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家族で楽しめる「俳句」にチャレンジ!(2)

5文字の季語を設定しよう――俳句ことはじめ

――俳句を作るにあたり、押さえておきたいルールはありますか?

次の二つはできれば守っていただきたいですね。一つ目は季語を入れること、二つ目は五・七・五の17音で作ることです。最初はあまり季語にとらわれすぎなくてもだいじょうぶです。いくつか作っていくうちに、どんな季語があるのかを学んでいきましょう。

親子でチャレンジするときには、保護者の方がお子さんの語彙に応じて季語をいくつか提案して、その中から子どもが選んで作るのが始めやすいでしょう。最初におすすめなのは、5音の季語です。初めの5音か最後の5音に置けるので。「最初に『かき氷』と置いて、続きに自分の気持ちを入れるといいよ」などと、最初の5音を決めて、続く12音に自分の気持ちを入れる、という方法から始めると、比較的作りやすいようです。

ただ、今「気持ちを入れるといいよ」と言いましたが、実は俳句って、気持ちを直接言うと損なんです。

――どういうことでしょうか?

たとえば、ぼくが授業で「『かき氷』で俳句を作ってください」とお願いすると、だいたい最初に出てくるのは、「かき氷 家族で食べて おいしいな」という感じの句です。でも、「おいしそう!」ということは、できた句を読んだ人が気づきたいんですよ。句には「かき氷を家族で食べている」という情景を描いて、その句を読んだ人が「おいしそう!」と言いたい。

俳句はもともと、1人が最初の句を作ったら、次の人がその句の情景から次の句を作るという「連句」から切り離されて生まれたものです。すなわち、句会をはじめ、人と人とのやりとりがあってこそのもの。1人が作った句を皆が聞いて、同じことを心の中に思い浮かべたり、それぞれに思うことは違ってもなんとなく空気を共有したりすることに価値が置かれています。

ぼくの授業では、俳句の形を覚えたら、次は「おいしい」などの気持ちを本人に言わせない工夫をしています。

――具体的に、どんな工夫をされているのでしょうか?

先ほどのかき氷の句であれば、「どこで食べてる?」と投げかけてみる。すると、「かき氷 縁側で食べ おいしいな」に変わったりします。そうなれば、「『縁側で 家族で食べる かき氷』でもええんちゃう?」とアドバイスする。そういったやりとりをしていると、子どもも「なるほど、『おいしいな』は言わなくてもわかるんだな」とコツがわかってくる。

さらに、「縁側じゃなくて、どこか違うとこに行かへん?」と投げかけると、「公園で 家族と食べる かき氷」「父さんと 海辺で食べる かき氷」など「○○で」が変わってきます。さらに、「父さんと 新幹線で かき氷」など、「食べる」という言葉もなくなっていく。そこで「お、帰省の雰囲気出てるやん?」とリアクションすると、子どもたちが調子に乗ってきます。

お父さんを恐竜やライオンに変えて、「恐竜と 新幹線で かき氷」「恐竜と 宇宙で食べる かき氷」「ライオンと サバンナで食う かき氷」などと、ナンセンスに、これまでとはちょっと違う、その子の世界に飛んでいってくれる。

そうやって、言葉の組み合わせを楽しんでくれるといいなあと思いながら指導しています。

――そんなやりとりを家族でもできると楽しそうですね。

いいですね、家族で句会。最低3人集まれば句会は成立しますから。お父さんとお母さんがそれぞれ俳句を作ってせーの!で見せ、お子さんが気に入ったほうを選ぶとか。

⇒次ページに続く 「夕食のメニュー、色えんぴつ…家族の句会はテーマを決めるのがおすすめ」

プロフィール

塩見 恵介(しおみ・けいすけ)

1971年大阪府生まれ。俳人。甲南高等学校・中学校の国語科教諭。現代俳句協会会員。大学時代に俳句に出会い、俳人・坪内稔典氏に師事。勤務先の甲南高等学校・中学校では、2004年に文芸部を第7回俳句甲子園優勝に導く。著書に『みんなで楽しく五・七・五! 小学生のための俳句帖 作ってみよう編』(朝日学生新聞社)など。同志社女子大学表象文化学部嘱託講師、朝日小学生新聞「はじめて俳句 五・七・五」の選者も務めている。

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