2020年度英語改革に向けて

家庭での英語学習~お子さまへの声かけ・サポート方法(1)

6月28日更新の記事でご紹介した、英語学習に関する小学1~6年生のZ会員の皆さまへのアンケート結果からは、ほとんどのお子さまが、学校あるいは家庭や学外で英語にふれている状況である様子がうかがえました。一方で、お子さまへの声のかけ方やどのようにアドバイスをすればよいかなどについてお困りの声も寄せられました。
そこで今回は、英語教育学がご専門で、英語の音声指導・語彙指導に詳しく、小学生の英語学習にも造詣が深い静岡大学教育学部教授の矢野淳先生に、ご家庭での具体的なお子さまへの声かけ・サポート方法についてうかがいました。

目次

【お子さまへの声かけ例】

【こんなときはどうしたらいい?】

お子さまへの声かけ例

英語学習への出遅れ感から苦手意識をもっているお子さまへの声かけ

――先に実施したアンケートから、Z会員のご家庭は非常に英語教育にも関心が高いことがうかがえました。3年生から小学校で英語必修化の準備が始まっている状況で、すでに就学前から英会話に通っているような方も多く、一方でお子さまが苦手意識・出遅れ感を感じてしまっているという「二極化」を心配する声が多く聞かれました。

3・4年生は2020年から「外国語活動」が必修となり、今年はまだ移行措置段階ではありますが、実質的にほとんどの小学校で3・4年生の「外国語活動」が始まっていますね。4年生は『Let’s Try!』の②のテキストは手にしていることと思いますが、①なしでいきなり②から始めるため、難しく感じられるお子さんが比較的多いのかもしれません。
ただ、3・4年生のうちは「文字を使わず音声で慣れ親しむ」ということになっています。文字が出てくるとますます抵抗感が強くなりますが、音声であれば、子どもはまねることが得意ですから、非常にうまく英語の発音をまねることができるんですね。保護者の方はぜひ発音を大げさなくらいほめてあげてください。

学校で学んだことを「お母さんにも教えて」と聞いてみてもいいでしょう。学校の授業だけではついていけるか心配でしたら、NHKの子ども向けの英語番組などを一緒に見て、保護者がともに楽しみながら学ぶ姿勢を見せるとよいと思います。まず保護者の方が発音してみて、お子さんもまねして発音したら「あら、あなたのほうがうまいじゃない!」とほめるきっかけにしてほしいものです。

早くから英語学習を始めた結果、すでに苦手意識がついているお子さまへの声かけ

――これまであまり英語学習をしていない子は食わず嫌いなところもあると思うのですが、もう少し上の学年で、英会話を習った結果としてすでに苦手意識がついてしまっているという声も聞かれました。

英会話教室などで一緒に習っているお友だちと比べてしまって引け目を感じているのですね。
あまり深みにはまらないうちに、初心にかえっていったんわかるところまで戻るのがよいと思います。「あなたのペースでいいから一緒にやっていこうね」と、保護者の方が安心させてあげてほしいですね。

――自分のペースで無理なく学んでいけばよいのですね。

一般に英語教育の世界では、正確さ、流暢さ、適切さなどを偏りなく指導していくことに留意していますが、小学生の段階では、正確さを求めすぎず、遊びのなかで身につけさせようという方針がよいのではないかと思います。子どもは大人の学び方と違って、文法がどうこうよりも、セットのフレーズで覚えてしまいますから。文法的な説明は中学以降でいいでしょう。

英会話は好きなのに、英語の文法や「書く」ことを嫌うお子さまへの声かけ

――5・6年生になると、せっかくある程度英語が話せるようになったのに、文法や「書く」段階で英語嫌いになってしまったというお悩みが聞かれました。中学校への橋渡しという点で、どのように切り替えていけばよいのでしょうか。

従来は5・6年生までは外国語活動でしたが、中学から「本格的な」英語学習が始まり、英語がおもしろくなくなってしまったという声はこれまでも聞かれていました。その問題が小学校高学年に降りてきているということなんですね。ポイントは、小学校の段階では英語を「書く」ことに関して新学習指導要領では「書き写す」となっていることです。アルファベットを書き写すところから始めるので、「きれいに書けたね」「読みやすいね」などといろいろな面でほめてあげてほしいと思います。

多くの中学校の教員から、最近の生徒は以前より発音に対する意識が高くて上手だという話を聞きます。一方で、最低限の文字指導を小学校でやってほしいという要望もよく聞きます。とくに、英語練習用の4本線でいう地上1階、地上2階、地下室の高さについてですね。たとえば「h」なのか「n」なのか解読に困るということです。地上1階部分が少し広くなった4本線で練習するとよいと思います。アルファベットは26文字しかありませんから、日本語の文字に比べたら格段に少ないのでがんばってほしいですね。
裏を返せばアルファベットは1文字が「忙しい」ということになります。1つの文字が置かれた「環境」によって何通りもの読み方をするんですね。たとえば「a」には少なくとも8通りの読み方があります。「あ」を「あ」としか読まず、ひらがな・カタカナ・漢字と数で勝負する日本語とは文字の体系が大きく異なるのが、日本人にとって英語を習得するのが難しい一因でもあります。英語の綴りとその発音にはある程度のルール(フォニックス)があるので、これを意識しておくと、かなり楽になるでしょう。

英語の読み方にはルールがあります。(Z会小学生コース専科英語教材より)

――これまでアルファベットといえば中学に入ってはじめに「ペンマンシップ」を学んでいました。書く練習はいつごろからが適当なのでしょうか。

新学習指導要領では5・6年生からということになっています。しかし国語でローマ字を3年生で習いますね。また、ローマ字は書けないけれどもキーボードでローマ字入力はできるという子もたくさんいます。ローマ字入力ができればパソコンで調べ学習ができますから。そのようにローマ字に興味をもったタイミングでアルファベットを学び始めるケースもあるでしょう。
教育には「readiness」という言葉があります。「Are you ready?」の「ready」、つまり、学習には心理的に準備が整った状態であるかどうかが大事という考え方です。その子にとっての学びの「旬」があり、無理に始めてもかえってマイナスになってしまうことがある。むやみに先取りさせるのではなく、お子さんをいちばんよくわかっている保護者の方に、そのタイミングの見極めをお願いしたいですね。

英語を話すことを恥ずかしがるお子さまへの声かけ

――お子さまの性格にもよると思いますが、英語を話すことを恥ずかしがるような場合はどう声をかけたらよいのでしょうか。

引っ込み思案のお子さんが、英語ならはきはきしゃべれるとか、別の人格になれる……などというケースも聞きます。
英語は学力に加えて、発音が上手とかコミュニケーションの態度が立派だとかほめる要素が多い教科だから、いっぱいほめてあげてほしいですね。「今の発音は絶対に通じると思うわ」「今、英語を話していた横顔がかっこよかった」「今、自然にジェスチャーが出てよかった」などと英語でコミュニケーションをはかろうという姿勢をほめてあげるのが効果的だと思います。

小学生が英語を学ぶうえでは、子どもたちが笑顔で英語を話す姿を大切にしてあげてください。より正確な、より洗練された英語は中学以降の学習に大いに頼る気持ちを持つことが必要でしょう。まちがうことや通じないことを恐れるあまり、英語を話そうとする気持ちが萎縮してしまってはいけません。日本語を完璧に話しているかと問われたら、恥ずかしながらわたしも「はい」とは言えませんから。

矢野淳(やの・じゅん)先生

東京学芸大学教育学研究科修了。中学・高校での英語教師を経て、1998年より静岡大学教育学部にて教員養成に携わる。

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