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小学生のプレゼンテーション術 〜“発表”の苦手意識をなくすには(3)

実践するとより伝わるものになる!プレゼン資料のまとめ方

――自信を持って発表できる資料のまとめ方のポイントを教えてください。

プレゼン=プレゼン資料づくりというイメージの方も多く、作品のように凝って作りがちだったりします。しかし、実際の資料は、プレゼンをわかりやすくするための補足であり、発表する時に自分自身をサポートしてくれるものという位置づけなんです。その点を踏まえて3つ紹介しますね。

  • 発表用の資料も「ななたこ」の順番で

話し方のポイントのところでも話したように、相手に行動してもらうプレゼンをするには、話す順番同様、資料の順番が重要です。資料を作るときは、話す順番と同じように「な・な・た・こ」の順で作ること。全体像を説明しながら、少しずつ詳細に入っていく流れで、いかにして聞き手の頭の中にクエスチョンマークを浮かべることなく、理解→共感→納得→行動につながるかを意識しましょう。これは、過度に資料を作りこんだり色づかいをきれいにしたりすることよりも大事なことです。

  • 文章は長すぎない、多すぎない

たとえばスライドなどで資料を作るとき、1ページの中にたくさんの情報があると、聞き手がどの情報に注目すればよいかわからなくなり、集中が削がれるので、「1ページ1メッセージ」で作りましょう。紙で発表資料を作るときも、文章が長すぎたり、多すぎたりすると、聞き手が話を聞くよりも文章を読みはじめてしまうので、耳と目からすっと入る量にするといいですね。

  • 「目で見る」からこその情報を落とし込もう

資料は、口頭の説明では足りない情報を補うもの。たとえば、建物のデザインを口頭で説明しようとすると時間がかかりますが、写真だと一発で伝わりますよね。足りない部分がどこかを明確にして、それは絵や写真、図、文字のどれで伝えるとよいのかを見極め、資料に入れるといいです。

ご家庭でのShow&Tellワーク時に、スケッチブックを使って紹介用の手書き資料を作ることから、まずは始めてみるのがおすすめです。

 

――なるほど、わかりました。家庭で「プレゼンテーションの練習」をするというとなんだか大げさですが、子どもが好きなものや考えたことについて発表しやすくなるように、大人がうまくサポートできるといいですね。

そうですね。伝える方法は言葉に限りません。絵を描いたり、工作をしたりするのが好きなお子さんもいると思います。「この絵は何を描いたもの?」「どういう意図で描いたもの?」などとたずねて、説明してもらう。これも自分の気持ちを伝える練習になります。インターネットで情報はいくらでも検索できる時代です。だからこそ、こういった発表を通して、自分だけの思いやアイデアを言葉にできることこそ、これからの子どもたちに必須のスキルです。

このように、日常の取り組みのなかで子どもたちが主体的に誰かに伝えたり、教えたりしたことに対し、ポジティブなフィードバックが返ってくるということが大事です。それによって、「伝えることで相手に貢献できるんだ」という原体験が積み重なっていくからです。

自分の「好き」「知りたい」がわかる。プレゼンテーションの効果

――最後に、プレゼンテーションを通じて伝わる楽しさを感じることは、子どもにとってどんな良い影響があるでしょうか?

 

「プレゼンテーションは相手に行動してもらうための技術」と話したとおり、人と繋がったり、夢が叶ったりするという良い影響がありますが、それ以上に子どもたちにとって大きいのは、子どもたち自身の内面が変化するということです。

誰かに何かを伝えるには、「何を伝えたいんだっけ?」「本当に伝えたいことは何だっけ?」などと、自分を掘り下げ、探究していくことが必須です。その作業を通じて、自分が好きなこと、興味があること、逆に好きではないことなどを認知していく。より深く、自分自身を知ることになります。わたしはこれを「自分自身とつながる経験」と表現しています。「自分は○○が好きだから、もっときわめたい」「もっと〇〇を勉強したい」となり、自分の将来の進路やふだんの勉強の取り組み方も変わってくるかもしれません。

生き方がこれまで以上に多様になってくる時代、プレゼンテーションを通じて「自分自身という唯一無二の存在を深く知る」ことは、子どもたちのこれからの糧になるはずです。

 

――なるほど、確かにそうですね。ありがとうございました。

プロフィール

鈴木 深雪(すずき・みゆき)

子どもが教える学校 主宰。2001年大日本印刷(株)に入社。商品企画として多様な業界数百社へのプレゼンを経験、教育事業にも従事。2016年独立、経営者の思考整理・プレゼン資料代行事業を立上げ。2020年、コロナ休校中の子ども達が自分の好きをプレゼンする「子どもが教える学校」をスタート。発表嫌いの克服プログラムは公立小でも採用、1年たらずで130人参加。NHK・めざましどようび・東京新聞に取り上げられる。プライベートは小3男子の母。

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