしろがる力”が大事!苦手意識を持つ子には、ほめる作戦で」

プロフィール

ミノオカ・リョウスケ(みのおか・りょうすけ)

1961年兵庫県生まれ。1984年滋賀大学教育学部美術科卒業。1987〜89年アメリカThe Art Students League of NewYorkに留学。絵本、イラスト、クラフト作品を制作する一方、ワークショップや講演、執筆を通し、子どもと大人を対象とした美術教育にも取り組む。『楽しみながら才能を伸ばす! 小学生の絵画 とっておきレッスン』(メイツ出版)は、ロングヒットの美術教育本。2020年春には、シリーズ本として『楽しみながら才能を伸ばす! 小学生の造形 とっておきレッスン』(仮題)が発行される予定。近著には、絵本『まんまるダイズみそづくり』(福音館書店)、『じょうききかんしゃビーコロ』(童心社)がある。

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