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気持ちを言葉にするための、親子の会話トレーニング (2)

「(1)とらえどころのない気持ち・考えを言葉にする」ためのトレーニング

――「言葉にできる」ようになるには、トレーニングが必要とのことでしたが、どんなことから始めるのがよいでしょうか。

「(1)とらえどころのない気持ち・考えを言葉にする」トレーニングにぴったりの問いかけがあるんです。それは、「何を教えたい?」です。これは、いつでも使えます。「今日の学校はどうだった?」「どうしてケンカしちゃったの?」と聞かれても、ぱっと答えられなかったり、「わかんない」と言ってしまったりするのは、頭のなかにいろんな言いたいことがあって、どれに焦点を当てていいのか、どれを言ったらいいのかがわからないからなんですね。そこで、「自分が教えたいこと」に焦点をあててあげるのがこの問いかけ。「言葉にする」ためには、「言葉にしたい」という気持ちがとても大切なんです。

よく、「うちの子は何も考えていなくて……」なんておっしゃる方もいらっしゃるのですが、そんなことはありません。頭のなかでいろいろなことを考えていても、どこに焦点を当てて話せばいいかわからない。だから、「わかんない」とか「なんでもいいよ」と言ってしまうんです。「お母さんに教えてあげたいと思うことは何?」と聞くようにすると、話したいことがどんどんと出てきますよ。子どもって、「教えてあげる」ことが大好きなんです。積極的な子も、引っ込み思案な子も、これまで接してきたほとんどの子が、「何を教えたい?」と聞くと、ドヤ顔で話してくれました。

子どもの言葉を引き出すときに大切なのが、「テンションを上げること」と「まずは受け止めること」です。テンションが上がると「言葉にしたい」ことがどんどん出てくるので、保護者の方は「それでそれで!?」と前のめりで聞いてあげてください。また、言ったことに「そういうことじゃなくて」のように否定してしまうと、そこでその子の言葉は止まってしまいます。子どもが「教えたいこと」に正解があるはずはないんです。まずは、子どもが「教えたい」と思ったことを受け止めて、「それで?」「もっと教えて!」と、さらに言葉を引き出してあげてください。最初にもお話ししたとおり、言葉にして、それを受け止めてもらった、という経験を積むことが、その子の自信につながるんです。

ふだんの会話がトレーニングになる!

トレーニングその1 好き嫌いゲーム

ルール

私たちは、興味のあること以外は「好き」でも「嫌い」でもなく「フツー」です。でも、なんでも「フツー」にしていたのでは、自分の気持ちを知ることはできません。そこで、目にしたものはなんでも好きか嫌いかに分けてみましょう。

お題:リビングにあるもの

テレビ:好き、花瓶:好き、時計:嫌い、いす:嫌い、ソファ:好き、……

ふだんから自分の気持ちを口にすることに慣れておけば、いざ作文を書いたり発表したりするときの心理的ハードルを下げることができます。

トレーニングその2 自分ランキング

ルール

自分的におもしろいもの、自分が好きなこと、自分にとってよかったことなどを、独断と偏見でランキングづけしてみましょう。

テーマ:夏休みの思い出

  • 1位:おじいちゃんの家に行くときにひとりで新幹線に乗ったこと
  • 2位:庭で流しそうめんをしたこと
  • 3位:ハワイ旅行の飛行機のなかで機内食を食べたこと

「ぜんぶ1位!」はダメです。自分のなかで順位を明確につけることで、自分が何を大事にしているのか、自分なりのポイントがわかってきます。

トレーニングその3 べき・だって探り

ルール

イライラするのは、相手に対して「~すべき」と思っているからです。でも一方で、相手は「だって、~なんだもん」と思っています。

このように、自分が思う「べき」を見つけ、相手の「だって」を考えてみると、自分の価値観が明らかになります。そこでイライラすることや場面に対して、自分の「~すべき」と相手の「だって」を探ってみましょう。

  • 場面:ランドセルにキーホルダーは1つしかつけてはいけないのに、クラスメイトが3つもつけている。
  • 自分のなかの「べき」:決まりは守るべき。
  • 相手の「だって」:だって、3つのうち1つは防犯ベルだからはずせないんだもん。だって、自分のお気に入りも友だちとのおそろいもはずしたくないんだもん。

これは、保護者の方がお子さんをしかる場面でも心がけていただくとよいかもしれません。保護者の方の「べき」を押し付けるだけではなく、お子さまの「だって」をまずは受け止めてあげることで、「親子バトル」ではなく、「話し合い」ができるかもしれません。言いにくいことを聞くときは、「なんで宿題をやらないの? (だって)習いごとで疲れたからかな?」のように、まずは呼び水として受け止める姿勢を示すと、そこから子どもが自分の考えを話せるようにもっていくことができます。

感情のゆれがなくなると、自分の好きなことがわからなくなる

――このようなトレーニングは、自分の気持ちと向き合うきっかけになりそうですね。

「自分の感情を正直に認める」ことが大切なんです。顔を引きつらせて、好きでもないものを「好きだ」と言っている大人をよく目にしますが、ぼくに言わせるとこれは最悪ですね。ごまかして嫌いなものを好きだと言っていると、自分が本当に好きなものが何かわからなくなってしまう。すると、感情がゆれなくなって平坦になってしまうんです。せっかく旅行に行っても、おすすめルートをなぞるだけで、自分が行きたいところを「選択」することができなかったり。自分の感情を認められると、自分の価値観に優先順位をつけて、「選択」することができるようになります。楽しみも増えるし、人生が豊かになるはずですよ。

⇒次ページに続く 「『(2)気持ち・考えを、効果的に相手に伝える』ためのトレーニング

プロフィール

木暮 太一(こぐれ・たいち)

木暮 太一(こぐれ・たいち)
一般社団法人教育コミュニケーション協会代表理事。「難しいことをわかりやすくする方法」を中学2年生から研究しており、『「自分の気持ちを言葉にする」練習帳』(永岡書店)、『伝え方の教科書』(WAVE出版)など、著書多数。伝えたいことを言葉にすること、自分がもっている価値を言葉にすることの専門家。日本各地で小・中学生に作文の書き方を教えるボランティア授業も行っている。

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