小田先生のさんすう力UP教室

展開図を組み立てよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。

 こんにちは、今年の目標も「健康的な生活」に決めた小田です。去年もそんなことを言っていたような気がしますし、去年も「去年もそんなことを言っていたような気がする」と言っていたような気がしますが、きっと気のせいです。今年こそ三日坊主にならないように、と去年も言っていましたが、そもそも三日もやっていたかなあ、ということで、正直反省しています。今年はがんばります。

 さて、今回は立体図形の問題です。ちょうど1年前も同じく「展開図を組み立てよう」というテーマで書きました。その際は“センス”を主軸にお伝えしましたが、今回は技術的な面からアプローチしたいと思います。

 それではさっそく問題に行ってみましょう。

Stage35:展開図を組み立てよう

 図1のような、立方体(サイコロの形)があります。この立方体は、それぞれの面が4つの区画にわけられて、色がぬられています(3つの図は、1つの立方体をいろいろな方向から見た図です。それぞれの角に集まっている区画には、同じ色がぬられています)。

 図2は、この立方体を辺にそって切り開いた図です。色をぬって、正しい図にしてください。

指導のヒント

 まずは、問題の意味を確認してあげてください。「立体を切り開いて展開図にする」というのがピンとこなければ、「展開図を組み立てれば図1のような立体になるようにする」という説明でもだいじょうぶです。

 問題の意味が理解できたようであれば、最初はいつも通り好きにやらせてあげましょう。今回のテーマは“センス”とは別で“技術”的なものだ、と書きましたが、なんとなく感覚的にやって正解できていれば、それはそれでもOKです。

 立体の問題に慣れていない、もしくは、苦手意識があるようなら、印刷して切り取り、実際に組み立ててみてもかまいません。

 ある程度慣れてきた子であれば、組み立てずにやるよううながすのもよいでしょう。その際は「辺をまたいだ隣同士は同じ色」であることと、「どの色とどの色が同じ面にあるか」を意識するように伝えてください。

解答

さんすう力UPのポイント

 「算数をやるうえで、国語力は必要ですか」という質問をよくされます。しかし正直な話をすれば、この質問を聞くたび、「正確に答えるのはなかなか難しいな」と感じています。確かに、ある程度学習が進んで「文章題」などが入ってくると、「文章を読み取る力」が必要になる場面もあるでしょう。ただそれを「国語力」と呼ぶのか、というと、少し違和感もあるのです。

 「さんすう力」とひとくちに言っても中身がさまざまであるように、「国語力」とひとくちに言っても、おそらくその中身はさまざまでしょう。そのなかに「さんすう力」と重なる部分があるか、という質問であれば、その答えは確実に「イエス」です。具体的には、文章題で必要になるような「文章から情報を読み取る力」もその一つではありますが、そもそもそれ以前に「対象を言語化して捉える力」も、「さんすう力」の重要な要素の一つです。

 たとえば今回の問題で、「実際に頭のなかで組み立てていく」のは、できる子にとってはある程度できることかもしれませんが、それができない子にとってはなかなか難しいことでしょう。だからといって、この問題が「センスのない子にはできない」問題なのかというと、そういうわけではありません。「指導のヒント」で少し触れたように、「どの色とどの色が同じ面にあるか」を意識していけばいいからです。

 下の図アの赤く囲んだ面に注目してください。それぞれの区画をA、B、C、Dとすると、隣の面の色から、Aは黄色、Bは黄緑、というのはすぐにわかるでしょう。ポイントになるのは、その次のステップです。その次は、「反時計回りに黄色からたどって、黄色→黄緑→?→?になっている面はないかな」と探していくのです。そういう視点で図1を再度見てみると「黄色→黄緑→青→緑(反時計回り)」という面が見つかります。それ以外には、「黄色→黄緑→?→?(反時計回り)」という面はありませんね。よって、Dが青、Cが緑とわかります。あとは同じことを、隣の面、さらに隣の面、とやっていけばよいでしょう。

 重要なことは、「言葉」で考えることです。図形の情報を“言語”に変換することで、「頭のなかで図形のまま操作をする」という複雑な作業を避けることができるのです。

 算数・数学には、「感覚では届かない世界に、計算などでアプローチするための技術」という側面もあります。そのうちの一つとして、“言語化する”ことの重要性を感じてほしい、というのが、今回の問題のねらいです。

もっと問題

 図1のような、立方体(サイコロの形)があります。この立方体は、それぞれの面が4つの区画にわけられて、色がぬられています(3つの図は、1つの立方体をいろいろな方向から見た図です。それぞれの角に集まっている区画には、同じ色がぬられています)。

 図3~5は、この立方体を辺にそって切り開いた図です。それぞれ色をぬって、正しい図にしてください。

    • 解答

 いかがでしょうか。
 お正月には兄の家に遊びに行き、1歳になった姪に遊んでもらってきました。姪は新しくもらった玩具を開けて遊び始めたのですが、子どもってすごいですね。好きに遊ばせると、自分で「こうしてみよう」と考えて遊び方を工夫し始めるんですね。しかも、試行錯誤しながら、少しずつ遊び方がうまくなっていっていました。彼女のなかでは何かやってみようと思ったことがあったようで、途中で「できたー!」とうれしそうにもしていました。そうやって、何かしらやってみたいことがあって、いろいろとやってみて、できたときにうれしくなる気持ちが、「勉強」の原動力になるのでしょうね。同時に、それは算数などの「勉強」でも同じことで、その子どもの「勉強」を邪魔しているのは、周りの大人の「うまくできてほしい」という欲なのかもしれない、と反省した次第です。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

 

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