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子どものストレス 〜「心の筋肉」を鍛えて上手につきあうには(3)

心の筋肉を鍛えるエクササイズ

心の筋肉を鍛えると、不安やストレスで心の風邪をひいてしまっても、こじらせることなく早く回復することができ、また、心の風邪の予防にも役立ちます。
ここからは越川先生に教えていただいた心の筋肉を鍛えるエクササイズをご紹介していきます。どのエクササイズから始めてもかまいませんから、心の不調を感じたら親子で一緒に、またはお子さま自身で挑戦してみてください。自分に合ったやり方を見つけ、不安やストレスに負けない心の筋肉を鍛えていきましょう。
(お話=越川房子先生、参考=『ココロが軽くなるエクササイズ』越川房子監修、構成=編集部)

身体バランスを使って、メンタルバランスを立て直す

ストレスで心が不安定だと感じたときは、身体のバランスをとることでメンタルのバランスも取り戻しましょう。
この方法は、自分の身体の「中心」を感じ取ることでメンタルを立て直すことができるエクササイズです。

※バランスをとることが不安な方は、すぐに壁に手がつけるような場所で、安全に気をつけて行いましょう。

1. 背筋を伸ばしてまっすぐ立ち、目線を目の高さで一定にし、息を深く吐いてリラックス。


2. 体をまっすぐにしたままできるだけゆっくり体を前に傾けます。


3. これ以上傾けられないという位置で数秒保ちます。


4. ゆっくりと体を元の位置に戻し、そのまま少しずつ後ろに傾けていき、これ以上は傾けられない位置で1秒保ちます。


5. このサイクルを少なくとも3回繰り返し、無理がなければ「薄目で」「目を閉じて」やってみましょう。


6. 体を元の位置に戻し、足の裏と床が触れている部分に注意を向けます。静止しているようでも重心を保とうとわずかに体は揺れています。このときの揺れ幅の中間点があなたの「中心」となります。体をまっすぐに戻し、「中心」を感じ取りながら静止しましょう。


 

越川先生’s アドバイス
わたしたちが思っている以上に、精神と身体は深くつながりあっているものです。ふだんの生活の中でも、心が疲れたら、栄養のあるものをおいしくいただいてよく眠ると、ストレスに対処する力を取り戻せます。
このエクササイズでは、倒れないようにするためにすごく集中力を使いますから、意識が体に集中します。頭でいろいろと考えすぎてしまっているときには、問題から意識を離すことができてとくにオススメです。心の中心を取り戻してから、どう対応するかを考えましょう。

体の緊張をほどいて、心もほどく

ストレスを感じると、緊張をつかさどる交感神経が強くはたらき、血圧が上がったり、筋肉が凝り固まったりして、心身ともにくつろげなくなってしまいます。一方、リラックスすると体の力も抜け、不思議なことにネガティブなことを考えにくくなります。意識的に緊張をほどき、ストレスを受け流せる体・意識づくりをしましょう。


1. ラクな服装で仰向けに寝転がり、深呼吸を一回して、全身の力を抜いてから始めます。


2. 両手をげんこつにして力いっぱい握りしめます。


3. 入れた力をパッと抜いて、力の抜けた手の感触を感じます。


4. 腕にぎゅっと力を入れて緊張させ、肩も思い切りすくめます。しばらくそのままにした後、一気に脱力して、手・腕・肩の感触を感じます。


5. 同じように、つま先、両足、顔(目、歯、口)の順に、それぞれ力を入れて緊張させてから、一気に脱力して、筋肉がゆるんだ感じを実感しましょう。


6. 最後に、全身にいっぺんに力を入れて、一気に脱力します。全身の感触を感じましょう。


 

越川先生’s アドバイス
力を入れるときは最大の力の70~80%の力を7秒間ほど入れましょう。脱力した後10秒くらいは、力の抜けた「だら~ん」とした感じを味わってください。力を抜くことは力を入れることよりもずっと難しいのですが、慣れてくるとストレスなどで緊張するときにすぐに使え、物事に集中しやすくなります。試合や発表会の前に、できる範囲で「両手を力いっぱい握りしめてから脱力」などをやるのも効果がありますよ。

