特集

子どもを伸ばす住まいづくり ~住み方を考えることは、子どもの育ちを考えること~(3)

ちょっとした心がけでできる、より快適な住環境のつくり方

子どもが部屋にこもりがちにならない工夫は?

Q

「子どもが学校でいじめられていることに気づかなかった」といった保護者の悩みを耳にします。「子どもが部屋にこもりがちだったから……」という声も。子どものSOSを察知しやすい工夫はあるでしょうか。

A

帰宅直後の表情を見られるような工夫が大事

子どもの様子を知るには、玄関がカギになるとわたしは考えています。どんな表情で帰ってくるかによって、子どもの様子がだいたいわかるものだからです。「お帰りなさい」と玄関まで出迎えてあげられるといいのですが、「今、手が離せない」ということもあるし、高学年になると、親の声がけをうるさがる場合もあります。
ですから、リビングやキッチンから、さりげなく子どもの顔が見られるような工夫が有効です。具体的には、リビングから廊下に通じるドアを常に開けておくとか、ガラスを使ったものにするとか。親の前を通過しないと自室に行けないような生活動線をつくるのもいいでしょう。それが無理なら、子どもの居場所「ターミナル」をリビングにもってくるという方法もあります。

子どもとの“ほどよい距離”どうしたらとれる?

Q

小学生になると、親子間の“ほどよい距離が大切”といわれます。とはいえ狭い日本の住宅では、リビングで顔をつきあわせるか、子どもが自室にこもるか……。どうしたら“ほどよい距離”をとれるのでしょうか。

A
  • こども部屋があるなら、気配を感じる工夫を

    ほどよい距離とは、「相手の気配を感じ、何となくつながっているという安心感を得つつも、互いに干渉せず好きなことができる」という関係だとわたしは考えています。
    子ども部屋があっても、リビングやキッチンで勉強をしたがる子どもが多くいます。それは、この距離がその子どもにとっても快適だから。したがって、リビングという同じ空間にいても、親御さんは子どもにあまりかまわず自分のことをする。そして子どもが自室にいるときは、廊下や子ども部屋のドアを開け放ち、お互いの気配を感じられるようにするといいのではないでしょうか。

子ども部屋がない場合

A
  • 子ども部屋がないなら、「ターミナル」をもたせて

    子ども部屋をもっていない子には、自分の居場所「ターミナル」をつくってあげることが第一です。それがないと、「自分は家族の一員」という意識が育ちにくいと考えられます。自由に使える机や棚を用意してあげるといいでしょう。
    その場所を決める際にこそ、ほどよい距離をとる工夫を。たとえば台所から見えるリビングの一角に机を置く、お母さんの作業スペースから横目で見えるダイニングに子どもの遊び場をつくるなど。お互いに自分のことをしながらも、相手が何をしているのか、何となくわかる位置関係が理想です。

子どもとの会話を自然に引き出す空間とは

Q

高学年をもつ保護者から、子どもとの会話の機会がもちづらいという声が聞かれます。話を振っても返ってくるのは「別に……」だけ。会話がはずむ住空間とは?

A
  • 「背中あわせ」くらいが話しやすい関係

    ただ同じ空間にいれば、コミュニケーションできるというわけではありません。とくに思春期にさしかかった子どもは、面と向かえば向かうほど、会話を煙たがる傾向にあります。
    やはりこれも“ほどよい距離”をとることが大事。子どもと親御さんが、たまたま近くにいて、それぞれが別々のことをしているという偶発性を装えば、あまりまじめな空気にならず、「どうなのよ……」という自然な会話になると考えられます。
    たとえばお母さんがキッチンで料理をしながら、子どもは背中あわせでダイニングテーブルに着き勉強する、という位置関係をつくるよう、勉強スペースやターミナルを工夫しましょう。

子ども自身に、片付けや明日の準備をさせるには?

Q

せっかく用意した子ども部屋が、散らかり放題。明日の学校の準備をさせても、「あれがない、これがない」ばかりで、結局親の仕事になる……。子どもが自分でモノの管理をできるようになる工夫はあるのでしょうか。

A
  • 段階別に物を置く広いスペースやボックスは有効

    片づけられない子どもに、「片づけなさい」といっても、どうしようもありません。片づけられない理由は、どこかに必ずあるはずです。それを見つけ、改善することが大切。原因の一つが、「やりかけのもの」の行き場がないことだと思います。かきかけの絵、解いている最中のドリル。これが重なって、散らかってしまうことが多いのではないでしょうか。わたしは、中途段階のものを置くスペースを用意しています。手をつけていないもの、完全にしまえるものはしまい、その中途段階のものを、「学校関係」「遊び関係」「Z会関係」などとまとめ、山積みしておくスペースや、ただ入れておくボックスなどを設ける。こうすると機能的に物の管理がしやすくなると思いますよ。

プロフィール

渡邊 朗子(わたなべ・あきこ)

東洋大学情報連携学部教授。株式会社市川レジデンス取締役を兼任。博士(学術)。
日本女子大学家政学部住居学科卒業後、1993年、コロンビア大学大学院建築都市計画学科修了、99年、日本女子大学大学院人間生活学研究科博士課程修了。慶應義塾大学環境情報学部助手、豪シドニー大学客員講師などを経て現職。子どもの成長における住空間の重要性にいち早く着目し、住まいづくりに新たな視点を提唱した一人。現在は子どもの意欲や集中力を促す環境づくりについて研究を広げている。『頭のよい子が育つ家』(四十万靖と共著 日経BP社)他、著書多数。

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