特集
「SDGs」を自分ごととして考える~一人ひとりが未来のためにできること~(2)
2021.9.23
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消費者・生活者として私たちができること
――では、SDGsの達成に向けて私たちが今からできることは何があるでしょうか?例として、17の目標の中で比較的身近な「目標12:つくる責任 つかう責任」に関連してできることをいくつか教えてください。
目標12で私たちが最も頑張らないといけないのは、食品ロスの削減です。なお、食品ロスとは、「本来食べられるにも関わらず廃棄された食品」のことで、製造過程で生じ、食用にできずに廃棄する「食品廃棄物」とは区別します。日本における1年間の食品ロスの量は約600万トン(2018年度)と、日本が1年間に途上国に支援している食料の総量よりも多いのが現状で、まったくといってよいほど数字が改善されていません。
したがって、「私たちは相当量の食べられる食品を捨てているんだ」という認識を持って、「うちは食品ロスがないかな?」とご家庭の買い物や調理を見直してほしいですし、「買いすぎない」「作りすぎない」「買ったことを忘れない」を実践していきたいですね。また、すべての食品に対して新鮮さを最優先するのではなく、すぐ食べるものは手前に陳列されている製造日が古いものから買う「てまえどり」もやっていきたいことです。
――すぐにでも始められそうですね。ほかにもありますか?
住んでいる自治体のゴミ処理やリサイクルの仕組みに関心を持つことも重要です。ゴミ処理やリサイクルの仕組みは自治体に依存し、隣の自治体と自分が住む自治体とで異なることもありますが、どちらがより適切かということに唯一解はないのが現状です。処理の仕組みに関心を持つことで、より良い処理方法を考える機会になり、行政の方針を定める投票行動につなげたり、日々の分別にいかすこともできるのではないかと思います。また、お子さんが社会科見学などで処理施設に行く機会があれば、その様子を聞くなどして保護者の方も一緒に知ることができるといいですね。もちろん、ゴミを出すときに逐一ラベルを見て分別するのは当然やるべきです。
企業の取り組みをSDGsの観点で選別しよう
また、企業の取り組みを厳しい目で選別することや、企業の動きに反応することも、「つかう責任」を担う私たちの重要な役割です。
――「企業の取り組みを選別する」というのはどういうことでしょうか?
「SDGsの観点でいいものは買う、悪いものは買わない」という消費行動をとれるとよいと思います。昨今、フェアトレード商品を購入することや、人や社会・環境に配慮した「エシカル消費」と呼ばれる消費行動が広がりつつありますが、これらの行動をとる動機は「おしゃれだから」にとどまりがちのように思います。そして、多くの人が安いものを買うことに慣れてしまっているために、人や社会・環境への配慮が足りない商品・サービスに対する批判もあまり出ていません。この点は欧米諸国などと日本で消費者の意識に差があります。
しかし、安いからといって人や社会・環境への配慮が足りない商品・サービスを選んでいると、企業は「売れているから、賛同を得られている」と判断してしまいます。消費者の行動が起点になって企業の行動が変わることはよくあるので、「SDGsの観点でいいものは少々高くても買う、悪いものは安くても買わない」という姿勢を持っておかないといけないと思います。
――なるほど。では、「企業の動きに反応する」ことについても教えてください。
目標12のターゲットの1つに、持続可能性に関する情報開示を企業に促すものがあります。それに従って、企業が発信する情報や商品ラベルに表示されている情報などを私たちが読んで家族で話題にしたり、いいと思ったことをSNSで発信したりすることです。そうやって企業に対して「ちゃんと見てるよ」と反応することが、企業がよりSDGsを意識した事業活動を行うことにつながります。私には小学生と中学生の子どもがいますが、SDGsについて書かれたものを見つけると、「これ、わかりやすく書いてあるね」などと家で話題にしています。
また、世界をより持続可能な方向に変えようとしている企業の行動その他に対して私たちが行動で返すことも大事です。たとえば、食品ロスを減らすために賞味期限が近い商品を値引きする、陳列棚の後方からではなく前方から商品をとるようPOPを設置する、といった取り組みをしている小売店があります。これらに対して私たちが賛同する行動をとれば、同じ方向を目ざす動きが広がっていくでしょう。
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