ZOOM UP!

歴史プロデューサー「六龍堂」主宰 早川知佐さん(1)

大ヒットとなった2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』。この放映の実現に尽力したのが、信州上田観光大使を務める早川知佐さんです。
本業は、歴史プロデューサー。イベントや講演、商品開発のアドバイザーなどを通し、歴史ファンのすそ野を広げています。いったいなぜ? そこに込められた思いとは? 早川さんご自身の歴史と活動内容、そしてエネルギー源をうかがいました。
(取材・文=松田慶子)

わたしの原動力

「歴史に興味を持ちました」「楽しかったです」の言葉が、
何よりのエネルギー源です

ファンの目線で歴史のおもしろさを伝える仕事

――歴史プロデューサーとして、どのような活動をしていますか?

歴史のおもしろさを多くの人に伝える活動をしています。歴史と聞くと、受験勉強の暗記地獄を思い出す人や、年配の男性が好むジャンルだと思い込んでいる人が多いもの。でもそうではなく、若い人も女性も楽しむことができる分野です。それを知ってもらうために、イベントの開催や講演、商品やアプリ、メニュー開発のアドバイザーなど、いろいろなことをしています。

 

 

――メニューの開発とは?

戦国武将にちなんだ飲食物を考案したり、武将の名前がついた名産品のアレンジメニューを考えイベントで提供したりしています。たとえば、織田信長公って、ドラマなどでは酒豪のように描かれていますが、実は下戸なんですよ。甘党で金平糖を好んでいたといわれています。だから、信長の激しい気性をイメージし、赤くて度数が高そうだけれど、実はノンアルコールだというカクテルをつくったこともあります。

 

――え、信長はお酒を飲めなかったんですか!?

そう、意外でしょう。イベントで、そんな説明書きを添えたカクテルを出すと、教科書で読むときよりも歴史上の人物を身近に感じてもらえる。そういうことをきっかけに歴史に興味をもってほしいというねらいです。

また、お土産品開発のアドバイスをさせていただくこともあります。わたしは歴史学者ではなく、単なる歴史ファンなので、ファンの目線から、どんなものなら歴史好きに受け入れられるか提案できるんです。そのほか、地方都市に招かれて、その土地の歴史をわかりやすく話すというご依頼を受けることもあります。そんなときは、どのように話すと歴史に詳しくない人にも“おもしろい”と思ってもらえるか、考えながら話しています。

歴史専門ショップの初代店長に就任するも……

――どのような経緯で、歴史プロデューサーになったのでしょうか?

もともと歴史は好きだったのですが、仕事にしようという気はありませんでした。ところが就職した古書店グループで、歴史の専門書店を設立するプロジェクトが立ち上がったんです。新書の販売や、カフェやイベントスペースの併設もするという社内初の試みで、その立ち上げの担当に指名されました。当時わたしは20代後半で、若い女性の歴史好きは珍しいころでした。そこで、「歴史の専門店を若い女性がつくると、インパクトがあってウケるのでは」と、会社が考えたのです。

2006年、東京都千代田区に「歴史時代書房 時代屋」をオープンし、初の店長に就任。そのまま半年間店長を務め、退職しました。

 

――どうして退職されたのですか?

仕事が大変で(笑)。わたしは古書の販売に関しては「できる」という自負がありました。でも飲食やイベントという初めての分野に直面し、何もできない自分に気づいた。井の中の蛙だったんですね。知らないことがいっぱいある。それで、違う世界を見たいと考えたわけです。

退職後は、もっといろいろな人と知り合いたいと考え、結婚式場のレストランでサービススタッフのアルバイトを始めました。その一方で、時代屋を通じて知り合った歴史家や歴史ファンの方々と一緒に、歴史で盛り上がる企画を考えたり、アドバイスをしたりするようになったんです。また、歴史好き同士がつながるお手伝いをしたいと考え、イベントの開催を始めました。

歴史ファン同士をつなぎ、やがて大河ドラマ実現へ

――どんなイベントだったのでしょう?

簡単に言うと、歴史好きな女性同士が集まって歴史の話をしようというものです。ひと昔前は、歴史好きな女性は変わり者扱いされ(笑)、仲間をみつけることが難しかった。幸いわたしは時代屋のおかげで仲間ができたので、今度はつなげる側になりたいと思いました。

 

――イベントや、先ほどおっしゃっていたお土産品などのアドバイスは、お仕事として?

いえ、みんな予算がないのでお金はもらいませんでした。生活と活動費はレストランのアルバイト代でまかない、イベントの仕込みなどは夜間や休日に行いました。「身を削る」という表現がぴったりの毎日でした(笑)。

ただ、活動の幅が徐々に増え、2008年に信州上田観光大使に任命されたころ、「いつまでも無料で引き受けたのでは、後進が育たない」というアドバイスを受け、プロとしてお金をいただくようにしました。

――信州上田観光大使になったいきさつは?

信州上田出身の武将・真田幸村公が大好きで、たまたま出演したテレビ番組でその愛を語っていたところを、上田市長がご覧になった、という縁です。

NHKの大河ドラマでは「この人物をドラマ化してほしい」という署名活動が行われることが多いんです。そこで信州上田の観光大使に就任後、幸村公の大河ドラマ化を願う会のお手伝いをして署名を集めました。ちなみに、それまでは『篤姫』が最高で30万人の署名でしたが、真田の家紋の六文銭にちなんで66万6666人が目標だったんです。目標達成はさすがに厳しいかと思っていましたが、結果的にはなんと84万人近くの署名が集まったんですよ。

――それはすごい! ところで真田幸村の魅力とは?

幸村公だけでなく、真田家って諦めの悪い一族なんです(笑)。苦境に立たされても卑怯と呼ばれても諦めない。池波正太郎さんの『真田太平記』でそんな真田一族を知ったのが、時代屋の立ち上げで落ち込んでいた時期で、本当に励まされました。

 

 

⇒次のページに続く 自らを「オタク」だという早川さんの「好き」と「活動のエネルギー」の源に迫ります!

プロフィール

早川知佐 (Chisa Hayakawa)

1977年東京生まれ。子どものころから人やモノの歴史に興味を抱き、古書店グループに入社後、2006年に歴史専門ショップ「歴史時代書房 時代屋」の企画・オープンを担当。初代店長に。「六龍堂」を屋号に、歴史プロデューサーとしてイベントの企画実施、商品開発、講演などを行う。2008年、戦国武将の真田幸村ファンとしての熱意が長野県上田市長に認められ、信州上田観光大使に就任。『NHK大河ドラマ 日本一の兵 真田幸村公放映の実現を願う会』の設立に参画し活動を牽引。異例の約84万人分の署名を集め、『真田丸』放映実現を引き寄せる。歴史を地域資源と捉え地域活性化に関する講演依頼も増加し、16年の登壇数は30回超。静岡在住。1児の母。

おすすめ記事

スポーツキャスター 宮下純一さん(1)スポーツキャスター 宮下純一さん(1)

ZOOM UP!

スポーツキャスター 宮下純一さん(1)

将棋棋士 佐々木勇気さん(1)将棋棋士 佐々木勇気さん(1)

ZOOM UP!

将棋棋士 佐々木勇気さん(1)

プラネタリウム・クリエーター 大平貴之さん(1)プラネタリウム・クリエーター 大平貴之さん(1)

ZOOM UP!

プラネタリウム・クリエーター 大平貴之さん(1)

Back to TOP

Back to
TOP