小田先生のさんすう力UP教室
数のセンスを鍛えよう
2017.7.27
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さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
こんにちは、最近1日に摂取する炭水化物の量を計算し始めた小田です。糖質ゼロ、みたいに極端な制限をするつもりは今のところありませんが、ラーメン、カレー、パスタ、みたいな食生活は改善していこうと思っています。しかし糖質が少なければいいか、と思って、逆に食べる量自体は増えているような気がしないでもない今日このごろです。
さて、今回は数のセンスを鍛える問題です。数のセンスは、計算練習を繰り返せば自動的についてくる、というものではありません。数のいろんな側面とふれあい、数と仲良くなることが大事です。今回も、数と一緒に楽しく遊んでくださいね。
それでは早速問題に行ってみましょう。
Stage29:数のセンスを鍛えよう
次の迷路について、スタートからゴールまで進んでください。
ただし、書かれている計算の答えが6で割り切れるマスだけ通ることができます。
指導のヒント
今回の問題は難問なので、最初からうまくできることはもちろん想定していません。ただ、それでも最初はお子さんの好きなようにやらせてみましょう。
まずは、それぞれ計算していってもかまいません。迷路を解きながら計算するのが大変、ということでしたら、あらかじめすべてのマスを計算してしまい、通れるところには○、通れないところには×、と書いていってしまってもいいでしょう。
地道に計算して答えにたどり着いた場合は、「よくがんばったね!」とまずはほめてあげてください。通れないはずのところを通っている場合は、その旨を指摘します。
解き終わって、余裕があるようなら「掛け算の答えを出さなくても、実は6で割り切れるかどうかわかるんだよ」という話をしてあげてください。(さんすう力UPのポイント参照)
解答
※色のついたマスが「通れるマス」です。
さんすう力UPのポイント
数のセンス、といってもいろいろとありますが、そのなかでも重要な要素のうちの一つは、やはり「素因数」の感覚でしょう。すなわち、「どういう掛け算でその数ができているか」を見抜く力です。
たとえば、60を掛算の形に“分解”してみましょう。どういう掛け算でもいいのですが、まずは「3×20」と分解したとします。この掛け合わせた要素のうち、3はもう掛算には分解できませんね(1×3とすることはできますが、それを許すと永遠に分解が終わらないので、1を使った掛け算は考えないものとします)。しかし、20のほうはまだ分解できます。そこで、4×5にしたとしましょう。5はこれ以上分解できませんが、4は2×2にすることができます。2は分解できないので、ここでおしまいです。
最終的には、60は「2×2×3×5」と分解することができました(図1)。このように、これ以上分解できなくなるところまで掛け算の形に分解していくことを「素因数分解」といい、最後にでてきた“構成要素”(2、2、3、5)のことを「素因数」と言います。ここで大事なことは、どういう順番で分解していっても、最初が同じ数ならば、出てくる「素因数」は最終的には必ず一緒になる、ということです(たとえば60なら、図2のように分解していっても、最後には「2、2、3、5」がでてきます)。
その数がどういう素因数をもつか、というのは、いわばその数の“個性”でもあります。そこに、その数がもつ特徴も表れてきます。たとえば、その数が何で割れるか、を知りたいときには、まさに素因数に注目するのがベストでしょう。素因数として2をもつ数は、2で割り切れます。逆に、2をもたない数は2で割り切れません。4=2×2なので、4で割り切れる数は素因数として2を2つもっていないといけません。今回の問題のように、「6で割れるかどうか」を考えるときには、「素因数として2、3が両方とも1回以上出てくるか」を見ればいいのです。もちろん、掛け算をする前と後でもっている素因数は変わりませんので、掛け算をする前の数のどちらかに入っていればだいじょうぶです。「12×7」は「12」が両方もっているのでOK、「9×8」は「9」が3を「8」が2をもっているのでOKです。逆に「7×9」は9が3をもっていますが、9も7も2をもっていないので、掛けても6では割れません。
何で割れるか、を感じ取る力は、算数の学習を進めていくうえで、大きな助けになります。分数の約分や通分でも必要になりますし、それも含めて計算に強くなります。今回は、素因数に注目することで、数の個性を知り、数と仲良くなってほしい、というのが出題のねらいです。
もっと問題
- 解答
※色のついたマスが「通れるマス」です。
いかがでしょうか。炭水化物量をコントロールし始めてから、2週間で2kg体重が減りました。あと、心なしかお腹周りの張りも落ち着いたような気がします。あとは運動量を増やしたりトレーニングで筋肉量を増やしたりすれば、健康的な生活も送れるのではないでしょうか。とはいえ、これからさらに暑い夏に突入していくのですよね。まあ、無理はしないよう、ほどほどにがんばりたいと思います。
それではまた来月!
文:小田・敏弘(おだ・としひろ) 数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。 公式サイト:http://kurotake.net/ 主な著書
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