小田先生のさんすう力UP教室
図形のセンスを身につけよう2
2018.10.25
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さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)
こんにちは、この秋は健康的に過ごせたらいいな、と思っている小田です。6月には運動しよう、とか、8月はそうめん食べよう、とか言っていましたが、とりあえずお腹周りは大して変わっていない気がします。まあ、なんだかんだ言いつつ、基本的には三日坊主なので、定期的に「頑張る!」と宣言しておかないといけません。三日坊主も10回繰り返せば30日だ、みたいなことをどこかの誰かが言っていたような気がしないでもないです。今月は頑張って運動します。
さて、今回は立体図形の問題です。展開図を組み立てる、という定番の問題ですが、二次元に書かれたものを立体的に想像するのは、なかなか難しいかもしれません。その場合は無理せず、印刷したものを切り取って、実際に組み立てていただいて構いません。
それでは早速行ってみましょう。
Stage44: 図形のセンスを身につけよう2
例題
下の形を組み立てて、右のような立体を作ります。このとき、Aの点とくっつく点はどれですか。すべて選んでください。
例題の答え
D、F
問題の意味は大丈夫でしょう。ただ、もしかすると“右のような立体(正四面体)”をそもそも「見たことがない」ということはあるかもしれません。その場合は、無理に問題を解こうとはせず、実物を見せてあげたり、実際に展開図を組み立ててあげたりしてください。
問題を解いていく段階でも、なかなか正解が出ないようなら、実際に組み立てるのがいちばんです。今回の問題は、「解けるかどうか」よりも、「立体に慣れる機会を増やす」ということに重点を置いてあげてください。
解いてみよう
下のそれぞれの形を組み立てて、図のような立体を作ります。このとき、それぞれの図でAの点とくっつく点はどれですか。すべて選んでください。
解答
(1)C (2)M (3)K (4)C、E
(5)E、K (6)K、I (7)C、K (8)I
さんすう力UPのポイント
図形問題、とくに立体図形の問題には、やはり“センス”が必要、というイメージをもっている人もいるかもしれません。確かにそれはある面ではまちがいではないのですが、ただ、「センスがないからダメ」と諦めてしまうようなものでは決してない、というのは、きちんとお伝えしておかないといけないでしょう。
何をもって「センス」と言うのかもそもそも曖昧ではありますが、図形の、とくに立体図形の“センス”と言ったとき、その核となるのが「実際の立体と触れ合ってきた時間」であることはまちがいありません。
人が「平面に書かれた立体の図」から「立体図形」をイメージするとき、実は直接その“図”からはイメージしていないのではないか、と思うことがあります。たとえば、よく算数の問題で「立方体」として描かれるのは、下の図1のような図でしょう。しかし、よくよく考えてみると、実際に立方体がこの図1のように見えることは、ありえない、ということに気づきますか。サイコロなどで確認してみていただきたいのですが、図1のように一つの面(色を付けた面)が「正方形」に見えるとき、その面の正面から見る形になるので、他の面は見えない位置に来ているはずです。にもかかわらず、図1では他の2つの面が見えてしまっています。現実に近づけて書くのであれば、3つの面が見えるのは、頂点の方向から斜めに見る位置であり、その位置から見た場合、図2のように、正面の面も少し傾いていなければなりません(厳密には、辺も平行ではなく、遠近法を使って書くのが正しいかもしれません)。
その意味で、わたしたちが図1から「立方体」をイメージするとき、それは紙に書かれたものから情報を読み取っているのではなく、紙に書かれたものを通して、自分の頭の中からイメージを呼び出しているのではないか、と思うのです。
もちろん、図1のような書き方は「書き方」の一種なので、別にまちがいというわけではありません。しかし、実物の立方体をあまり見たことがない人が、この図のみから立方体をイメージするのは、それはそれで無理があるでしょう。
いずれにしても、立体のセンスを身につける、すなわち、立体を頭のなかでイメージできるようにするためには、実際にその立体を見たり触ったりする経験を増やすのがいちばん大事です。そうやって、自分の中に立体のイメージをあらかじめ作っておくことこそ、「立体のセンス」を磨くことだ、ということもできるでしょう。その「立体と触れ合う機会」を増やしてほしい、というのが、今回の問題のねらいです。
いかがでしょうか。
今年も、例年参加している数学の大会に参加してきました。3年目にしてようやくチームを組めたのですが、チームを組めたからと言って簡単に勝てるほど、世の中そんなに甘くありませんでした。高学年向けの記事で散々偉そうなことを書いておいて何なのですが、ミスが多かった、というのが敗因の一つとしてあるでしょう。やはり“現役”だった受験生のころと比べると、技術的な部分がずいぶん鈍ってしまっているように感じます。来年に向けて、鍛えなおしていきたいところですね。
それではまた来月!
文:小田 敏弘(おだ・としひろ) 数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。 公式サイト:http://kurotake.net/ 主な著書
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