小田先生のさんすう力UP教室

数のパズルを楽しもう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。

 こんにちは、小さいころからパズルが好きだった小田です。小学校高学年のころは、友人にすすめられたペンシルパズル(いわゆるナンプレのような、紙と鉛筆があればできるパズル)にはまっていました。ペンシルパズルと言うと、やはりナンプレが有名ですが、それ以外にもさまざまな種類のものがあります。がちがちに理詰めで解くタイプのものから、ある程度感覚的に解いていく必要のあるものまで、いろいろとあるのですが、どちらかというと理詰めのタイプのほうが好きでした。

 さて、今回は数のパズルです。純粋に計算のパズルですので、難しいことはあまり考えず、ぜひお気軽に楽しんでください。

 それでは早速問題に行ってみましょう。

Stage32:数のパズルを楽しもう

 数字の書かれたパネルがあります。このパネルのマスをいくつかぬりつぶし、残った数字の積が、たて・横のどの列も12になるようにしてください。

指導のヒント

 いつも通り、まずは問題の意味を確認し、そのあとは自由にやってもらいましょう。

 「積」は「掛け算した答え」のことです。もし、問題の意味がわかりづらいようであれば、以下のような例を示してあげてください。なお、ナナメの列は、今回は関係ありません。

答えを出せたら、それぞれの列で「残った数字の積」が本当に12になっているかどうかを確認してあげてください。すべての列(たて・横)で12になっていれば正解です。なっていなければ、「ここが~になっているよ」と指摘してあげましょう。

 なかなか解いていくのが難しいようであれば、1列ずつ注目させてみましょう。最初は「この列を12にしようと思ったら、どの数字を消せばいい?」というくらいのヒントでかまいません。それでも難しいようなら、Stage29:数のセンスを鍛えようの「素因数分解」を再度確認してあげてください。

 また、「消したい数字をぬる」だけでなく、「残すことが確定した数字」に〇をつけておくと、少し解きやすくなるでしょう。

解答

さんすう力UPのポイント

 算数・数学の学習を進めていくうえで、また、実際に子どもたちの指導にあたって、ひとつ「難しいな」と感じていることがあります。

 それは、算数・数学の学習を進めていくと、途中で「理解を書き換えていく」必要のある場面にでくわすことです。

 一般的に、学習とは「これが正しいですよ」と提示されたことについて、納得し、習得していくことだ、というイメージがあります。その意味で、一度学習したものについては、それでその内容についての学習が“完了”するものだ、と認識されていることが多いでしょう。しかし、(本当は算数・数学の学習に限った話ではないのかもしれませんが、少なくとも)算数・数学においては、一度習得した“理解”を突き崩して、さらにもう一度“理解”を再構築していく必要があることが多いのです。

  たとえば、今回は“掛け算”のパズルです。Stage29:数のセンスを鍛えようでもお伝えしたように、数を素因数分解、すなわち“掛け算”した形で捉える、というのは、数のセンスとして一つ重要な要素です。しかし、素因数分解が大事だよ、という話をしても、即座に「なるほど」となる子は、実はそれほど多くありません。なぜなら多くの子たちにとっては、「掛け算は、足し算をまとめたもの」という理解であり、「掛け算によって数を構成していくことができる」というイメージがまだないからです。

 小学校で初めて掛け算を習う段階で、「掛け算とは同じ数を何回も足していくことだ」と教えることは、決してまちがいではありません。掛け算の導入としては、むしろほかのところから始めるのは難しいくらいでしょう。しかしそこで問題になるのは、「同じ数を何回も足していくこと」が「掛け算の正しい理解」だと思い込んでしまうことです。あくまでそれは掛け算の一つの側面であって、それだけでは掛け算をすべて理解したことにはならないからです。(今回の問題は、そういった観点から、“掛け算”について、新しいイメージにまずは慣れてほしい、というところにねらいがあります。)

  最初に学習したことを「正しい理解」と思い込んでしまうと、別のイメージが出てきたときに混乱し、「わからない」となってしまいます。算数・数学の学習をさらに先へと進めていくためには、そこで一度、今までもっていた自分の理解を見直し、新しい理解を獲得していく必要があります。そうやって、より豊かなイメージを含んだ、より深い理解へと更新していく、というのが算数・数学の学習では必要不可欠な姿勢なのです。

もっと問題

 数字の書かれたパネルがあります。このパネルのマスをいくつかぬりつぶし、残った数字の積が、たて・横のどの列も決められた数になるようにしてください。

    • 解答

 


 いかがでしょうか。先日、昨年度も参加した数学の大会(Stage20:仮定を立てて考えよう参照)にまたまたこっそり参加してきました。今年は昨年より出場チームも増え、レベルが上がったこともあり、あまりいい結果が残せませんでした。昨年も、ケアレスミスって出るよね、と言っていましたが、今年もいろいろとやらかしました。ちょうど先月も似たような話をしていましたが、わかっていないわけでもなく、練習が足りていないわけでもなく、まちがうときはまちがえるのだなあ、というのが率直な感想です。子どもを見ていると、「なんでそんなミスするんだ!」と思うときもありますが、実際に自分も同じ立場に立ってみると、そう簡単な話ではないんだなあ、と実感できますよね。せっかくの経験なので、今後の指導にもいかしていきたいと思います。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

 

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