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「ガミガミ」から卒業しよう〜子どもを自立へ導く親の姿勢(2)

世界をどう解釈するか、選択肢を示すことで主体性をはぐくむ

――家族会議は、低学年でもできるものでしょうか。

もちろんです。むしろ低学年からそういう時間を持ちたいもの。
これも理由が2つあります。1つは習慣化しやすいから。もう1つは、アドラー心理学では子どもの性格は10歳くらいまでに確定すると考えているから。その性格形成の大切な時期に大人が子どもとたくさん話をして、「世界をどう解釈するかは自分次第なんだ」と伝えてあげたいからです。

――どういうことでしょうか。

家族会議で、「宿題をしなくてしかられた」と子どもがこぼしたとします。そういうとき、たいてい子どもは「自分はダメだ」と考えている。これを放っておくのではなく、「先生はあなたのことを気にかけているのかもしれない。よく見てくれるいい先生とも考えられるよね」「あなたに期待しているという見方もあるね」と、いろいろな見方を示してあげる。すると子どもは、世の中はいろいろなとらえ方ができて、自分で自由に選んでいいのだと学ぶことができる。そして自分が勇気づけられる(※アドラー心理学では「自分には価値がある・困難を克服していこうと思える」こと)方向を自分で見つけられるようになります。これは、主体性や折れない心を育てることにつながる。話し合う時間は、その機会にもなるんです。

――高学年では、もう遅い?

高学年は性格傾向がかなり一貫してくるので、なかなか話を聞かなくなりますが、遅いことはありませんよ。
急に家族会議をしようとか、「アドバイスしてもいいですか?」などと言うと、気持ち悪がられるかもしれません(笑)。そのときは「アドラー心理学について読んで、こうしようと思ったの」と種明かしをすればいいと思いますよ。「じゃあ、聞いてやってもいい」となるかもしれません。

ほめ方にはコツがある。子どもの勇気につながる言葉を

――よく「ほめて育てよう」といいますが、アドラー心理学ではほめることはすすめないのでしょうか。

ほめることは悪いことではありませんが、注意が必要です。コントロールしようとしてはダメ。相手が勇気づけられる言葉なら、どんどんかけてあげるといい。

――具体的にどんな言葉ですか。

子どもの性格や状況、表情にもよるので、これだけ言えば大丈夫という魔法の言葉はない。ピアノの発表会で失敗した子に、「失敗もあったようだけど、上手だったよ」と言ったとき、「よかった。ずっと練習してきたかいがあった」と思ってもらえたらいいほめ言葉になりますが、失敗を指摘されたと思い泣き出す子もいるかもしれない。
今、目の前の子にはどの言葉がいいのか、親は必死で考えなくてはいけません。やったことがなければ難しいでしょうが、失敗して泣かれても、親の学びになります。繰り返すなかでうまくなりますよ。

――これまで、ほめてその気にさせるという接し方をしてきた人は多いと思いますが……。

実際のところ、子どもが低学年のうちはあまり言葉の裏を読まないので、「すごいね」「上手だね」で、コントロールできてしまうことも多いです。でも思春期を迎えると、「親はこういう意図で言っている」と、はっきり読み取るようになる。すると子どもは期待に添うことをやめる。真逆のことをするときもあります。
でもそれが当たり前なんですよ。親の期待に反抗することで子どもは自立していきます。反抗が見られたら自立の第一歩だと思い、コントロールしないように接し方を改めることが大切です。

人は観察から多くを学ぶ。親が挑戦を楽しもう

――子どもの社会的自立は教育の目標の1つだと言われます。アドラー心理学も、自立を目標にしているのでしょうか。

「自立」つまり自分で判断し行動できること、そして「調和」つまりほかの人とよい関係を築き協力し合えること、2つを目標にしています。
21世紀になり、計算や暗記力のような認知スキルより、こうした非認知スキルこそが社会で活躍していく上で大事だといわれるようになりましたが、アドラー派は100年前からそれを重要だと言ってきたのです。わが意を得たりという気持ちです(笑)。

――子どもを自立へ導くために、対等な立場で接すること、協力関係を築くこと以外に、親が何かできることはありますか。

「あなたにはいろいろな能力の芽がある。いろいろなことを試して、自分が生きていくための好きな道を見つけてね」と伝えることはできます。
子どもに人気のYouTuberだって、売れない時代にいろいろなことを勉強したはず。そんな例を出しつつ、「絵をかく、楽器を演奏する、歴史を勉強してみるなど、ひと通りやってみて、どれがおもしろいのか確認するといいね」と子どもに伝えれば、子どもも主体的になり、いろいろなことに挑戦するようになると思いますよ。
それには、親御さんが自分でも新しいことにチャレンジするといい。語学を習い始めるとか、テニスに挑戦するとか。新しいことを始める子どもの気持ちがわかって、意味のあるアドバイスができる。
それに、人は習うよりも観察するほうが、はるかに効果的に物ごとを習得します。親がおもしろいことをやっている姿から、子どもは多くを学ぶ。夢中になれるものを見つけ自立していきますよ。

プロフィール

向後千春(こうご・ちはる)

1958年生まれ。早稲田大学人間科学学術院教授。博士(教育学)。専門は教育工学、教育心理学、アドラー心理学。1981年早稲田大学第一文学部卒業。日本タイムシエア株式会社、富山大学教育学部講師・助教授、早稲田大学人間科学部助教授等を経て、2012年より現職。『アドラー”実践”講義』(技術評論社)、『コミックでわかるアドラー心理学』(中経出版)、『200字の法則 伝わる文章を書く技術』(永岡書店)、『幸せな劣等感』(小学館新書)、『アドラー式「しない」子育て』(白泉社・吉田尚記氏との共著)他、著書多数。一般人、教育者、ビジネスパーソン等を対象にした講演やセミナーに登壇しアドラー心理学の実践法をわかりやすく説いている。

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