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子どもの長所の見つけ方、伸ばし方(1)

「自分の長所がわからない」という悩みを持つ人は、大人にも子どもにも少なくありません。とはいえ、受験や就職の面接では必ずといっていいほど質問される「長所」。「長所」とはどういったものなのでしょうか。また、保護者の方は、子どもの長所をどのようにして見つけ、伸ばしていくといいのでしょうか。塾運営や講演活動などを通じて多くの子どもたちを指導し、2021年5月には『子どもの長所を伸ばす5つの習慣』を上梓された石田勝紀さんにうかがいました。
(取材・文 浅田夕香)

目次

長所は、第三者が言葉にして伝えることで自覚できる

――そもそも長所とはどういうものなのでしょうか?

長所というのは、その人の「特徴」「らしさ」「個性」の中で、第三者から見て目立っていたり、特徴的だったりするものと言えます。

――「自分の長所がわからない」という悩みを持つ人は、大人にも子どもにも多いように思います。

「自分の長所がわからない」という人が多いのは、第三者から見て目立っている「その人らしさ」や「個性」は、本人にとって当たり前のことすぎて、自覚できないからなんです。たとえば、何かを器用に作って「すごいね!!」と言われたとしても、本人にとっては普通に作っているだけで、すごいことだとは思っていなかったりする。だから、長所は本人以外が「それってすごいことなんだよ!」と伝えて気づかせてあげないといけないわけです。

ところが、幼少期から長所を褒められる機会が少ないために、なかなか長所を自覚できない。なぜ長所を褒められる機会が少ないかというと、幼稚園や保育園など集団で過ごす時期に入ると、保護者がだんだんと自分の子どもと周りの子どもを比較するようになり、子どもの短所に意識を向けるようになってしまうからです。子どもの「らしさ」や「個性」のうち、短所は1/10で、長所が9/10だったとしても、保護者は9の長所には触れず、1の短所に触れてしまいがち。そうなると、子どもは1の短所が自分のすべてだと錯覚してしまって、短所ばかりが気になるようになってしまうんです。

「〇〇ちゃんはできるのに」「そんなことじゃダメでしょう」などといった「短所いじり」はせずに、まずは長所に目を向けるのが人材育成においては重要なんですが、それとは逆のことをやってしまう方が多いんですよね。

――なるほど。子どもの長所を見つけたいという気持ちはあるのですが、つい短所に目がいき、叱ってしまうときがあります。

短所は本人も自覚している場合が多く、第三者に指摘されると腹が立ちます。「早く片付けなさい!」「なんでこんな問題もわからないの?」といった言葉を伝えても、「そんなこと言われなくてもわかっているよ、うるさいな!」と子どもは思うだけで、効果はありません。一方で、長所は当たり前のことになっていて自覚していないので、言語化して伝えることが大切です。

もし、うまくできないことがあり、やり方がわかれば改善できる場合は、やり方を教えてあげましょう。多いのが、教えてあげるのではなく、「叱る・怒る」という行動をとっているケースです。子どもは大人が思っているよりずっと賢く、多くの感情を感じ取っていますが、まだボキャブラリーが少ないため、大人の言うことを理解できないことがあります。ですので、「怒られた」という感情の方を強く受け取ってしまい、内容の理解ができずに同じことを繰り返してしまいます。保護者が感情的になっているかどうかを自覚をするだけでも、行動や言動が変わってきますので、子どもに伝える前に今一度冷静になって振り返ってみるとよいでしょう。

――保護者の方は子どもの長所に目を向け、それを言葉にして子どもに伝えることが重要になってくるんですね。

そのとおりです。その子の良い部分や目立つ部分は、どんどん言葉にして本人に伝えてあげないと、長所だと理解することができません。言葉にして子どもに伝えると、「こんなの普通だけど、すごいんだ!」と子どもは感じます。その気持ちが、自己肯定感を高めていくんです。

自己肯定感とは、端的に言うと、「自分はイケてる人間だと感じる気持ち」です。長所という道具があっても、気持ちが前向きでないと使いこなせません。自己肯定感という前向きな気持ちと長所という道具があれば、年齢が上がって行動範囲が広くなり、保護者の手を離れて人生という流浪の旅に出たときに、やりたいことにばちっと出会えます。それは、長所をいかして生きていくことや、楽しく、幸せな人生を送ることにもつながります。だからこそ、長所を言語化し「それってすごいことなんだよ」と肯定の言葉を伝えることはすごく重要です。

「行動」や「考え方」に着目して長所を見つけよう

――では、実際にどのようにして子どもの長所を見つけるとよいのでしょうか?「子どもの長所がわからない」という保護者の方も多いように思います。

「子どもの自慢したい部分を3つ挙げるとすると?」と考えてみてください。「親バカになって自慢して」と言われたら、何を自慢しますか?

「よくわからない」「出てこない」という方は、「他人の子どもだったら」という意識で子どもを観察してください。子どものお友だちが遊びにきたら、「どんな子かな?」と観察しますよね。すると、よくないところも見えるでしょうけれど、いいところも見えてくると思います。「目の前の子は他人の子で、長期で預かってるんだ、この子の良さを伸ばすにはどうすればいいかな?」と観察すると、長所が見えてきますよ。

――観察する際にはどんなことに気をつけるとよいでしょうか?

「どういう行動をとるのか?」「どういう考え方をしているのか?」の2点を客観的に眺めましょう。保育園や幼稚園の先生は観察が上手で、一人ひとりの行動記録を毎日記入しています。先生じゃなくても、子どもが小さいときは、今日初めてできたことなどを記録していた人が多いのではないでしょうか。それと同じです。つぶさに観察すると、そこにいろんな良さや特性、すなわち、その子ならではの特徴が出てきます。ことさら「いいところ」に目を向けようとする必要はありません。

そうして観察していると、かなりの確率で保護者の方が「え!?」と思うような意外な部分に長所が隠れていることがわかります。たとえば、「反抗してきた」となると「え!?」と思うでしょう? でもそれは、「自己主張がしっかりできるようになってきた」という特徴じゃないですか。「ゲームに没頭しすぎ」「いつまでも本を読んでいる」も「好きなものにとことん没頭できる」という特徴です。そこに、その子の長所が隠されています。

⇒次ページに続く 短所は長所に変換できる

プロフィール

石田勝紀(いしだ・かつのり)

一般社団法人 教育デザインラボ 代表理事。1968年、横浜市生まれ。20歳で学習塾を起業。これまで3500人以上の生徒を直接指導する傍ら、講演会、セミナーなどを通じて5万人以上の子どもたちを指導してきた。35歳で都内私立中高一貫校の常務理事に就任し、経営、教育改革を実践。現在は「日本から勉強嫌いな子をひとり残らずなくしたい」という信念のもと、全国各地で講演会、カフェスタイル勉強会「Mama Cafe」、研修会を年間400回以上主催している。『東洋経済オンライン』での人気教育連載コラムは、累計1億万PVを記録。『子どもの長所を伸ばす5つの習慣』『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』(いずれも集英社)など著書多数。

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