小田先生のさんすう力UP教室

あてはめて問題を解いてみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。

 こんにちは、最近運動不足な小田です。仕事場が自宅から徒歩圏内なので、日によっては往復15分程度歩いただけ、あとは事務所で作業・授業のみ、ということもままあります。昔から歩くこと自体は好きなので、某モンスターを捕まえるアプリなどで遊びつつ、歩く時間を増やそうと試みたりすることもあるのですが、忙しい時期は「ただ歩く」という心の余裕も生まれてこず、うーん、どうしたものやら、と悩んだりもする今日この頃です。

 さて、今回は文章題ふうの問題です。大人の視点では、“文章題”というと決まった解き方があるように見えてしまいがちですね。しかし、そうやってパターン化してしまうことは、実は算数ができなくなる大きな原因の一つになってしまいます。まずは頭をまっさらにして、“文章でかかれたパズル”だと思って取り組んでみてください。

 それでは早速問題に行ってみましょう。

Stage31:あてはめて問題を解いてみよう

 あるお店で、リンゴとミカンを1個ずつ買うと合計で130円、ミカンとカキを1個ずつ買うと合計で120円、リンゴとカキを1個ずつ買うと合計で170円になります。

 リンゴ、ミカン、カキの1個ずつの値段は、それぞれいくらでしょう。

 

指導のヒント

 冒頭で書いたように、これは“パズル”であって、“文章題”ではありません。

 まずはいつも通り(そしてタイトル通り)、「あてはめていく」ことが大事です。

 考えこんでしまって手が止まっているお子さんには、「リンゴの値段を適当に決めてみよう」と提案してあげてください。「たとえば、リンゴが30円だったら、ミカンは何円になる?」という感じです。リンゴの値段を決めるとミカンの値段が決まり、そうするとカキの値段が決まります。そのリンゴとカキの値段をあわせて、170円になるかどうか、を調べさせてみましょう。

 逆に、あてはめて解きだしたお子さんについては、大いにほめてあげてください。決して「考えなさい」と言ったりしてはいけません。ご存知の方もいるかもしれませんが、この問題は“文章題”としての「解き方」があります。しかし、それを伝えることは、今回はあまり重要ではありません。

解答

リンゴ:90円、ミカン:40円、カキ:80円

さんすう力UPのポイント

 指導のヒントで少し触れたように、この問題はいわゆる“消去算”と呼ばれるものの一つで、「解き方」としては、すでに確立された方法があります。すなわち、「リンゴとミカンを1個ずつ」「ミカンとカキを1個ずつ」「リンゴとカキを1個ずつ」のセットを全部1セットずつ買うとどうなるか、を考えるのです。そうすると、値段は合計420円(=130+120+170)となり、それぞれの個数を数えると「すべて2個ずつ」となっているので、「すべて1個ずつ」の合計が210円(=420÷2)とわかります。あとは、これとたとえば「リンゴ1個、ミカン1個で130円」の条件と比較すれば、カキ1個が80円とわかります。

 もちろん、こういった“解き方”を知っているのであれば、その解き方を使って解けばいいでしょう。しかし問題は、この問題を初めて見る子に対して、どういうふうな指導をするか、ということです。

 文章題の指導において、見た目と「解き方」をリンクさせてしまうと、ときにそれは大きなリスクになります。たとえば、次のような問題はどうでしょう。

 Aさん、Bさん、Cさん、Dさんの4人でケーキバイキングに行きました。Aさんが食べた個数とBさんが食べた個数の合計は19個、BさんとCさんの食べた個数の合計は25個、CさんとDさんが食べた個数の合計は28個でした。食べた個数はDさん、Cさん、Bさん、Aさんの順に多かったとすると、それぞれが食べた個数は何個でしょう。

 細かいところは先ほどと違いますが、同じような問題に見えませんか。19+25+28=72、としてみたくなりませんか。しかしよくよく考えてみると、それらを足しても「全員の分を2回ずつ」数えたことにはならないので、2で割っても「全員の合計」が出てくるわけではありません。本質的に、「リンゴとミカンとカキの問題」とは違う問題なのです。見た目から「消去算かな?」といきなり思ってしまうと、この問題は解けません。

 見かけはよく似ていても、少し条件を変えただけでまったく別の問題になることは、算数ではよくあります。それらを細分化して、一つひとつの解き方を細かく覚えていく、というのは、かなり面倒でしょう。算数を得意にしていくためには、一つひとつの解き方ではなく、算数の道具を使いこなす力を鍛えたほうが、遠回りなように見えて実はいちばんの近道なのです。

 上記の「ケーキバイキング」の問題は、数値をあてはめていけば解くことができます。正解は、「Aさんが7個、Bさんが12個、Cさんが13個、Dさんが15個」なのですが、ここからAさんの個数を減らしても増やしても、他の条件(とくに大小関係)を満たすことができません。“あてはめて”解いていくなんて、もっと“考え”たほうがいいんじゃないか、と思いますか。しかし、2017.6.22更新の1・2年生向けの記事「論理の力を鍛えよう」などでも書いたように、「考え得る候補を挙げて、そこから条件と照合していく」という方法は、算数において最も大事な“考え”方です。その姿勢は根本的に重要なものであり、“文章題”であろうとなんだろうと、同じようにちゃんと通じるんだよ、というのを実感してほしい、というのが、今回の問題のねらいです。

もっと問題

(1)リンゴとミカンとカキが合わせて15個あります。ミカンの数はリンゴの数より少ないですが、カキの数よりは多いです。リンゴの数がカキの数より4個多いとき、それぞれ何個ありますか。

 

(2)裕也くんと優希くんと友子さんがあわせて20個の貝殻を拾いました。最初、裕也くんが拾った個数は、優希くんが拾った数よりも多く、友子さんが拾った数よりも7個多かったのですが、友子さんに4つあげたため、いちばん少なくなってしまいました。3人が最初に拾った貝殻はそれぞれ何個でしょう。

 

(3)阿藤さん、伊藤さん、宇藤さんの3人で、100枚のカードを取り合うゲームをしました。結果、阿藤さんは、最下位の宇藤さんに46枚差をつけて優勝しました。伊藤さんが取ったカードの数が阿藤さんの取ったカードの半分より少なく、宇藤さんが取ったカードの数も伊藤さんの取ったカードの半分より少ないとき、3人が取ったカードはそれぞれ何枚ですか。

    • 解答

 

(1) リンゴ:7個、ミカン:5個、カキ:3個

(2) 裕也くん:10個、優希くん:7個、友子さん:3個

(3) 阿藤さん:59枚、伊藤さん:28枚、宇藤さん:13枚


 いかがでしょうか。全然関係ない話ですが、先日、「11+12」が突然できなくなる日がありました。とある授業で生徒にパズルを解いてもらっていたのですが、その際、生徒に「この問題解けない」と言われたのです。手元の解答を確認すると、ヒントとして与えられている数値が、「11+12」の結果なのに「36」となっていたのでした。ここで訂正できればまだよかったのですが、なぜか「ごめん、そこ33で」と言ってしまった結果、またしばらくして「やっぱりこの問題解けないんですけど」と言われてしまいました。それはそうですよね。いろんな親御さんから「うちの子の計算ミス、どうしましょう」というご相談をよく受けるのですが、ミスは誰でもするものだ、と割り切って、むしろ「ドンマイ!」と励ましてあげるのが、いちばんいいんじゃないのかなあ、と(けっこう本気で)思っています。

それではまた来月!

文:小田・敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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