特集

子どものストレス 〜「心の筋肉」を鍛えて上手につきあうには(1)

先の見えないこの社会情勢のなか、お子さまも保護者の方も、多くの不安やストレスを抱えこんでしまっていませんか。
今月は不安・ストレスに負けない心をつくるために、親子でできることを考えます。

現代社会においては、だれもがさまざまな不安やストレスを抱えているといわれます。そんな今、わたしたち大人が子どもたちに不安やストレスの扱い方、つきあい方を教える必要に迫られているのではないでしょうか。しかし、そもそも親自身が不安やストレスへの対処に自信がないというケースも少なくありません。
不安やストレスと上手につきあうとはどういうことなのか。それを子どもにどう教えるべきなのか。臨床心理士・公認心理師として現場経験もおありの越川房子先生にうかがってまいりました。
(取材・文 生沼有喜)

2013年5月に当時のZ会の小学生保護者向け情報誌『zigzag time』にて掲載した越川先生のインタビュー記事をもとに再構成して掲載しています。

目次

小学生だって、さまざまな不安やストレスを抱えている

――小学生が抱えやすい不安やストレスには、どういったものがあるのでしょうか。

いちばんは友だち関係でしょうね。幼少期に子どもだけで遊んだ経験が少ない子ですと、入学して友だち関係を築く段階でストレスを抱えるでしょうし、クラス替えで友だち関係を構築し直さなければいけないことにストレスを感じる子もいます。中学年、高学年になってくると仲間はずれやいじめといった問題も出てきますし、思春期に入れば身体も変化して、異性の視線も意識するようになりますから、他人と比較してコンプレックスや劣等感を感じるというストレスも加わってきます。

ほかにも学業不安や苦手意識からくる不安・ストレスなど、子どもも大人と同じようにさまざまな不安やストレスを抱えて生活しているのだと、まずは理解してあげてください。

――子どもが不安やストレスを抱えているシグナルはどんなふうに表れるのでしょうか。

低学年のうちは「○○ちゃんがいじわるした!」などと親に言いつけたりしますが、高学年になると何も言わない、話そうとしないという反応が多く見られます。話さないのは自立の兆候かもしれませんが、何か大きな不安やストレスを感じている可能性もありますから、「反抗期だ」で片づけないで、注意して様子を見てあげる必要がありますね。
だからといって、頻繁に「どうしたの?」「何かあった?」と心配しすぎてもよけいに子どもは話さなくなりますから、わかりやすい例で、「食欲がない」、「顔が沈んで暗い感じがする」、「朝の支度がゆっくりになった」、「忘れ物が増えた」、などのシグナルをとくに注意してみるといいと思います。

不安やストレスはあってあたりまえ

――そうしたシグナルに気づいた場合、親はどのように対処すればよいのでしょうか。

大切なのは、「不安やストレスを抱えるのは悪いことじゃないんだよ。生きていたらあたりまえなんだよ」と、常日ごろから親御さんの態度、言動をとおして伝えてあげることです。

不安やストレスというのは、「自分が願っているように物事が進まないかもしれない」「自分が思っているより悪い状態になるかもしれない」と考える場合に生じやすいんです。つまり視点を変えれば、不安やストレスとは「よりよく生きたい」という願いから生まれるといえますよね。だからこそ、人は想定されるリスクを回避するために学んだり練習したり技術を開発したりする。個人レベルでも社会レベルでも、不安やストレスによって成長と発展が促される場合があるという意味では、肯定的な側面もあるんですよ。

それを、親が「不安やストレスなどあってはならないもの」として扱うような態度をとると、子どもは不安やストレスを感じること自体に不安やストレスを感じてしまい、二重に苦しむことになる。更に、「不安やストレスを感じる自分は弱くてダメな人間なんだ」と思ってしまいがちになるんです。

重要なのは「不安やストレスを感じないようにすること」ではなくて、「それを感じたあとに何を選択し、どう行動するか」なのだと教えてあげましょう。「生きていれば、不安やストレスはいつも出合うお友だち。ただ、上手につきあうにはちょっとコツがあるから、それを練習したら、少しずつ上手につきあえるようになっていくよ」――こんなふうに話してあげれば、子どもは不安やストレスを感じている自分の自己評価を下げずにいられますし、不安やストレスには対応策があって、練習すればうまくつきあう方法を身につけることができるとわかって安心できるんですよ。

いちばんいいのは、親自身が不安やストレスに対処している姿を子どもに見せることなんです。格闘している姿や、「どうしよう」と動揺する姿も見せていいんです。でもそこから何ができるかを考え、今自分にできる手をいろいろと打って立ち直ろうとする――そうした親の姿こそが、子どもの心に「こうすればいいのか!」と不安やストレスとの上手なつきあい方の具体例として刻まれるのです。

子どもが理解できるようであれば、生きていくうえで必ず起こるような対人関係の不安やストレスなどはあえて子どもに話して、自分がどう対処しようと考えているのかも口に出して示してあげていいと思いますよ。

⇒次ページに続く 「不安な考えから抜け出すには身体に意識を向けること」

プロフィール

©shimizuchieko

越川 房子(こしかわ・ふさこ)

新潟県出身。早稲田大学第一文学部心理学専修卒業、同大大学院文学研究科心理学専攻博士課程単位取得満期退学、早稲田大学文学部助手、専任講師、助教授を経て、現在、早稲田大学文学学術院教授。専門は臨床心理学・パーソナリティ心理学。訳書に『子どものストレス対処法-不安の強い子の治療マニュアル』(岩崎学術出版)『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)『うつのためのマインドフルネス実践』(星和書店)など。著書に『ココロが軽くなるエクササイズ』(東京書籍)など。

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