特集
子どもの長所の見つけ方、伸ばし方(2)
2021.8.26
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短所は長所に変換できる
――子どもの特徴をとらえたあと、保護者の価値観で「これは長所(短所)」と判断してよいものでしょうか?
構いません。保護者の方自身が長所と思えばそれでOKです。あとはそれを言語化して子どもに伝えてください。「すごい!上手だね!」などと声をかけると子どもはうれしいものですよ。
――一見短所に見えることも、見方を変えると長所になり得ることもありますか?
すべてではないですが、長所にひっくり返せる短所はかなりあります。たとえば、「集中力がない」というのは、一見短所に見えますが、よくよく子どもを観察すると、ゲームは集中して取り組めて、勉強に対する集中力がないだけだったりする。それは、「好きなことに対する集中力がある」という長所になりえます。あるいは、周りの情報を全部拾ってしまい雑音の中だと集中できないということであれば、マルチタスク型で「気づく力がある」という長所があるということにもなります。
したがって、短所に見えるようなところも長所であるという認識を持つ必要があります。一度短所という認識を持ってしまうと、「あなたは集中力がないから」「ダラダラしないで、もっと集中しなさい」などと「短所いじり」をしてしまうでしょう? これらの言葉を発し続けることは、「あなたは集中力がない」と洗脳し続けることになります。そうではなく、「この子は気づく力を持っている子なんだ」ととらえ、「でも勉強だけは気が散っちゃうとよくないから、気が散らない環境をつくってあげよう」と環境を整えてあげればいいだけの話です。
――長所を漠然とした言葉でしか表現できないときはどうすればいいでしょうか?
抽象的な言葉は深掘りして具体化しましょう。たとえば、「やさしい」はよく出てくる長所の表現ですが、抽象的ですよね。その場合、「どういうときにそのやさしさは出てくるのか?」と考えるんです。すると、たとえば、「人の気持ちがよくわかる」など、より具体的な長所に気づきます。
子どもの「好き」を応援することが、長所に気づき、伸ばす第一歩
――長所はどのように伸ばしていくとよいでしょうか? 子どもが自分の長所をうまくいかし、将来、その長所をいかせる職業に出会えるために、保護者がサポートできることはあるでしょうか?
本人に長所という道具を手にしているという自覚と自己肯定感があれば、基本的には何もしなくていいです。年齢が上がって行動範囲や視野が広がっていくにつれて、取り組みたいことや、長所を伸ばす機会、なりたい職業などに勝手に出会っていきますから。
強いて挙げるなら、好きなことを応援してあげることと、出会いの場を広げてあげることは、保護者の方ができることだと思います。
前者の例になりますが、私の子どもの場合、小学校低学年のころは爬虫類が好きで、しょっちゅう、近所の友だちと連れ立って近くの山に採りに行っていたのですが、その餌や、関連する図鑑など「ほしい」と言われたものはすべて用意しました。今はもう中学生で、爬虫類には一切の興味がなくなりましたが、探究心には目を見張るものがあります。探究心や没頭する力は、対象が何に切り替わっても発揮できるもの。図鑑などは買わなくても図書館で借りてくることもできますから、できる範囲で環境を整えて、応援してあげられるといいと思います。
出会いの場を広げてあげることについては、博物館や美術館、さまざまな体験の機会など、お金を払って行くものに限らず、子どもが単独では行かない大人の世界、具体的には保護者の方が楽しんでいる姿を目にできる場に連れて行くのがおすすめです。大人の世界を垣間見ることで、本人にとってよい出会いがあったり、経験が広がったりしますから。今の時代だとインターネット上で出会うこともできるでしょう。子ども向けの動画などを配信している方の中には、参考になる話をしている方も多いです。
もちろん、子どもが行きたくない場合は、無理に連れ出さなくても大丈夫です。お友だちと遊ぶというのも大切な経験ですから。
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