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子どもと見たい映画(1)

映画鑑賞というと、大人の趣味のように思われがちですが、子どもにこそ見てほしい作品、親子で見てほしい作品もたくさんあります。また、近年、配信サービスもどんどん充実。なかなか映画館に行く時間が作れないご家庭でも、気軽に楽しめるようになりました。今回のテーマは「子どもと見たい映画」。親子のための映画ポータルサイト「こども映画プラス」を運営する工藤雅子さんにお話をうかがいました。
ぜひ今回の特集を参考にして、親子の時間を楽しんでください!
(取材・文 松田慶子)

※本記事は、2017年1月に掲載したインタビュー記事をもとに再構成したものです。

目次

【インタビュー1】子どもの人生を豊かにする映画

  • 映画は世界に開かれた窓
  • 映画は気軽に楽しむのが一番!でも、ときには親子で映画館へ
  • 子どもの年齢に応じた作品の選び方

【インタビュー2】親子で一緒に映画鑑賞を

  • 学年別、テーマ別、子どもにすすめたい映画6選
  • 子どもと映画館をもっと楽しみたい!Q&A

 

子どもの人生を豊かにする映画

映画は世界に開かれた窓

――そもそも、映画のよさとはどのような点にあるのでしょうか。

まず、総合芸術であるという点があげられます。
映画は、文学、美術、音楽、芝居という、いくつもの要素で成り立っており、それぞれ一流の芸術家が担当しています。そんな芸術を、ほとんどの映画館で大人1900円、サービスデーなら1200円で2時間楽しむことができる。テレビや配信サービスで見るならもっと手軽です。あまり好きな言い回しではありませんが、コストパフォーマンスが高い芸術鑑賞といえるのではないでしょうか。
もうひとつは、多様性を知ることができるという点です。日本では欧米の映画以外にも、イランやインド、中国ほか、世界各国の映画を見ることができます。映画は情報量が多く、その国の風景や文化、生活習慣や暮らしぶり、考え方も伝えてくれます。日本にいながらにして、それらに触れることができるのです。
たとえば韓国の人が目上の人と握手をするとき、日本とはちょっと違う仕草をするのをご存じでしょうか。左手を右手の手首に添えるのです。こうした情報は、日常生活の中では学ぼうとしない限り知り得ませんが、韓国映画を何本か見ることで、おのずと気づきます。
また、ひとつのできごとについてさまざまな視点で見ることもできます。たとえば第二次世界大戦をアメリカ側から描いた映画もあれば中国側から描いた映画もある。同じ大戦でありつつも、見え方がまったく違うことに気づくでしょう。複眼的な物の見方も身につけられるのです。
黒澤明監督の言葉に「映画とは世界に開かれた窓だ」というものがあります。映画を通し、一流の芸術に触れ、多様な国や文化があることを知り、物事の多面性を理解することができる。映画は人生を豊かで深みのあるものにしてくれるといえるのではないでしょうか。

映画は気軽に楽しむのが一番!でも、ときには親子で映画館へ

――映画は配信サービスで見てもいいものでしょうか。

もちろんですよ。映画は大スクリーンで見ることを想定して制作されているので、映画館のほうがいいのは確かです。でも、なかなか映画館に行く機会がつくれない場合もあるかと思います。「映画を見ること」自体で学べることはたくさんあるので、そんなときはテレビや配信サービス等どんどん活用してはいかがでしょうか。ただ、その場合、ついダラダラと見てしまいがちなので、何時間まで、何作品までなど親子でルールを決めておくとよいですね。「映画は映画館で見るもの」と思い込まずに、いろいろな作品を見てみてください。

――映画館で映画を見るメリットはどんなところにあるのでしょうか?

得られる情報量が格段に多いことです。テレビ画面は小さいので、スクリーンの中心に集中してしまい、背景に目が行きにくい傾向にあります。それに対して大スクリーンだと、背景からの情報も自然に目に入る。映画の世界に浸りやすいわけです。その分、ドキドキしたりホッとしたりと、さまざまな感情を体験できる。それが子どもの成長の糧になります。

映画館に行くこと自体、いい経験なのではないでしょうか。親子で一緒に「お出かけ」をする体験や楽しさを共有する時間が、子どもにとって大切な思い出になるし、よい親子関係を築くことにもつながると思います。

最近は、曜日や期間を決めて、館内を明るくしたり、音のボリュームを下げたり、短い映画を上映したりと、小さい子どもの映画館デビューをスムーズにする取り組みがあちこちの映画館で行われています。そういう機会を利用するのもいいですね。

子どもの年齢に応じた作品の選び方

――子どもの年齢に応じた作品の選び方のポイントを教えてください。

小学生になると集中力も理解力も上がるので、見られる映画はぐんと増えます。
ただ低学年のうちは、多様性を伝えることを主眼としたドキュメンタリー映画などは、まだ難しいかもしれません。この時期はまず、「映画は楽しいもの」と思ってほしいと思います。子ども向けのアニメ作品から見せ始めるのもいいと思いますよ。
何本も見るうちに、映画の見方も上手になるもの。学年が上がって映画が生活の一部になったら、ほかの国の映画や社会的メッセージを込めた映画なども見せるようにするといいのではないでしょうか。

――とはいえ、暴力や性の描写などを含んだ映画を見せるのには抵抗があります。

そんなとき、映画倫理委員会のマークが目安になります。「G」マークの映画は、そういった描写がなく、だれでも見られるもの。「PG12」マークの映画は、小学生が見るときには大人の助言指導が必要。親が同伴のうえ、その場での対応が求められる作品です。また、子ども向けの映画を数多く紹介している「こども映画プラス」では、幼児、小学校低学年、小学校高学年、中学生と、おすすめ映画を年齢に合わせて4段階で分けていますので、参考にしてみてください。それでも心配なときは、保護者の方が先に見ておくと安心です。
ただ、たまには少し背伸びした映画を見ることもいい経験になるのではないかとわたしは思います。未知の世界を覗き、疑似体験ができるのも映画の魅力。小学生になると、現実とフィクションの違いがわかるようになります。現実の世界が安心できる場所なら、映画の中で多少怖い思いや悲しい思いをするのも、子どもの世界を広げる経験の1つだと思いますよ。

⇒次ページに続く 親子で一緒に映画鑑賞を

 

プロフィール

工藤雅子 (くどう・まさこ)

1959年生まれ。映画関連事業会社に勤務し、退職後(株)チャイルド・フィルムを設立。子ども向けの映画の紹介に特化した日本初のポータルサイト「こども映画プラス」を開設。同サイトでは、年齢やキーワードに応じた、子どもが楽しめる映画を簡単に検索できる。また上映会や、映画鑑賞とワークショップを組み合わせたイベントも多数開催。共著に『「こどもと映画」を考える 13才までに見せたい名作映画50ガイド』(キネマ旬報社)、『こども映画教室のすすめ』(春秋社)がある。

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