小田先生のさんすう力UP教室

角度の感覚を鍛えよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。

 こんにちは、たこ焼きが好きな小田です。中高時代、学校帰りによく通っていたたこ焼き屋さんがありました。そのチェーン店が今住んでいるところの近くにもあったので、最近までそちらにもちょくちょく通っていたのですが、半年ほど前にその店舗が閉店してしまいました。残念です。

 さて、今回は角度の問題です。角度の問題は、ある程度スムーズに学習を進められる人と、なかなかうまく学習を進めていけない人と、両極端に分かれる分野です。その違いはどこにあるのか、を探っていくのが今回のテーマです。

 それでは早速問題に行ってみましょう。

Stage30:角度の感覚を鍛えよう

 以下の角度は、それぞれ何度くらいでしょう。ただし、定規や分度器などの道具を使って測ってはいけないものとします。

指導のヒント

 今回の問題は、正確な答えを求める問題ではありません。「だいたい何度くらいに見えるか」を問うのが趣旨です。

 もちろん、だからと言ってあてずっぽうで答えてほしいわけでもありません。お子さんが答えを出したら、正解かどうかを確認する前に、「どうしてそう思ったの?」と聞いてみてください。

 基本的には、自分なりに何かしら考えていればそれが正解です(解答で紹介するような考え方もありますが、それは一つの例です。お子さんの考え方と違ったときに、「こういう考え方もあるみたいだよ」と紹介していただくのはかまいません)。

 何も考えていない場合でも、だいたい正確な角度を答えられていれば、(趣旨とは違いますが)それはそれでOKです。なんとなく解答してだいぶずれている場合は、1つの問題を例にして、解答の考え方を紹介してあげてください。

解答

(1) 40度 (90度の半分より少し小さい)

(2) 130度 (90度より大きい部分が、30度(90度の1/3)より大きく、45度(90度の半分)より小さい)

(3) 260度 (270度(90度×3)より少し小さい)

 (「指導のヒント」でも書いたように、正確に当てることよりも、なぜその角度だと思ったのか、のほうを重視してください。)

さんすう力UPのポイント

 算数・数学の学習において、「わかる」ことと「できる」ことは、どちらが大事なのでしょうか。計算が“できて”も、ちゃんと“わかって”なければダメだ、と主張する人もいます。しかし、実際に問題を解いていく場面では、“わかって”はいるつもりなんだけど問題は“できない”ということもよくありますよね。結論を言ってしまえば、概念を“わかる”ことと技術的に“できる”ようになることはそれぞれ別の話であり、どちらが大事と言うよりも、どちらも大事で、それぞれバランスよく学習を進めていくことが重要、ということになります。

 さて、それでは、“わかって”“できる”ようになればそれでいいのでしょうか。わたしは、それでは少し足りない、と考えます。もう一つ“身につける”ことも大事だからです。

  よくある質問に、算数・数学の学習が何の役に立つのか、というものがありますね。しかしこの問いには、きちんと答えるのが難しい、根本的な問題が含まれています。それは、この質問がでてくる場面において、(多くのケースでは)尋ねる側が「まだ算数・数学を“身につけていない”人」であるのに対し、答える側が「ある程度算数・数学を“身につけている”人」であることです。

 実は、「ある程度算数・数学を“身につけている”人」にとって、算数・数学は考え方の一つの手段であり、その意味では究極的には“何の役にでも立つ”というのが答えになってしまうのです。しかし、そう答えたとしても、まだ“身につけていない”人にはピンとこないでしょう。具体例を挙げて、「これこれこういう場面で役に立つ」と説明することもできますが、質問した側が、自分の関心のあることと結びつけられなければ、やはり何の役に立っているのかはいまいちよくわからない、という反応になってしまいます。算数・数学が何の役に立つのか、というのは、自身が算数・数学を“身につけ”、実際に自分の興味のあるフィールドで使ってみないことには、なかなか本当の意味で納得することはできないでしょう。

 算数・数学は、今でこそ「学校の教科」や「テストの問題を解くもの」というイメージが強いですが、本来は学校やテストのために存在するものではありません。よくよく考えてみればあたりまえの話ですが、学校やテストが存在しない時代から、“算数・数学”はありました。その意味では、学校やテストから離れた場面で、自由に算数・数学の考え方を使えるようになること、つまり算数・数学を“身につける”ことは、算数・数学を学んでいくうえで一つ本質的な要素だと言えるでしょう。

  今回の問題は、角度の概念が“身について”いるかどうかを見る問題です。角度の意味を理解しただけ、角度の計算ができるだけ、では、問題の意図を理解するのが難しいでしょう。しかし、一度学校のテストから離れてしまえば、「あそこの角度はだいたいどれくらいだろう」と考える場面は、そう珍しくありません。そういった場面でも、自分のもっている“角度”の知識・技術を使いこなし、自然に考えて結論を出せるようになってほしい、というのが今回の問題のねらいです。

もっと問題

 次の角度を、それぞれだいたいでいいので書いてみてください。ただし、定規や分度器などの道具は使ってはいけません。

(1)80度  (2) 110度  (3) 320度

    • 解答

 


 いかがでしょうか。ちなみに、わたしは“ふわとろ”のたこ焼きが好きです。外がカリカリのたこ焼きは、それはそれでおいしいとは思っているのですが、あれは“たこ焼き”とは認めず、“揚げたこ焼き”だと思っています。まあ、そんな偉そうなことを言いつつ、大阪にいたころは某チェーン店以外のたこ焼きはあまり食べたことはなかったんですけどね。最近、県外の友人が大阪に遊びに来たとき、いろいろとたこ焼き屋さんを調べて、おいしいたこ焼きをたくさん知りました。さすが大阪。いろんなたこ焼きがあるんですね。大阪に帰った際にはまたいろいろとたこ焼きを食べて回りたいと思います。

 それではまた来月!

文:小田・敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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