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気持ちを言葉にするための、親子の会話トレーニング (1)

「〇〇が欲しい」「〇〇で悔しい」「〇〇がイヤだ」など、自分の感情を相手に伝えたいとき、お子さまはどんな言い方をしていますか? 気持ちを言葉で伝えることは、大人でも難しいもの。今回の特集では、一般社団法人教育コミュニケーション協会代表理事の木暮太一さんに、「自分の気持ち・考えを言葉にする」ための、ご家庭でできるトレーニング法を教えていただきました。

目次

「気持ちを言葉にできた」経験が、自信につながる

――「気持ち・考えを言葉にできる」と、子どもにとってどんなよいことがあるのか教えてください。

すべてのことに役に立ちますよ。たとえば、「友だちといい関係を築ける」ようになります。もちろん、友だちどうしに限らず、人間関係全般に役立ちます。感情を言葉にできないと、言いたいことを我慢しちゃったり、その我慢がつのって爆発しちゃったり、最終的に手が出ちゃったりする。「言いたいことを溜め込んでしまう」のが問題なので、溜め込む前に「自分はこう思っているんだけど、君はどう思う?」とか、そういう会話ができるとよいですね。感情を言葉にして表すことで、発散できるんです。言葉でちゃんとわかりあえれば、悲しみや怒りの感情も小さくなるでしょう。

ほかには、「自分が欲しいものを欲しいと言える」ようになります。実は、ほとんどの人は、自分がなにが欲しいか、どうしてほしいのかということを、言葉にできていないんです。自分の願望を言葉にできないと、ほかの人には伝わらないですよね。第三者から見ると欲しがっていないように見えてもしょうがない。そうするとなかなかその願望もかないません。

――子どものうちだけでなく、大人になってからも大切なことですね。

そうなんです。しかも、「自分の気持ち・考えを言葉で伝えられた」という経験、そして「伝えた相手がそれを受け入れてくれた」という経験を積むことで、自分の考えに自信をもてるようになります。よく自分は「根拠のない自信」という言い方をするのですが、自信って本来根拠がないものなんですよね。ぼくに言わせれば、「こういう根拠があるからうまくいく」という場面は、自信があるんじゃなくて、その根拠を信じているだけなんです。そして、その「根拠」がない場面なんて人生にはいくらでもあって、それでも行動しなければいけない。そういうときにあと押ししてくれるのが自信なんですよね。自分の考えを言葉で伝える経験を積んだ子は、自分の考えに自信をもてるようになって、行動に移すことができるようになるんです。

 

「気持ちを言葉にする」ためには、トレーニングが必要

――言葉にする大切さはよくわかりました。一方で、なかなか言葉にできない子もいます。

「言葉にできる」ようになるには、トレーニングが必要です。一種の筋肉を鍛えているようなもので、トレーニングをすればどんどん上達するし、さぼっているとどんどん衰えていってしまう。いきなり「言葉にする」ということをしようとすると、すごく緊張して、どきどきして、結果的に言いたいことの半分しかいえず、伝えたかったことが伝わらない。だから、日ごろから鍛えておくことが大切です。

そもそも、「言葉にできない」には、ふたつの状態があるんです。ひとつ目は、自分の気持ち・考えをどうとらえて、どう表現したらよいのかわからないという状態。「(1)とらえどころのない気持ち・考えを言葉にする」ためのトレーニングが必要です。ふたつ目は、気持ち・考えを相手に伝わるように話せないので、十分に伝わりきらない状態。「(2)気持ち・考えを、効果的に相手に伝える」ためのトレーニングが必要です。

たとえば、「どうしてケンカしちゃったの?」と聞いたとき、(1)ができていないと、泣いたり黙りこんだりしてしまって、何も言えない。(2)ができていないと、「むかついたから」と単語を発することはできるけど、きちんと状況が伝わったとはいえないですよね。(1)と(2)がどちらもできると、「○○くんが『その洋服ださい』って言ったのが、悲しくて悔しかったから、『うるさい!』ってどなってたたいちゃったの。」と、相手に伝わるように言えるようになるわけです。「何が」「どうした」「なぜ」の3つが基本になるので、これらを相手に伝えられるようにトレーニングしていきましょう。

低学年のうちは、(1)ができれば十分です。(2)は、大人が「それで?」「どう思ったの?」などと手を貸してあげてください。高学年になったら、だんだんと(2)も自分の力でできるようになるとすばらしいですね。

⇒次ページに続く 「『(1)とらえどころのない気持ち・考えを言葉にする』ためのトレーニング」

プロフィール

木暮 太一(こぐれ・たいち)

木暮 太一(こぐれ・たいち)
一般社団法人教育コミュニケーション協会代表理事。「難しいことをわかりやすくする方法」を中学2年生から研究しており、『「自分の気持ちを言葉にする」練習帳』(永岡書店)、『伝え方の教科書』(WAVE出版)など、著書多数。伝えたいことを言葉にすること、自分がもっている価値を言葉にすることの専門家。日本各地で小・中学生に作文の書き方を教えるボランティア授業も行っている。

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