小田先生のさんすう力UP教室

同じ形に分けてみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、暑さに弱い小田です。先月、最後にアイスの話をしましたが、実はまだあまり食べられていません。胃腸があまり強くないので、暑さで弱ったところに冷たいものを食べると、お腹を壊したりしてしまう、というのもあります。まあ、そんなことを言いつつ、「夏だから辛い物を食べて頑張ろう」とか言ってタンタンメンなどを食べたりして、お腹を壊したりもしているのですが。

 さて、今回は図形の問題です。図形の問題とはいえ、いくつかアプローチがあるので、図形が苦手、という人も取り組みやすいかもしれません。まずは気軽にチャレンジしてみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage41:同じ形に分けてみよう

例題

 下の図形を、点線にそって切り分け、2つの同じ形にしてください。

 ただし、裏返したり回転させたりして重なるものは、同じ形と考えてよいものとします。

例題の答え

 まずはいつも通り、問題の意味を確認してあげてください。とはいえ、今回はそれほど理解がしづらい問題でもないでしょう。「2つに分ける」ことと「それらが同じ形になる」ことが理解できていればOKです。あとは自由にやらせてあげればいいでしょう。

 自分なりに答えを出せたら、本当に同じ形に分けられているか、を確認してあげてください。形が同じなら正解、違っていれば「違うよ」と指摘してあげればいいでしょう。

 ヒントとしては、「マス目の数を考える」というのがあるのですが、自分で気づいてほしい、ということもあり、積極的にそれを伝える必要はあまりありません。どうしてもうまくいかなくて心が折れそうなときにだけ、「(分けたときの大きさがそろっていなければ)大きさ(マス目の数)がまず違うよね」というふうにさりげなく指摘してあげるのはありでしょう。

解いてみよう

 下の図形を、点線にそって切り分け、決められた数の同じ形にしてください。

 ただし、裏返したり回転させたりして重なるものは、同じ形と考えてよいものとします。

解答

さんすう力UPのポイント

 今回の問題は、算数・数学的なねらいがうんぬん、というよりも、むしろ単純にパズルとして楽しんでほしい問題で、わたし自身も好きなパズルのひとつです。考え方としては、「例題の答え」のところに書いたように、マス目の数に注目する、という方法があるでしょう。たとえば、例題であれば元の図形が10マスでできているので、2つに分けると5マスずつです。あとは、5マスの図形を考えて、同じ形になるように分ける、と考えていくのです。ただ、あくまでこれはアプローチのためのひとつの手段であって、マス目の数を考えれば必ず解けるか、というと、意外とそうでもありません。難しい問題になってくると「同じ形にする」という部分だけでも、結構難しかったりするからです。そういう意味では、例題の答えのところに書いたように、“解き方”として上から教えてしまうのではなく、解いていく途中のアイディアのひとつとして自分で発見してほしいな、というふうに思います。そうやって、いろんなことに気づきながら、ああでもないこうでもない、と楽しんでほしいな、というのが、今回の問題のねらいと言えばねらいです。そもそも、それが“パズル”の醍醐味ですしね。

 今回の問題は、ある程度解けるようになってきたら、自分で実際に作ってみるのも楽しいです。作り方としては、「適当な形を書いてそれを分けていく」よりも、「答えになるパーツを適当に作って、それを組み合わせて問題の形を作る」ほうがいいでしょう。

 作ったあとは、「ほかの分け方でも正解にならないか」を確認します。答えが2種類以上出ればパズルとして成立しない、というわけではありませんが、個人的な趣味としては、答えがひとつにきちんと決まるパズルのほうが、作っていて楽しいです。作ってみたけどほかの答えも出てしまい、やっぱり作り直す、といった“試行錯誤”が楽しい、というのもあります(もちろん、問題の形自体が対称な場合は、回転させたりしても答えになることがありますが、それは“同じ答え”と扱っていいでしょう)。そういったことも含めて、このパズルを楽しんでもらえるととてもうれしいです。

 同じ形を隙間なくくっつけていく、というのは、その作業そのものがまさに“パズル”です。「問題」として解かなくても、“上手くはまるところを見つけた瞬間”自体がとても楽しいです。算数・数学関係者だけでなく、多くの人を惹きつけてきたテーマでもあります。オランダの版画家、エッシャーもそのテーマに魅せられた一人でしょう。ちょうど今、そのエッシャーの展示会が東京上野で開かれていますね(東京での展示はもうすぐ終わってしまいますが、その後、大阪や愛媛、福岡にも巡回予定、とのことです)。個人的にも好きな画家の一人なので、もし興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度見に行ってほしいと思います。

 “同じ形をくっつけていく”ことで生まれる世界を、ぜひ楽しんでください。


 いかがでしょうか。

 そういえば、最近たこ焼きを食べていないような気がします。以前は、昔から好きだったチェーン店が家の近くにあったので、気が向くとちょくちょく買って食べていたのですが、そこが撤退してしまったため、あまり気軽に食べられなくなってしまいました。とはいえ、地元に帰ればたくさんあるはずなので、今年の夏はちょっと帰省しよう(そしてたこ焼きを食べよう)かな、と思います。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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