特集

学びの土台“おもしろがる力”を図画工作ではぐくもう(2)

大人も“おもしろがる力”が大事!苦手意識をもつ子には、ほめる作戦で

――子どもが図画工作に苦手意識をもたないようにするには、どうしたらいいでしょうか。

親や周りの人が、徹底して肯定することです。作品を見たら、「この色がいいよね」「ここの描き方がおもしろいね」「集中してがんばったね」……なんでもかまわないので、ぜひほめてあげてください。子どもはほめられるとやっぱりうれしいので、もっと自由に“おもしろがる力”を発揮するようになります。

また、ぜひ作品を部屋に飾ってみてください。家族が作品を大事にしてくれているとわかるのは、お子さんにとって心の栄養になります。僕自身、子どもの作ったものは、絵でも手紙でも工作でも何でも飾っていました。うちの子どもたちは図工に苦手意識をもった時期があったのですが、「お父さんの宝物だ」と貼り続けたことで最終的には好きになったようです。

――でき上がった作品にほめられる点が見つけられなかったら、どうしたらいいでしょうか。

そこは大人の“おもしろがる力”が問われるところです。これまでの知識や経験を総動員して探してください。作品として目の前にある結果だけではなくて、過程にも目を向けてください。きっとどこかいいなと思える点があるはずです。

それから対話すること。「ここはどうやってやったの?」と聞いてみる。子どもにとっても興味をもってもらえるのはうれしいし、そうやって話を聞くなかで「いいところ」が見つかるかもしれません。

とにかく「いっしょに『おもしろがる練習』をする」のだと思って、いいところ探しを本気になってやってみること、そして伝えることです。本人が工夫したところをうまく言ってあげられなくてもいいんです。意外なところをほめられても、それはそれでうれしいものだし、子どもなりに心に残るものです。ただし、うそくさいのはすぐばれますよ(笑)。子どもは賢くて、「うそっぽいな」「誘導しようとしているな」というのはすぐに気づきます。自分のなかから出てきた本当の言葉で、「いいな!」と思ったところを伝えてあげてください。

大人にできるのはきっかけ作り。「一緒にたくらむ」感じが大切

――家庭での具体的な関わり方を、もう少し教えてください。絵の宿題などで、何を描けばいいか決められないお子さまに対して、どんな声をかければいいでしょうか。

よく「正解がないのだから好きなものを自由に描きなさい」という言い方をすることがありますが、「何をしてもいい」といわれたら、大人だって困りますよね。ある程度の道筋は示してあげたほうがいいと思います。

「とりあえず好きな色選ぼうよ」から始めてもいいですよね。誰でも好きな色はありますから。「それでぐるぐる描いてみようよ、何に見える?」とか、とにかく、手と頭を動かすきっかけを与えてあげる。

描くテーマ自体に困っているようなら、一緒に遊びにいってもいいですね。

なにも大掛かりなイベントにしなくても、すごいところに行かなくてもいいんです。親が一生懸命テーマパークや動物園に連れて行けば子どもが楽しむということでもないですからね。

大事なのは「一緒にたくらんでいる」感じを出すことです。美術教室やワークショップで子どもたちと接するなかで気づいたのですが、たとえば「〇時までに終わりましょう」というより、「〇時までに終わらなきゃいけないんだって。だからがんばっちゃおう」と言うと子どももワーッとノッてくれるんですね。大人が一緒に「たくらむ」雰囲気をつくると、子どもたちがノリやすいようです。

⇒次ページに続く 「技術は練習すれば上達する。手を出さずに、がんばる姿勢を応援すること」

プロフィール

ミノオカ・リョウスケ(みのおか・りょうすけ)

1961年兵庫県生まれ。1984年滋賀大学教育学部美術科卒業。1987〜89年アメリカThe Art Students League of NewYorkに留学。絵本、イラスト、クラフト作品を制作する一方、ワークショップや講演、執筆を通し、子どもと大人を対象とした美術教育にも取り組む。『楽しみながら才能を伸ばす! 小学生の絵画 とっておきレッスン』(メイツ出版)は、ロングヒットの美術教育本。2020年春には、シリーズ本として『楽しみながら才能を伸ばす! 小学生の造形 とっておきレッスン』(仮題)が発行される予定。近著には、絵本『まんまるダイズみそづくり』(福音館書店)、『じょうききかんしゃビーコロ』(童心社)がある。

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