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子どもの失敗とどう向き合う?(2)

 

「できるだけ失敗を回避してあげたい」という気持ちとどう向き合うか

――保護者の方には、「自分の子どもにはなるべく失敗してほしくない」という気持ちがあるのも正直なところだと思います。だからといって、子どもが失敗を回避できるように先回りするといったことは、やめたほうがいいものでしょうか?

たとえば、命を落とす、大ケガをする、誰かを傷つけるといった、本人が引き受けきれない失敗は、回避させてあげなければいけません。しかし、本人が引き受けられて、まだ体験していない失敗はさせてあげるべきです。

というのも、人は、新しいことに挑戦しなければ成長しないからです。とくに、それまで難しくてできていなかったことをやろうとしたときに、大きく伸びていきます。たとえば、自転車に乗る練習は、転んでしまいそうになったときに一番バランス感覚が磨かれます。友だちとも、ケンカをすることで距離感の保ち方や、相手への踏み込み方を理解できる場合がありますよね?

だから、本人が引き受けられる範囲の失敗は一つの経験ととらえて、何が起こったか、何を感じたか、このあと何が起きそうかなどについて、本人が見えていないことも見せてあげながら、考えることを促しましょう。

――小学生にもなると、先回りするのではなく、見守るというフェーズに進まないといけないんですね。

そうです。「失敗してはいけない」と保護者が思っていると、子どもにもその価値観が植えつけられて、どんどん何もできなくなります。
「失敗していい」「できてもできなくてもいい」「できたならすばらしい」という余裕が、子どもを伸ばしていくと思います。

――ただ、時間的・精神的な余裕がない保護者の方も多い中、常に余裕をもって構えるのも難しいことのように思います。どのような心持ちでいるとよいものでしょうか? 

大人も完璧ではないので、子どもが失敗したら、最初は「えー?」という顔をしてしまうでしょうね。そういうときは、子どもと一緒に現実を見て、気持ちを吐き出していきましょう。お子さんと一緒にやれば、互いにすっきりして、「さあ、次にいこう」となれまるでしょう。
保護者の皆さんは、「良い保護者でなければいけない」と思い過ぎなくていいんです。子どもと共に育っていくのでいいんですよ。

【岸先生より】中学受験をするご家庭へのアドバイス

受験をされる子ども・保護者の方には、前提として、第一志望校に合格することだけがゴールではないという認識はもっていただきたいと思います。受からなくても、いくらでも別の未来があるんだ、という価値観がお子さんの中にはぐくまれるように、あらかじめ伝えておくことが大切です。

私は、目標をかかげるときは、自分を引っ張ってくれる高い目標と、身近な目標の2つを設定することをおすすめしています。あるいはその中間にあたる目標を立ててもいいでしょう。受験の場合でしたら、第一志望校はチャレンジ校としてA校、第二志望校として校風が気に入っているB校、滑り止めてとしてC校。そして時系列でも、次のテストで〇点を取る、というようにいくつかの到達目標を立てるといいですね。 目標を二重、三重に持っていれば、大きな目標を達成したらよし、できなかったら失敗、でも最低ここはクリアできたからグッドだね、となります。少しずつ大きな目標に近づき、もっと上に行きたいという気持ちがあれば、子どもは伸び続けます。

受験は対策に数年を費やして臨むものですから、第一志望校に合格できなかったときは、本人のショックも大きいものとなるでしょう。その場合は、落ちたという現実に目を向けて、「悲しい」「悔しい」「もうこの気持ちを味わいたくない」など、思っていることを本人が言葉にできるようにして、保護者が受け止めるようにしましょう。そして、大きな目標(第一志望校合格)は達成できなかったけれど、ほかに達成できたことはたくさんあると伝えられるといいでしょう。受験の場合は、志望校に落ちた=失敗と思われがちですが、受験を通して、子どもはたくさんの経験をしてきたはずです。そういった経験が、子どもの成長につながるのです。

⇒次ページに続く 場面別 子どもの「失敗」に対する声のかけ方・応じ方

プロフィール

岸 英光(きし・ひでみつ)

コミュニケーショントレーニングネットワーク®統括責任者・主席講師、岸事務所代表 エグゼクティブコーチ。大学卒業後、企業勤務と並行して最新の各種コミュニケーション・能力開発などのトレーニングに参加。自らコーチされることを通して日本人に即したプログラムをオリジナルで構築し、人間関係や能力開発に関する分野でセミナー・講演・研修・執筆活動を展開している。『ほめない子育てで子どもは伸びる』、『失敗する子は伸びる』(いずれも小学館)など著書多数。

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