ぐるぐる思考を止める

一度悩みだすと、そこから抜け出せずに延々と悩んでしまうことはありませんか。考えれば考えるほど思考は悪いほうへと向かい、落ち込む一方になってしまうことも。しかし、完全に思考を止めるのは難しいものですから、時間を決めてそのときだけ集中して考えるようにしてみましょう。


1. 小さな紙と鉛筆、封筒を用意します。


2. 自分が考えてしまうことを紙に書き出します。声に出しながら書くのもオススメです。


3. その紙を折りたたんで封筒に入れ、封筒の表に「いつ」「何分間」考えることにするのか書き込みます。決めた時間でなくても考え出してしまったら、封筒を取り出していつ考えることにしていたかを思い出してください。


4. 時間がきたら、封筒から紙を取り出して決めた時間だけ集中して考えます。


 

越川先生’s アドバイス
考え込むことは決して悪いことではありませんが、根拠のないことに悩み続けるのはエネルギーの無駄づかいです。悩みから一度意識を離し、冷静になった自分で悩みに対処していきましょう。

気持ちをラクにする言葉をつぶやく

自分自身に適切な言葉をかける、言い聞かせることで、問題を改善しようとするエクササイズです。
気分や感情はできごとに対する受け止め方によって作り出されるもの。そのできごとの受け止め方、解釈のしかたによってつらい気分になるか、前向きでいられるのかも変わります。そこで、まずはいやなできごとがあったときに自分がどう考えるクセがあるのかを自覚しましょう。そのクセが自分を落ち込ませているのなら、自分の気持ちが少しでもラクになる、助けとなるような言葉を日常生活のなかで自分に言い聞かせるように声に出してつぶやきます。その言葉を発することで思考・気分を変える効果があります。


1. 紙とえんぴつを用意してください。


2. 最近不安に思ったり、ストレスを感じたできごとを簡単に書き出してください。


3. それが起こったとき、自分はどんなことを考えていたか思い出してみてください。


4. それが今起こったと想像し、今どんな気分になるか考えてみましょう。


5. どのように考えることができれば少しでも気持ちがラクになりますか? 気持ちをラクにすることができる言葉を書き出してみましょう。


6. その言葉をゆっくり自分に言い聞かせるように10回つぶやいてみてください。


 

心をラクにするつぶやき例

  • いやなことがあったとき 「そんな日もあるさ」

  • うまくいかずがっかりしているとき 「次できればいいんだ」

  • 落ち込んでやる気がなくなったとき 「思い切って休憩しよう。それからまたがんばろう」

越川先生’s アドバイス
「きっと自分はそう思える」。そう考えながら声に出してつぶやくと、その言葉が力をもち気持ちを変えてくれます。
お子さま自身で言葉を見つけるのは難しいかもしれませんから、その場合は保護者の方が一緒に考え、気持ちを引き出してあげてください。好きな歌の歌詞や、絵本などから言葉を見つけてみるのもいいですね。
また、低学年のお子さまには、保護者の方が可愛いカードなどにその言葉を書いて、何かあったらお子さまがすぐに取り出して声に出して読めるように用意しておくのもオススメです。

プロフィール

©shimizuchieko

越川 房子(こしかわ・ふさこ)

新潟県出身。早稲田大学第一文学部心理学専修卒業、同大大学院文学研究科心理学専攻博士課程単位取得満期退学、早稲田大学文学部助手、専任講師、助教授を経て、現在、早稲田大学文学学術院教授。専門は臨床心理学・パーソナリティ心理学。訳書に『子どものストレス対処法-不安の強い子の治療マニュアル』(岩崎学術出版)『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)『うつのためのマインドフルネス実践』(星和書店)など。著書に『ココロが軽くなるエクササイズ』(東京書籍)など。

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