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子どもの失敗とどう向き合う?(3)

 

場面別 子どもの「失敗」に対する声のかけ方・応じ方

保護者から見て子どもが失敗したと思うとき、保護者はどのようなことに気をつけて子どもに声かけをするといいのでしょうか?場面別に岸さんにアドバイスをいただきました。

1.忘れ物をしたとき

まずは、起こった現実に目を向け、どのような影響があったのかを考えられるような声かけをしましょう。「忘れ物をして何が起こった?(どんな影響があった?)」と。すると、「友だちに借りないといけなくなった」「メモできなくて困った」「みんなにいろいろ言われた」など、本人の前で起こった現実を話してくれると思います。保護者の方から見て、本人には見えていないことがあるようなら、「貸してくれた友だちは、自分が使いたいときに使えなくて不便だと思っていたかもしれないね」など、少しだけ言い添えてもいいかもしれません。

こうして、本人が見えている範囲のことを振り返るとともに、見えていないところも見せてあげた結果、「これはまずいな」「忘れ物をするのは嫌だな」などと本人が思えば、気をつけるようになるでしょう。他方で、本人が「直さなきゃ」「気をつけなきゃ」と思えるだけの現実が見えない場合、まだ直りません。成長するにつれて現実の中にだんだんと影響が見えてくるようになるとは思います。

 

2.同じミスを繰り返すとき

何らかのミスや失敗など保護者が良くないと思うことを繰り返す場合も、1と対処法は同じで、「何が起こった(起こる)?」と影響を本人と一緒に見つめることから始める必要があります。

よく「なぜ遅刻したの?」「(テストで)なぜここをまちがえたの?」「次はどうすればいいと思う?」などと問い詰める人がいますが、「なぜ?」は、受け取る側の心理的には否定語です。というのは、幼いころから叱られるときや否定されるときに「なぜ?」と言われてきて、「なぜ?」=ダメ出しだと感じるようになってしまっているからです。結果、出てくるのは「眠かったから」「勉強をしようと思ったけど時間がなかった」などの言い訳で、意識は変わりません。「次はどうする?」という問いかけも、やらされ感があり自主的な行動にはつながりません。

「なぜ?」「どうする?」ではなく、「どんな影響があるか?」を考えることが、本人の意識を変えます。その結果、「時間は守った方がいいんだな」となれば時間どおりに行動するようになりますし、「勉強したらこんなよいことがある」となれば自然と勉強をするようになるでしょう。本人が気づくことと、大人が言語化して本人の気づきを助けることが大事です。

子どもが失敗して悔しさや悲しさ、つらさを味わうことは、その気持ちを乗り越えて前に進むために大切なことです。もし、テストや発表会など大事な場面で子どもが失敗してネガティブな言葉を発したら、保護者はその言葉を受け取るようにしましょう。そして、子ども自身を否定する声かけや評価はせず、「どこがうまくいかなかったの?」「どこかできたの?」と事実を見る声かけをしてください。このとき、「できたこと」にも注目し、「何をしたからうまくいったのか」を探るといいでしょう。本人が事実と向き合い、感情を味わうことができれば、「さあ、次!」と次の行動ができるようになります。保護者は子ども自身が解決策を見つけ、自分で立ち上がるようにサポートするという姿勢でいましょう。

――ありがとうございました。

プロフィール

岸 英光(きし・ひでみつ)

コミュニケーショントレーニングネットワーク®統括責任者・主席講師、岸事務所代表 エグゼクティブコーチ。大学卒業後、企業勤務と並行して最新の各種コミュニケーション・能力開発などのトレーニングに参加。自らコーチされることを通して日本人に即したプログラムをオリジナルで構築し、人間関係や能力開発に関する分野でセミナー・講演・研修・執筆活動を展開している。『ほめない子育てで子どもは伸びる』、『失敗する子は伸びる』(いずれも小学館)など著書多数。

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