小田先生のさんすう力UP教室

論理の力を鍛えよう2

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、授業中にはくだらないことばかり言っている小田です。先日、あまりにくだらないことばかり言いすぎて少し罪悪感を覚えたので、「くだらないことばかり言ってごめんね」と子どもに謝ってみたところ、子どものほうも「“くだらない”なら、のぼったの?」と返してきました。根はまじめなオトナとして、「“くだらない”は、“のぼる”または“そのまま”だ」と数学的に訂正を入れておきました。

 さて、今回は論理の問題です。一見するといわゆる“文章題”に見えるかもしれませんが、Stage42:論理の力を鍛えようでも書いたように、大事なことはやはり「パターンを列挙していき、その中から条件に合うものを見つける」ことです。まずはいろいろと試しにやってみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage45:論理の力を鍛えよう2

例題

 表に数字がそれぞれ1つずつ書かれたカードが2枚あり、それらが裏返しに置かれています。Aのカードに書かれている数とBのカードに書かれている数を足すと、10になります。また、Aのカードの数は、Bのカードの数の2つ分より大きいですが、3つ分よりは小さいです。A、Bそれぞれのカードに書かれている数は何でしょう。

例題の答え

A:7  B:3

解いてみよう

(1) 数字の書かれた2枚のカード、CとDがあります。CのカードとDのカードに書かれた数の合計は5です。Dの数がCの数より大きく、Cの数の2つ分より小さいとき、CとDの数はそれぞれいくらですか。

(2) 数字の書かれた2枚のカード、EとFがあります。EのカードとFのカードに書かれた数の合計は10です。Eの数が3より大きく、Fの数はEより大きいとき、EとFの数はそれぞれいくらですか。

(3) 数字の書かれた2枚のカード、GとHがあります。GのカードとHのカードに書かれた数の合計は15です。Gの数がHの数より3大きいとき、GとHの数はそれぞれいくらですか。

(4) 数字の書かれた3枚のカード、IとJとKがあります。3枚のカードに書かれた数の合計は15です。Kの数はIの数より4大きく、Jの数がIの数より大きくKの数より小さいとき、IとJとKの数はそれぞれいくらですか。

(5) 数字の書かれた3枚のカード、LとMとNがあります。3枚のカードに書かれた数の合計は20です。Nの数はLの数の2つ分より小さく、Mの数がLの数より大きくNの数より3小さいとき、LとMとNの数はそれぞれいくらですか。

解答

(1) C:2  D:3

(2) E:4  F:6

(3) G:9  H:6

(4) I:3  J:5  K:7

(5) L:5  M:6  N:9

さんすう力UPのポイント

 低学年のうちはそこまででもありませんが、学年が上がるにつれて、いわゆる“文章題”の比重が高まってきます。この“文章題”については、苦手意識をもつ子も多く、実際にひとつの大きな“つまずき”の要因になっています。保護者の方のなかには、そうした話を聞いて、先行きに不安を感じている方も少なくないでしょう。将来“文章題”でつまずかないよう、今のうちにできることがあればやっておきたい、と思う気持ちもわかります。しかし、それでは一体、具体的に何をやっておけばいいのでしょうか。

 わたしがひとつ大事だと思っているのは、「“文章題”は、数あてゲームである」というイメージを、どこかの段階で作ってあげることです。何をもって“文章題”というのか、については別に数学的にきちんとした定義があるわけでもありませんが、単に「文章で書かれた問題」をすべて“文章題”というわけではないでしょう。一般的には、「文章によって何らかの未知の数値に対しての情報が与えられ、それらの情報から知りたい数の値を考える」問題のことを、“文章題”と呼びます。こう書いてみると、まさに「要するに数あてゲーム」だと思いませんか。

 “文章題”というと、やれ線分図がどうとか、やれ計算式がどうとか、そういうことばかりに気が行きがちかもしれません。しかし、はっきり言ってしまえば、それらは大して重要なことではありません。それよりも、「とにかく隠された数をあてる」ということが、まずは一番大事です。極端な話、いろいろとそれらしき数をあてはめてみて、条件に合えば正解、条件に合わなければ不正解、とやっていっても本当はいいのです。もちろん、“うまく数をあてる”方法は、いろいろとあるでしょう。難しい問題になれば、いろいろとあてはめていくだけではなかなか答えが見つからないこともあります。そういった問題に対しては、効率的なアプローチを習得していく必要もあるでしょう。しかしそういった手法を学習していく下地として、原始的ではあっても「自分なりに“文章題”に対処できる」というイメージをもつことが重要なのです。

 結局文章題を解いていく上で必要なのは、まず「どういう値について言及されているかを把握する」ことと、それから「それらについて与えられている情報をきちんと拾い上げる」ことです。この2つがうまくできなければ、線分図などの図もかけませんし、計算式にも落とし込めません。実際に、文章題に苦手意識がある子の多くは、そもそもこの2つができていないことが多いです。そういった子に、式をかけ、図をかけ、と言っても、「自分にはできない」と思ってますます苦手意識を助長するだけでしょう。今回の問題では、「何の値を考えているか」が明白なので、「知りたい値」を意識しておくことは難しくありません。加えて、あてはめて解いていくなかで「問題の条件と照合する」作業をくり返すので、「問題文の情報」を自然と意識する機会も増やすことができます。そうやって、“文章題に対するイメージ”を固め、“文章題を解く基本”を身につけてほしい、というのが、今回の問題のねらいです。


 いかがでしょうか。

 そういえば、“くだらないこと”を毎回言っている、と最初に書きましたが、よくよく子どもの話を聞いてみると、他の塾の先生も、やはり授業中にオヤジギャグなどをおっしゃっていたりするようです。まじめな話をすると、人間は行動と感情が結びつく生き物なので、「楽しく勉強した時間」というのが、実はかなり大事なのではないかな、と思います。もちろん、オヤジギャグから生まれる楽しさは本質的には「勉強の楽しさ」ではありませんが、人生の早い段階でそういった時間を重ね、「よくわからないけど、勉強とは楽しいものだ」とまずは思わせることも重要だと思うのです。ご家庭でも、まずは「親御さんと和やかにおしゃべりをしながら(おやつでも食べながら)楽しく勉強する」時間を、ぜひ大事にしてあげてください。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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