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プログラミングが大学入試で課される時代へ ――小学生保護者が知っておきたい基礎知識(1)

2020年度から小学校で必修化された「プログラミング教育」。今年5月には、2025年の大学入学共通テストから、国立大学の受験生に対し、プログラミングなどを学ぶ教科である「情報」を加えた「6教科8科目」を原則として課すことを国立大学協会が検討中と報じられるなど、話題に事欠きません。ではなぜ、小学校からプログラミングを学習する必要があるのでしょうか。「入試」という切り口から、Z会のプログラミングシリーズ開発責任者が解説します。

ここ数年で学習指導要領の改訂とともに、小学校・中学校・高校の学習内容とその先にある入試の形が大きく変わっています。「お父さんやお母さんの子どものころは、こうやって勉強をして入試を突破したんだよ」という過去の経験があてはまらなくなりつつあるのです。では、どこがどう変わったのか。新しい学びであるプログラミングと入試とのかかわりを中心に、Z会に多く寄せられる質問にお答えしていきます。

解説:今里真(株式会社Z会 STEAM教育教材開発責任者)

目次

1)なぜ、大学入試でプログラミングが必要になるのか

Q.プログラミングが大学入試に必要というのは本当なのでしょうか。
A.本当です。2022年度から高校で「情報Ⅰ」が必修科目となることを受けて、2025年1月から、国立大学は文系・理系問わず受験教科にする方向で検討されています。

国立大学協会の入試委員会は、2025年1月実施の大学入学共通テスト(現在の中学3年生が受験生となる年)から、受験に必要な教科数を現在の5教科7科目から6教科8科目に変更する方向で検討を進めています。つまり、高校の教科「情報」を、受験教科として必須にするということです。この教科「情報」は、小学校でいうところの「プログラミング」にあたります。

保護者さまの世代では、入試の主要教科として小学生から国語・算数(数学)、理科、社会(地歴・公民)、そして中学生以降、外国語(英語)を学習された記憶はあっても、高校で「情報」を教科として学習した記憶のある方はまだ少ないかもしれません。それもそのはず、高校で「情報」が正式な教科となったのは2003年から。
2022年度に高校で新学習指導要領が実施となることにより、これまでもあった教科「情報」が、「情報Ⅰ」(プログラミングを含む)として必修科目に、より高度な内容を含む「情報Ⅱ」が選択科目となります。

ちなみに、現在も大学入学共通テストには「情報関係基礎」という科目がありますが、数学と同じ時間に実施されることや個別試験での入試科目にならないケースが多いことなどの理由により、共通テストの受験者約50万人中、数百人程度しか受験者がいないのが現状です。

Q.大学入試ではどんな内容が問われるのでしょうか。
A.高校の教科「情報」(情報Ⅰ)の中から出題されます。共通テストのサンプル問題が公開されています。

2021年3月24日に、独立行政法人大学入試センター(以下、大学入試センター)から、2025年1月実施の共通テスト「情報」のサンプル問題が公表されています。詳しくは、このサイトをご覧いただければわかるのですが、保護者さまの多くは「見たことがない」問題ばかりではないでしょうか。

〜サンプル問題「情報」~
大学入試センターWebサイトより

中身はプログラミングや情報処理・活用方法といった問題が主で、きちんと「体系的」に学習していれば、いずれも解くことができます。逆に言えば「体系的」に学習をしていなければ、まったく解くことができない問題とも言えます。

Q.大学入試であれば、高校に入ってから学べば十分なのではないでしょうか。
A.プログラミングは他教科と比べ、小学校段階で体系的に学ぶことが難しい状況です。そのため、ご家庭で何らかの補強をすることが理想的です。

たとえば、高校の「数学」の学習は、中学校までの数学(小学校では算数)の内容ができている前提で授業が進められます。これは「情報」も同様です。

これまでは子どもたちがプログラミングや情報処理・活用方法を学ぶのは中学校の技術・家庭科(技術分野の一部)が最初でした。

しかし、小学校は2020年、中学校は2021年の学習指導要領の改訂によって、高校の教科「情報」につながる形で学ぶ内容が整備され、かつ必修となりました。その結果、これからの高校の教科「情報」は、中学までに学んだことは習得できている前提で授業は進められます。そうしないと、高校の「数学」と同様に、教科書の内容をすべて終えることができず、教科「情報」の入試に間に合わなくなるためです。

また、小学校で必修化されたと言っても、プログラミングについて学ぶための教科書があるわけではなく、あくまで各教科の一部として「プログラミング的思考」を学ぶことが組み込まれている形であり、体系的に学ぶことが難しい状況であるといえます。小学生のうちにプログラミングの基礎にふれておくにこしたことはありません。

2)プログラミング的な能力を求める問題は中学入試にも

Q.プログラミングは中学入試の科目にはないので、必要ないのでは。
A.あまり知られていませんが、現在の国私立や公立中高一貫校の入試問題を解くために必須の「情報処理力」は、まさにプログラミングによって身につく力です。

中学入試の勉強というと、「たくさんの用語・解法パターンを暗記し、それらを入試当日、いかにアウトプットできるかが勝負」というイメージをお持ちの保護者さまも多いことでしょう。

確かに、以前はそのような問題がほとんどでした。ところが、2000年代に入って、暗記事項は減ったものの、問題文が長文化し、国語以外でも国語の読解力が試される形式が増えてきました(長文型入試)。さらにここ10年では、長文型に加えて資料・グラフを読み取る問題が多くなってきています(長文型・資料グラフ融合型入試)。つまり、保護者さまの世代での中学入試のイメージと比べると、現在の中学入試は大きく様変わりしているということです。

2021年1月に初めて実施された大学入学共通テストの問題が各社報道で取り上げられ、話題となったのにはさまざまな要因がありますが、やはり一番大きいのは、保護者世代が経験したことのない出題だったからではないでしょうか。
具体的には、問題文が長文であり、かつ資料やグラフをたくさん読み取って答えなければならない、長文型・資料グラフ融合型であったためでしょう。しかし、中学入試の世界では、すでにそのような問題が主流となっています。

長文型・資料グラフ融合型の入試問題で問われるのは、ひと言でいえば「情報処理力」です。プログラミングは、この「情報処理力」を高め、その手法を「体系的」かつ「実践的」に学ぶものです。ですから、「中学入試の科目にない」と切り捨ててしまわずに、小学生のできるだけ早い段階からプログラミングの学習を経験し、基礎的な考え方にふれておくことをおすすめします。

なお、中学入試ではその力を求める傾向がいち早く表れていますが、今後は高校・大学入試においても、身につけた知識を活用して課題に対する答えを導き出す力、つまり「情報処理力」の高さを求める傾向が一段と強まっていくでしょう。大学入試において、必須の入試教科となったのは、その大きな変化のうちの一つです。

⇒次ページに続く 3)小学生のうちにプログラミングを学ぶ意義

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