特集

AI時代に必要となる力とは
―期待が寄せられる「STEAM教育」(2)

意識的に「実践」の機会をつくり、たくさんの経験を

――これまでお話しいただいた今後必要となる力を身につけるために、家庭ではどんな意
識が大切になるとお考えでしょうか?

たとえば、お子さんがプログラミングに興味があるならば、実際にプログラムを組んでロボットを動かすことやゲームをつくってみること、外国語に興味があるなら外国の文化に触れてみることなど、意識的に「実践」の機会をつくることはとても大切だと考えています。学校の限られた授業時間数のなかでやれることには限界がありますから、ご家庭での力添えも必要になってくるでしょう。わたしは、AI 時代に強みとなる能力の一つは「洞察力」だと考えています。目に見える部分を観察してわかることだけでなく、そこから推測される物事を本質まで直感的に見抜いて判断する能力です。直感というものは、過去に積み重ねた多くの経験やそれまでに学んだ知識に裏打ちされるので、すぐに身につくものではなく、学べば学ぶほど伸ばすことができます。どんな分野であっても、ぜひ「実践」を意識して、お子さんにたくさん経験を積ませてあげてほしいと思います。

また、ご家庭での会話も重要だと考えています。ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんのお父様が以前インタビューのなかで「娘の翼を折らないようにしてきた」ということをおっしゃっていましたが、お子さんの羽を折らないといいますか、偏見でこれができる、できないといった先入観をもたせないで、可能性がもっと広がるような会話をされたらいいのではないかと思います。たとえば英語についてお話しされるのでしたら、「英語を話せるようになると、将来こんな楽しいことがあるんだよ」といった話をされるのもいいですね。

大切なのは挑戦や失敗を恐れない姿勢

――最後に、小学生の保護者の皆さんへ伝えたいことがありましたら、メッセージをお願いします。

これからの社会や世の中のことを考えたとき、不安を感じている保護者の方もいらっしゃると思います。しかし、不安にとらわれて視野を狭め、守りに入ってしまったら、お子さんの可能性を小さく押しこめてしまいます。お子さんが生きていく社会は、日本という小さな枠組みのなかにあるのではなく、地球規模の大きな国際社会です。

そのような大きな共同体のなかで何ができるかという目線で、お子さんの素養を磨いていかれることで希望が生まれます。また、これからは新しいことに挑戦し続けていかなければならない社会になっていきます。これは、非常にタフで大変なことです。挑戦には失敗がつきものですが、失敗を恐れているようでは前には進めません。小さなころから、ぜひたくさんチャレンジして、失敗して、乗り越える経験をされたら、大きな強みになるでしょう。失敗に対しても寛容であっていただけたらと思います。新しいことにどんどん前向きに挑戦できる強いお子さんに育っていかれたら、それが一番ではないかなと思います。

――ありがとうございました。

プロフィール

伊藤 恵理(いとう・えり)

東京大学大学院工学系研究科准教授。「空はひとつ」をモットーに、世界の空を駆けながら、航空管制および航空交通管理の研究に従事する科学者・エンジニア。東京大学大学院博士課程修了(航空宇宙工学専攻)。ユーロコントロール実験研究所(フランス)、オランダ航空宇宙研究所、NASA エイムズ研究所、海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所、南洋理工大学などでの研究職を経て、現職に至る。国際航空科学会議(ICAS)より McCarthyAward、John J.Green Award 受賞。著書に『空の旅を科学する 人工知能が拓く!?21 世紀の航空管制』(河出書房新社)、『みんなでつくる AI 時代 これからの教養としてのSTEAM』(CCC メディアハウス)がある。アカデミアや企業等での講演も多数行っている。

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