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ニュースに関心がもてる子になる(2)

中学、高校、大学入試における時事問題出題の意図

――中学、高校、大学入試において、時事問題が出題される場合があります。それぞれの入試における時事問題の出題意図を教えていただけますか。

私立中学の場合、時事問題の出題には、社会や人とのかかわりをイメージできる子どもたちに入学してほしいという学校側の思いが反映されています。要は、「勉強は勉強」で完結しない、勉強したことを社会に生かしていく力を中学校で育てられる素養のある子を取りたいという意図だろうと考えます。
高校入試の場合は、時事問題にはそれほど重きが置かれていないのが実情ではないでしょうか。公立高校の場合、時事問題がまったく出ない都道府県もありますし、各都道府県や私立高校の出題状況を見ても、公立・私立とも、机上での学びを社会とつなげて考えることよりも、ほかの力を見ることを重視しているように感じます。ただし、推薦入試の面接では「最近関心をもったニュースは何ですか?」「◯◯(時事)についてどう思いますか?」と聞かれる場合はあるでしょう。

一方、大学入試では、小論文や教科横断的な総合問題などで、時事を題材にした問題・課題が出題されることがあります。題材となる事象に対する意見や考えを明確にもっているかどうかや、今後どのように解決したいのか、そのために大学で何をどんなふうに学びたいのかなどを知りたいという意図で出題されていると思います。

――小学生のうちからニュースに関心をもっている子は、時事問題にも対応しやすいものでしょうか?

そのとおりです。ただ、目前の入試を突破するためというよりは、目的の学校に入ったそのあと、さらに、将来、社会で活躍していくためという長期的な視点で、小学生のうちからニュースに関心をもつことを習慣化してほしいなと思います。

中学入試の時事問題―出題傾向と対策―

――では、中学入試についておうかがいします。中学入試の時事問題には、どのようなパターンがあるのでしょうか?

大きく2つのパターンがあります。1つめは、時事そのものの知識や理解を問うパターン。2つめは、小学校で学習したことを問うために時事問題を切り口として使うパターンです。現状は、圧倒的に後者が多いですね。
加えて、最近出てきているのが、時事を題材にして情報の分析や比較をさせる問題です。たとえば、新聞の社説を3つ並べて、それぞれ異なる主張をしていることに気づかせる問題などが該当します。公立中高一貫校に増えてきています。

――よく出る分野などはあるのでしょうか?

社会の場合、「いずれあなたたちも大人になるんだよ」ということを意識しているのか、選挙や政治など、子どもたちの将来にかかわる題材が多いですね。たとえば最近なら、「成人年齢の引き下げ」「訪日外国人」などを題材にした問題を出す学校が多く見られました。2020年入試だと、「消費税増税」や「東京オリンピック」などは頻出テーマになると思います。

また、理科の場合は、気象や自然災害、天体ショー、ノーベル賞などを題材にした問題が多い傾向にあります。さらに、最近では、小学校ではあまり取り上げられない題材、たとえば分子モデルやCTスキャン、サイフォンの原理などに関する文章を読み、そこに書かれている情報と、もともと習っている知識とを総動員させて解かせるような問題が出てきています。

――中学入試の時事問題に対応するには、どのような準備をするとよいでしょうか?

教室で教えている子どもたちを見ていると、子どもは、勉強として学ぶことは勉強の世界の中のことだと考えてしまい、そのままでは世の中の事象とつながっていかないことを実感します。教科に関しても同じで、「社会」の部屋にいるときには社会の勉強をしていると思っているので、そこで計算が出てくると「これって社会じゃないじゃん、算数じゃん」と子どもたちは言います。このように、子どもは枠組みから外れることをイレギュラーなことだと強く感じる傾向があるため、その枠を柔らかくする必要があります。イレギュラーと感じるようなことをあえて多く経験させ、枠自体を広げていくことも大切ですね。

時事を切り口に小学校での学習内容の理解を問う問題の場合、自分がもっている知識と世の中の事象を結び付けていくトレーニングも必要です。たとえば、子どもは「違憲立法審査権」という言葉を学んでも、実際にどんな場合に適用される権利なのかまでイメージしないまま、「それはそれ」と終わりになってしまいがちです。だから、塾の講師や保護者の方など、子どもの見方に近づいてきてくれる大人が介在して、「違憲立法審査権が適用された裁判はこれ」などと結び付きを示してあげる必要があります。

――となると、大人にも知識が必要になるので、負担が大きいですね。

そうですね。であれば、中学生向けの新聞を活用するのもおすすめです。たとえば国会に与えられた権限の一つに「国政調査権」というのがありますが、連日のように国会で証人喚問が行われたとしても、それが国政調査権を行使しているのだということを一般のニュースだといちいち説明してくれません。それが、中学生向けの新聞だと、子どもの目線に立ってそこまで説明してくれます。なお、小学生向けの新聞もありますが、難関国私立中学を目ざすお子さまには、中学生向けのものがちょうどよいように思います。

――保護者は、どのようにかかわっていくとよいでしょうか?

「自分が全部教えなきゃ」と考えるよりも、保護者の方もお子さまと一緒に勉強を楽しむくらいのスタンスでかかわっていただくのがいいですね。
子どもたちにとって大事なのは、世の中で起こっている事象は自分にもかかわっていることだというイメージをもてるようになることです。したがって、学んだ知識を単純な知識として機械的に身につけるのではなく、世の中や身の回りの事象とのつながりを意識しながら理解できるよう、また「大人になるとこうなるんだな」と、これから自分が生きていく未来の社会に対するイメージをもてるよう、一緒に楽しみながらかかわってあげてほしいと思います。そうすることで、ニュースそのものへの理解も深まりますし、学校で学んだ知識との結び付きも感じられると思います。

――ありがとうございました。

プロフィール

髙原篤史(たかはら・あつし)

筑波大学附属駒場中学校や「御三家」と呼ばれる都内最難関私立中学群(開成中、桜蔭中など)の合格を目ざすZ会エクタス栄光ゼミナール講師。成城学園校室長。専門は社会科。中学受験の指導歴は2019年で24年目。後進の指導や教材・テストの制作などにも携わる一方で、現在も受験生指導の第一線に立っている。栄光ゼミナールをはじめ株式会社栄光が直営する全学習塾を挙げて行われる授業力コンテスト(Excellentスタッフグランプリ)で3度優勝し2014年に殿堂入り。2016年には、フジテレビ系「めざましテレビ」の夏休み企画「受験に出るニュース」コーナーを担当。北海道出身。

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