小田先生のさんすう力UP教室

図形のセンスを身につけよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、「日本・100名城」のスタンプを集めている小田です。先日城の日(4月6日)、なんと100名城の続編として「続・日本100名城」のスタンプラリーも始まりました。一応、お城をめぐるのはお城が好きだからなので、100名城以外でもおもしろそうなお城があれば行っていたのですが、そういったお城のなかからも、今回続100名城にいくつか選ばれていました。自分の気に入ったお城が選ばれてうれしい反面、もうちょっと早く選んでくれたらスタンプも押せたのになあ、とも思うので、少し複雑です。まあ、せっかくなので、そのうちもう一度行きたいと思います。

 さて、今回は図形の問題です。図形というと、「“センス”が大事」と言われることもよくありますが、その“センス”というのは、結局のところ、「どれだけ図形と触れ合ってきたか」だと思います。難しいことを考える前に、まずは図形と遊んでみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage38:図形のセンスを身につけよう

例題

 図の(ア)のパネルを何枚か並べて、(イ)の形を作ってください。

例題の答え

 今回は、問題の意味についてはいいでしょう。
 まずは好きなように解かせてあげてみてください。だいたいの形があっていれば、多少上手く描けていなくても正解でかまいません。図形が苦手な子の場合、右上の図のようにひとまわり小さな三角形になることがありますが、おまけで○をあげて大丈夫です(ただし、大きさが不ぞろいなときは「こことここは大きさ違わない?」と指摘してあげてください)。

 うまく解けない場合は、無理をせず、実際の形を動かしてみてください。印刷して切り取ってもかまいませんが、今回は直角二等辺三角形なので、折り紙を切り分けて作ってもいいでしょう。

解いてみよう

 図の(ア)のパネルを何枚か並べて、以下のそれぞれの形を作ってください。

解答

さんすう力UPのポイント

 「うちの子には図形の“センス”がないのかも」と悩む保護者の方は多いでしょう。実際に、そういったご相談もよく聞きます。「“センス”がない」と言ってしまうと、もう図形の問題は解けるようにならないような絶望的な響きすら感じますが、そもそも「図形の“センス”」とはいったいなんなのでしょうか。

 ひとくちに「図形の“センス”」と言っても、丁寧に分析していくと、そこにはさまざまな要素が含まれていることがわかります。そのなかでもとくに重要になるのは、「図形を見る力」「頭のなかで再現する力」「頭のなかで操作する力」などでしょう。そういったものを身につけていくためには、結局のところ「図形と触れ合う経験」をたくさん積むしかありません。

 人間は、見ているようで意外と見ていません。視界に入ってくるものを、なんとなく「これはあれっぽいなぁ」と認識しているだけです。ふだんの生活ではそれでもあまり困らないのですが、図形問題を解くとなるとそういうわけにはいきません。問題のなかで「三角形」が出てきても、頭の中には「三角形っぽいもの」が思い浮かぶだけで、細部の特徴まで正確にイメージすることができないからです。そうすると、なんとなく考えてしまって、なんとなくまちがえてしまいます。

 図形問題を解くときに図形の特徴を正確にイメージできるようになるためには、ふだんから図形をしっかり見ていることが大事です。今回の問題は、そのためのトレーニングです。直角二等辺三角形は、三角定規に採用されていることからもわかるように、最も基本的な図形の一つです。しかし実際に今回の問題を解いてもらうとわかりますが、慣れていない子は“直角二等辺三角形”をきれいに書くことがなかなかできません。大きさが不ぞろいになったり、まっすぐになるべき線がまっすぐになっていなかったりするでしょう。それはやはり「直角二等辺三角形はこんな感じ」と思っている頭のなかのイメージが、まだぼんやりしているからです。そういう子たちに、“直角三角形”をよく見て、その特徴を体で感じ取ってほしい、というのが今回の問題のねらいです。実際に図形を動かしてみて、いろいろと並べてみるなかで、「こことここをくっつけると綺麗に並ぶな」ということだったり、「こことここを並べようとするとはみでるな」ということだったりを、ぜひ発見してみてください。もちろん、ここにあげた問題を解くだけでなく、自分でいろんな形を作ってみることも、さらに深い学習になるでしょう。


 いかがでしょうか。

 いよいよ新学期が始まって、新しい学年がスタートしましたね。数理学習研究所は、受験指導もある程度していますが、本来は“算数・数学を勉強するところ”であるため、中学受験を終えても、引き続き“数学”を勉強しに来てくれる子が多いです。そうすると、付き合いの長い子も結構いるのですが、そういう子たちがいつのまにか大きくなっていくのを見るのは、とても楽しいですね。昔は正直「この子本当に大丈夫かな」と思っていた子でも、大きくなるにつれて立派にしっかりしていきますので、世のなかの保護者の皆さまも、安心してお子さまを見守っていただければ大丈夫ですよ。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

 

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