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家族で楽しめる「俳句」にチャレンジ!(1)

五・七・五の17音で情景や気持ちを表現する俳句。一見、難しそうですが、ルールとちょっとしたコツを知れば、低学年から大人まで、そして、家族でも気軽に楽しめます。そのコツを、ご自身が俳人で、兵庫県の甲南高等学校・中学校国語科教諭、同校文芸部顧問でもある塩見恵介先生にうかがいました。自宅で過ごす時間が増えている今、家族の楽しみのひとつに俳句はいかがですか?
(取材・文 浅田夕香)

目次

読み方の正解はひとつじゃない。作者が驚くような解釈も

――塩見先生は、ご自身も俳句を作られますし、授業や朝日小学生新聞などを通じて子どもたちへの俳句指導もされています。俳句の魅力をどのように感じていらっしゃいますか?

まずは、自分から自分じゃないものが出てくる、というところですかね。

――どういうことでしょうか?

同じ俳句でも読み方や解釈の仕方が人それぞれなので、自分が作った句にも「そんなおもしろい解釈があるのか!」と発見があるんです。

たとえば、小学生向けの授業で、松尾芭蕉の有名な句、「古池や 蛙飛び込む 水の音」を取り上げて「どんな世界だと思う?」と尋ねると、ほんとうにさまざまな答えが返ってきます。

「古池や」の古池の大きさを尋ねると、「庭にある池くらい」「お寺や庭園にあるような、小さな舟なら浮かべられるような池」「琵琶湖くらい?」といろんな意見が出てきますし、「蛙」についても、アマガエルだと言う子がいれば、ヒキガエルだという子もいます。また、「蛙は何匹いると思う?」と尋ねると、「1匹」と答える子もいれば、「たくさん」という子も。

これは別に子どもだけでなくて、大人も同様です。たとえば、正岡子規は蛙の数を英訳する際に「a frog」と、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は「frogs」と訳しています。また、高浜虚子も複数の蛙が飛び込んでいると解釈しています。

このように、一つの句についてみんなで感じたことをわいわいしゃべっていると、作った本人が思いもよらなかったようなものも含めて、さまざまな解釈が出てくる。そして、それらの解釈はすべて正解として許容するのが俳句の世界です。おもしろいですよ。

言葉と言葉を組み合わせることで、新しい世界をつくることができる

――なるほど。では、作るほうの楽しみとしては、どんなものがありますか?

俳句には季語が付き物なので、まず季語を知ることで語彙が豊かになりますよね。語彙が豊かになると、世界の見え方が変わったり、広がったりすることでしょうか。たとえば、今、小学生でもあじさいの花を知らない子がいますが、俳句作りを通して「あじさい」という季語を知り、「この花があじさいだ」と認識すると、あじさいの花が他の花とは区別されますよね? 言葉が増えると見えてくる世界が変わる。それが俳句を作るおもしろさの一つかなと思います。

さらに、「『あじさい』にどんな言葉を組み合わせると、人とちょっと違った世界をつくれるかな?」と考えると、もっと楽しくなってきます。たとえば、「雨上がりの虹がきれい」とか「あじさいが雨で移ろう」といった情景や感情は、多くの人がすでに感じたり、俳句で表現したりしていますが、そういったすでに表現されたものではない言葉と言葉の組み合わせを考えてみると、人とちょっと異なる世界をつくれるんです。言葉と言葉の組み合わせで新しい世界をデザインするというか。

――言葉と言葉の組み合わせを工夫することで、これまでとは異なる世界の切り取り方ができるということでしょうか?

そうです。正岡子規の「柿食へば 鐘が鳴るなり 法隆寺」という句がまさにそうで。ぼくらにしてみれば、奈良に柿があるのは当たり前のように思われますが、この句が作られた当時は、奈良と柿を組み合わせる発想は一般的ではなく、「柿」という言葉が詩に出てくるケースも非常に少なかった。そこで、組み合わせの新しさが喜ばれたわけです。

あとは、現実的ではないけれど、なんとなく感覚的にわかる、言葉でしか表せなないような世界を表現できるのもおもしろいところです。たとえば、俳人・富澤赤黄男(とみざわ・かきお)の句に「恋人は 土竜(もぐら)のやうに 濡れてゐる」という句があります。「もぐらのように濡れている」って、ちょっと意味がわからないけれど、なんとなくじめーっとした感じは伝わってきますよね?

――はい。

坪内稔典(つぼうち・ねんてん)の「たんぽぽの ぽぽのあたりが 火事ですよ(『ぽぽのあたり―坪内稔典句集』) 」という句もそうです。「『ぽぽのあたり』ってどこ?」「たんぽぽが火事ってどういうこと?」と思うけれど、なんとなく音が楽しいし、意味のわからなさがおもしろい。こういった、ナンセンスな世界をつくれることも、俳句のおもしろさだと思います。

ただ、小学生くらいの子がここまで自分の世界をつくって表現するのは、なかなか難しいとは思います。まずは、日常の中で感じたことや、見た情景を素直に表現するところから始めるのがいいのではないでしょうか。

⇒次ページに続く 「まずは5文字の季語を設定することから――俳句ことはじめ」

プロフィール

塩見 恵介(しおみ・けいすけ)

1971年大阪府生まれ。俳人。甲南高等学校・中学校の国語科教諭。現代俳句協会会員。大学時代に俳句に出会い、俳人・坪内稔典氏に師事。勤務先の甲南高等学校・中学校では、2004年に文芸部を第7回俳句甲子園優勝に導く。著書に『みんなで楽しく五・七・五! 小学生のための俳句帖 作ってみよう編』(朝日学生新聞社)など。同志社女子大学表象文化学部嘱託講師、朝日小学生新聞「はじめて俳句 五・七・五」の選者も務めている。

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