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学びの土台“おもしろがる力”を図画工作ではぐくもう(3)

技術は練習すれば上達する。手を出さずに、がんばる姿勢を応援すること

――制作の手が止まってしまったときは?

考えている時間、「考えを蒸らしている時間」かもしれないので、しばらくそっとしておいていいでしょう。

でも飽きてしまったような子には、「こっちを使ってみたら?」と新しい画材を与えたり、「こういう持ち方もあるよ」と、エンピツや筆の持ち方を提案したりすると、もう一度がんばる様子が見られます。ご家庭では難しいかもしれませんが、できる範囲で気分を切り替えられるような声をかけてはどうでしょうか。 

――手伝ってもいいでしょうか?

基本的には手を出さないほうがいいと思います。他の人が手を出すと自分の作品ではなくなってしまうんですよ。頼まれたところだけ、ちょっと手を貸すぐらいはいいでしょう。頼まれてもいないのに横から手を出すのは禁物です。

 

――図画工作は努力しだいで上達するものでしょうか。

「技術」は確実に上達します。表現には伝えたい内容と伝える技術が必要ですが、技術はスポーツと同じで、くり返し練習することや、よりレベルの高いものを見ること・まねることでうまくなります。

ただ、本当は技術以前に「自分は何を伝えたいか、何を言いたいのか」という部分を明確にすることが大切ですね。でも、それもなかなか簡単ではない(笑)。

だから、とりあえずは手を動かすことです。実際に手を動かしてみるなかで、伝えたいことも、それを表現するために必要な技術は何なのか、ということもはっきりしてきますね。

だから、もちろん最初からうまくいくわけではないですけれども、そうやって試行錯誤していくことで、自分のやりたいことができるようになってきますよ。

教室を離れても“おもしろがる力”ははぐくめる。表現する力も伸びる

――いま、学校によっては鑑賞教育に力を入れているところもありますが、美術館やギャラリーへ行くことについても苦手意識をもつ子どもが多いと聞きます。子どもがもっと気軽にアートに親しむようになるためにはどうすればいいでしょうか?

ぼくが子どもと美術館に行くときによくやるのは「作品を1個だけ買うならどれにする?」と聞くこと。「絵の順番を無視してもいいし、解説を全部読む必要もないから、ザーッと見て好きなのを1個見つけようよ」というと、子どもは興味津々で観ます。決まったら、どうしてそれが好きなのか、おしゃべりします。そんな感じで、ゲーム性というか、楽しい感じを出すといいですよね。

ヨーロッパの美術館では、小学生グループが絵の鑑賞をしている光景をよく見るんですよ。でも別に高尚な話をしているわけではなく、「この人がうちの隣のおばさんに似てる」とか、好きなことを言っている(笑)。

――そんなたわいないおしゃべりでいいんですか?

いいんですよ。立派な鑑賞です。何かに見立てて楽しむのでもいいです。鼻が大きいね~!とか、「見たまま」な感想でもいいんです。ぜひ親子で、自分がおもしろいと思う点、気になった点を話してください。そうする中で、“おもしろがる力”だけでなく、伝える力、表現力がつくはずです。

必ずしもみんなが芸術家になる必要はありません。また、こういう芸術だけが正しい!というものもありません。ただ、社会で生きていくうえでだれしも何らかの表現を行っていくわけですから、子どものときからはぐくんできた「おもしろがる力」や表現力は一生、社会で生きていくうえで支えとなるはずです。

 ――どうもありがとうございました。

プロフィール

ミノオカ・リョウスケ(みのおか・りょうすけ)

1961年兵庫県生まれ。1984年滋賀大学教育学部美術科卒業。1987〜89年アメリカThe Art Students League of NewYorkに留学。絵本、イラスト、クラフト作品を制作する一方、ワークショップや講演、執筆を通し、子どもと大人を対象とした美術教育にも取り組む。『楽しみながら才能を伸ばす! 小学生の絵画 とっておきレッスン』(メイツ出版)は、ロングヒットの美術教育本。2020年春には、シリーズ本として『楽しみながら才能を伸ばす! 小学生の造形 とっておきレッスン』(仮題)が発行される予定。近著には、絵本『まんまるダイズみそづくり』(福音館書店)、『じょうききかんしゃビーコロ』(童心社)がある。

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