小田先生のさんすう力UP教室

広さの感覚を身につけよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。

 こんにちは、タブレットで電子書籍を読むのにはまっている小田です。気になる本はとりあえず買っておく、という性格なのですが、電子書籍だとデータとして常にタブレットに入れて持ち歩けるので、すきま時間に読めるのがいいですよね。紙の本だと積読本は常に持ち歩くわけにもいかず、読もうかなと思ったときに手元にない、ということもよくありましたし。

 さて、今回は図形の問題です。今回はパズルというより算数的概念の本質を探っていく問題です。とはいえもちろん、いきなり“正解”を求めているわけではありませんので、お気軽にいろいろと考えてみてください。

 それではさっそく問題に行ってみましょう。

Stage33:広さの感覚を身につけよう

下の図の(あ)の形と(い)の形では、どちらのほうが大きいでしょう。

指導のヒント

 問題の意味はだいじょうぶでしょう。まずは自由に考えさせてみてください。

 「(あ)の方が大きい!」というようにどちらか一方を選んだときは、もう一方を指して「こっちの方が大きいようにも見えるけど」と返してみてください。「だって、~~」という感じで、自分がそう考えたわけを話し始めてくれたなら、それを聞いてあげることが大事です。「こっちのほうが大きい!」と再度返ってくるようであれば、「どうしてそっちのほうが大きいと言えるかな」というふうに、理由を考えるよう誘導してあげてください。

 答えを見ての通り、少し意地悪ですが、この問題の“正解”は「同じ」です。「どちらが大きいでしょう」という聞き方に惑わされずに、自分なりに考えて「同じ」と言えた子は、ぜひほめてあげてください。

解答

同じ(どちらも9マス分)

さんすう力UPのポイント

 小学校の中盤から、「図形の面積」という単元が出てきますが、苦手意識をもつ子が少なくない分野でもあります。その理由として考えられるものの一つは、やはり“公式”がたくさん出てくるからでしょう。やれ「台形の面積の公式」やら「円の面積の公式」やら、次から次へと新しい公式が登場し、ちょっと待って、こんなにたくさん公式なんて覚えられないよ! となってしまうのです。

 公式は覚えなくてもいい、考えればわかる、という人も一部にはいますが、正直に言えば、その意見には全面的に賛成できるわけではありません。もちろん、自分で考えてわかるのであれば、それに越したことはないでしょう。実際に、小学校で学習するレベルの公式であれば、自分で考えることもできますし、そうしてできるととても楽しいというのも事実です。しかし、小学校から中学、高校へと進んでいくと、どんどん公式は難しくなり、「自分で考えればわかる」という範囲を超えていきます。そもそも、「公式」というのは先人の知恵の結晶です。歴史上の天才が、苦心の末にようやく見つけ出した「公式」もたくさんあります。それを拒否する、というのは、あまりいい態度であるとは言えません。

 公式は、ある程度覚えることが大事です。とはいえ、ただ丸暗記していくだけでは、やはり覚えていくのに苦労するでしょう。また、がんばって覚えたとしても、すぐに忘れてしまいがちです。公式を覚えやすくする、そして忘れにくくするためには、覚えようとする前に「その公式が扱っているもの」に対する理解を深めておく必要があります。ある程度理解ができている状態であれば、公式を覚えるのもそう難しくはありません。一度覚えた公式もすぐには忘れないでしょう。そうやって、すでに自分のなかでつくりあげた「理解」の上に、公式を“置いてあげる(だけ)”というのが、「公式を覚える」ということの本来の意味なのです。

  たとえば、面積の公式が難しいと感じるのは、「面積」についての理解が浅いからです。面積とは何か、面積を考えるにはどういうアイディアがあるのか、そういった下地になるイメージがまだ十分ではない状態では、公式の“置き場”が自分のなかにありません。まずは、そのイメージを豊かにしておく必要があるのです。「面積とは何か」ということに対する一つの答えは「広さを数値化したもの」です。その意味では、今回のような問題で「マス目の数を数えてみる」というのがひとつ「面積を考える原型」になります。また、(い)の形を図のように変形させる、というアイディアも、とてもいい考え方です。「面積を変えないように分割したり組み替えたりして、求めやすい形に変える」というのは、まさに「平行四辺形」などの面積の公式の背景にあるアイディアです。

 そうやって「図形の大きさを比べるにはどうしたらいいのだろう」ということをいろいろと考えていくなかで、「面積」についてのイメージを豊かにしていってほしい、というのが、今回の問題のねらいです。

もっと問題

 次の(あ)~(え)の形のなかで、いちばん大きな形はどれでしょう。また、いちばん小さな形はどれでしょう。

 

    • 解答

いちばん大きい:(う)  いちばん小さい:(え)

(あ:7マス分、い:7マス分、う:8マス分、え:6マス分です。「半分」は「2つで1マス」と考えるとよいでしょう)


 いかがでしょうか。最近一気に寒くなってきましたね。毎年寒い季節になると「寒さに弱い」というネタでいろいろと書いてきましたが、毎年この時期は本当に「冬眠したいなあ」と日々思いながら生きています。暖房をきかせた部屋で仕事をしながら生徒を待っていると、いつも生徒は「先生、暑い!」と言いながら入ってくるので、子どもは元気でいいなあ、と思ったりもする今日このごろです。その割には、子どものほうが風邪をひきやすかったりするので、不思議な話なんですけどね。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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