小田先生のさんすう力UP教室

決まるところから決めていこう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、最近運動不足を痛感している小田です。お腹周りにたくさんお肉がついてきた、とか、体脂肪率がついに“肥満”の領域に突入してきた、というのもあるのですが、それよりも何よりも、筋肉が硬くなってきて疲れやすくなってきているのを感じます。「うーん、どうしよう」とかくだらないことばかり言っている場合ではないですね。本格的に暑くなり始める前に、なるべく体を動かしていこうと思います。

 さて、今回は論理の問題です。よく、「論理的思考力」が大事、と言われますが、そもそも“論理的に考える”とはどういうことなのでしょうか。漠然と“考える”といっても、なかなか実際に“考える”ことはできません。“考える”というのは、ある程度技術的な部分があります。何を・どのように考えればいいのか、そのあたりにも気を配りながら、問題に挑戦してみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage39:決まるところから決めていこう

例題

 あいているマスに数字を入れ、たて・横のどの列にも1~3の数字がすべて1回ずつ入っているようにしてください。

例題の答え

 

 まずはいつも通り、問題の意味を確認してあげてください。たて・横それぞれの列に、同じ数が入らないように、というのを注意すれば、おそらくはだいじょうぶでしょう。“ななめ”については、今回の問題では同じ数が入ってもかまいません。

 問題の意味がわかれば、あとはいつものように好きにさせてあげましょう。答えが出たら、「たてや横に同じ数が入っていないか」「指定された数以外の数が入っていないか」などをチェックしてあげてください。もし、そういった部分があれば、「ここ2が2つ入っているよ」という感じでその部分を指摘します。

 なかなかうまくいかない場合は、後述の「さんすう力UPのポイント」を参考に、「決まるところから決めていこう」と声をかけてあげてください。

解いてみよう

 あいているマスに数字を入れ、たて・横のどの列にも、決められた数字がすべて1回ずつ入っているようにしてください。

解答

さんすう力UPのポイント

 4月号の記事(Stage37)で、「“考える”ことよりも“やってみる”ことのほうが大事だから、あまり“考える”ことを強調しすぎることはよくない」という話をしましたね。“考える”ことを強調しすぎることがよくない理由は、まだほかにもあります。それは、“考える”というのが技術的な部分を多く含んでいるから、ということです。“考える技術”をまだ身につけていない子に、「考えなさい」と言っても、見当はずれな結論しか出てこないことがほとんどでしょう。そうして「まちがう」ことをくり返してしまうと、やはり「考えたってわからないよ!」となってしまいます。

 きちんと“考え”られるようになるためには、まず考える技術を身につけなければいけません。その技術のうちのひとつが、今回のテーマである「決められるところから決めていく」というものです。

 

 例題をもう一度見てみてください。最初の状態では、右上のマス(図の赤いマス)は「1か3のどちらかが入る」ということしかわかりません(すぐ下に2があるので、2が入らない、というのはわかりますが)。しかし、真ん中のマス(図の青いマス)に注目すると、左右に1と2がすでに入っているので、ここには「3しか入らない」というのがわかります。この赤いマスのように「候補がいくつかあるところ」を後回しにし、青いマスのような「候補が1つに決まるところ」をうまく探し出すことが、今回の問題で重要な“考え方”になります(もちろん、そうやって順番に決めていけば、赤いマスもそのうち「候補が1つ」になってきます)。

 「論理的に考える」というと、「~だから~で、~だから~である」というふうに、“順序立てて結論を出す”というところに注目されがちです。それはそれでひとつの側面ではありますが、重要なポイントはそこではありません。それぞれの条件に対して「考えられる候補をすべてあげる」こと。「(赤いマスのように)候補が複数ある場合には、軽々しく結論を出すのではなく、保留してほかの条件をあたる」こと。そういった技術を習得してほしい、というのが今回のねらいでした。

 ちなみに、今回の問題は、「ラテン方格(方陣)」と呼ばれる古典的なパズルです。有名なところでいえば、「数独」や「ナンバープレース(ナンプレ)」のもとになった問題です。「解いてみよう」の問題だけでは物足りないな、と思った人は、ぜひそういったパズルにもチャレンジしてみてください。


 いかがでしょうか。

 季節の変わり目ということもあり、気温の安定しない日々が続きますね。そういえば、「気温が安定しないと体調を崩しやすい」というのは、長い間「昨日は暑かったから上着いらないや、と思って上着を持たずに家を出たら、実は気温の低い日で、そのまま過ごして風邪をひいてしまった」みたいなことだと思っていました。天気予報をしっかり確認したり、暑い日でも念のために上着を持って出かけたりすればだいじょうぶ、と正直思っていました。まあ、それでも体調を崩すときは崩すので、どうしたものやら、と。寒暖差が激しいと自律神経が乱れやすくなる、というのを最近知って、ひとつ賢くなった次第です。皆さまも、体調にはくれぐれもお気を付けください。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

 

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