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絵本作家 宮西達也さん(2)

子育ては、よその子を見るのではなく、わが子を見る

――宮西さんには6人のお子さまがいらっしゃいますが、お子さまへの接し方で大事にされていたことはありますか?

子ども自身をよく見るようにしていましたね。「隣の○○ちゃんがピアノを習い始めたからうちもそろそろかな」とか、「隣の△△ちゃんがスマホを買ったし、うちも持ってないといじめにあうんじゃないか」などと、周りを基準に考えるのではなく、わが子を見る。子どもが皆同じわけがないので、本人の「やりたい」を大事にしつつ、向き・不向きやタイミングは親が見極めてあげないと、と思って接していました。

 

――保護者の方がお子さまの様子や向き・不向きを見極めるのに大事なことはなんでしょうか?

やっぱり、コミュニケーションをとることですよね。よく、「うちの子はしゃべってくれなくて……」という人がいるけれど、いいんですよ、親がどんどんしゃべれば。

うちだって、子どもたちが思春期のころはしゃべってくれませんでした。でも、帰ってきたら「おかえり。今日何があった?」と声をかけて、「うるせー」と言われても、「うるさいじゃなくて、何があった?」ってしゃべりかけ続けていました。コミュニケーションをとることを、決してあきらめない。すると、「こいつ今日、ケンカしてきたな」とか「テストの点が悪かったな」といったことが必然的に見えてきます。

あと、同じ土俵に立って「なんだよ!」とケンカしないようにしていました。もちろん、カッとすることもありますよ。でも、自分だって思春期のころは親に対してつっけんどんで、自分の状況にわけがわからなくなっていたんだから、嫁さんと手分けして、嫁さんがカッとなったときはぼくが「まあ、いいから。いいから」と収めて、ぼくがカッとなったときは嫁さんに収めてもらって同じ土俵に立たないようにしていました。

――保護者の方のなかには、忙しくてお子さんとコミュニケーションをとる時間を十分にとれず、悩んでいらっしゃる方もいらっしゃいます。アドバイスをいただけますか?

ぼくは、大事なのは時間の長さじゃないと思うんですよ。短い時間でも、どれだけその子のことを見て、どれだけその子のことを思っているか。

これは親父から学びました。親父は旅行関係の仕事をしていて、土日がまったく休みじゃなかった。だからぼくは、土日にお父さんと遊園地に行ったり、遊んだりできる人たちが本当にうらやましかった。だけど、親父はなんと、平日の昼間に会社から帰ってきて、スーツのまま、一生懸命キャッチボールをやってくれたんです。泥まみれになって。ほかにも、ちょっとだけ帰ってきて手品をしてくれたこともありました。

そのことにぼくは感動して、すごく愛されているのを感じたんです。だから、短い時間でも、その時間を大事にしようと一生懸命子どもに向き合えば、子どもにも伝わります。

夢への情熱で、これからも動いていく

TATSU’S GALLERY(静岡県三島市)

――最初の作品が出版されてから36年、これだけ長い期間、精力的に作品を出し続ける原動力はどこにあるのでしょうか?

やっぱり、夢ですね。「ずっと絵を描いていきたい」というところから「絵で食べていきたい」になり、絵本を描くことがライフワークになって、そのあとも、小さな夢がいっぱいあって。その夢への情熱で動いてるかな。

2017年に静岡県三島市にギャラリーを開いたのも、夢だったんですよ。生まれ育った清水町と、隣接する三島市、沼津市に恩返しをしたくて。

将来、ここに近所の子どもたちを集めて読み聞かせのおじちゃんをやるのが夢ですね。そして、子どもたちが「絵本っておもしろいな」とか、「こういう職業もあるんだな」などと思ってくれれば。なかには絵本作家になりたい、イラストレーターになりたい、映画を作ってみたい、という子もいるかもしれないし。

――ほかにも、挑戦してみたいことはありますか? 

数年後の公開を目指して、映画をまたやります。3Dで『おまえうまそうだな』を作ります。これまで2回映画化されて、2019年には日中韓の合作で3作目が公開されますが、映画って、ものすごい人数で作るから、脚本家、監督、声優と渡っていくうちに原作のニュアンスが少しずつ変わってしまうことがあって。なので、今度はすべてぼくが脚本で、監督と2人でやりたいという要望を出しました。これから少しずつ動き始めます。

もう一つは、夜、このギャラリーで大人向けの絵本教室をやりたい。で、この地域から絵本作家が生まれればいいなと。僕も「絵を描きたい」と思った少年で、実際に夢を実現することができました。このエリアの自然の豊かさに感動して、感性を磨いて、その感性で作品を作ればいいんだよ、ということを伝えたいですね。

――最後に、小学生のお子さんに向けて、メッセージをお願いします。

講演会でもよく言うけど、一生懸命に生きてほしいですね。勉強も、宿題も、掃除も、遊びも、自分のできる範囲で一生懸命する。あれもダラダラ、これもダラダラじゃなく。そうやって一生懸命やると、すごく気持ちいいんですよね。人生1回こっきりなんだから、一生懸命やらないと損です。

それに、一生懸命やっていると、さらにがんばりたいことが出てきたり、夢が見えてきたりします。ぜひ夢をもってほしいですね。

 

――ありがとうございました。

プロフィール

絵本作家

宮西 達也 さん (Tatsuya Miyanishi)

1956年、静岡県生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒業。グラフィックデザイナーを経て絵本作家に。作品に、『きょうはなんてうんがいいんだろう』(鈴木出版、講談社出版文化賞絵本賞)、『ふしぎなキャンディーやさん』(金の星社、日本絵本賞読者賞)、「おとうさんはウルトラマン」シリーズなど多数。『おまえうまそうだな』をはじめとする「ティラノサウルス」シリーズ(ポプラ社)は2018年で15周年を迎え、2度にわたり映画化された。4男2女の父。

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