小田先生のさんすうお悩み相談室(3~6年生)

ノートは何のためにとるのか

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? 保護者の皆さまから寄せられるさまざまなお悩みに、小田先生がするどくかつ丁寧にお答えしていきます。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、授業中にはくだらないことばかり言っている小田です。子どもたちも適当に愛想笑いをしてくれたり、ほどほどにツッコんだり、つつがなくスルーしてくれたりするのですが、先日、「ぼく、エコって知ってる!」と言っていた小学生に「ええ子やなぁ」と返してあげると、ちょっとウケました。これからも精進したいと思います。
 さて、今回は「ノートのとり方」についてのお悩みです。“子どものノート”というのは、得てして大人から見ると何が書いてあるのかよくわからないもの。そんなノートを見てしまうと、親御さんとしては不安になることもあるでしょう。そんな「ノートのとり方」についてのお悩みに答えていきたいと思います。
 それでは早速行ってみましょう。

お悩み9:ノートは何のためにとるのか

算数のノートのとり方がわかりません。そもそも、ノートをとりたがらないです。学校ではすでに整理されているドリルのようなノートを使っていることもあり、自分で内容を整理したり、順を追って式を書くことが苦手です(余白にばらばら書いたりします)。
「まじめな長女」タイプの女の子で、一つひとつわからないと悩むので「問題文を写したら?」といってみるのですが、ピンとこないようです。解けなかった問題は解答を見るのですが、そこに書かれている式がシンプルなので、難しく考えすぎたと拍子抜け(?)するのか、それを赤字で写して終わり、としてしまいます(絶対後でわからなくなるのに……)。
解き方も聞かれる問題では、解答用紙にはどうやって解いたかの説明をびっしり書いて長いので、見てる方がわからなくなります。
暗算は苦手で筆算しないと正しい計算ができない、ということもあるので、ノート以前の問題かもしれません。

(小4保護者)

さんすう力UPのポイント

勉強のできる子はノートをきれいに書いている?

 “ノート”に関するお悩みは、冒頭のもののほかに、

  • 途中の式を書くことを面倒くさがります。
  • ノートのとり方がわかっていないようです。
  • 息子の算数のノートを見るとグチャグチャです。親のわたしでも、解読できません。これでは、答えの確かめもできないです。算数ができるようになる、ノートのとり方やコツはありますでしょうか。

 などもいただいております。実際に子どもたちを指導していく中でも、保護者の方から「うちの子、ノートが汚いのですがどうすればいいでしょうか」というご相談をよく受けます。
 一般的には、「勉強のできる子はノートをきれいに書いている」というイメージがあるようですね。実際、書店には「ノートのとり方」に関する本がいくつも並んでいたりします。そういう視点で“ノートをきれいに書けていない子”を見ると、「この子はノートがきれいに書けていないのだけれど、大丈夫なのだろうか」と感じてしまうのも当然の流れです。しかも、「ノートをきれいに書きなさい!」と言ってみても、そうそう子どもがきれいにノートを書き始めるわけでもありません。不安もますます募っていくことでしょう。
 ただ、やはりひとつ確認しておきたいことは、「ノートをきれいに書くことは、そんなに大切なことですか」ということです。先述の通り、「勉強のできる子はノートがきれい」というイメージがある一方で、「ノートはきれいだけど成績にはつながっていない子も結構いる」というのは、皆さん心当たりがあるのではないでしょうか。
 忘れてほしくないのは、結局のところ、「ノートを書く」というのはあくまでも学習のための手段であって、それ自身が目的ではない、ということです。だからこそ、「ノートがきれいに書けているかどうか」よりも、そもそも「何のために書くのか」「書いたものをどう使うのか」を意識することのほうが大事です。
 算数の学習に限りませんが、学習の中で何かを「書く」シチュエーションにはいろいろな種類があります。そして、その場面場面に応じて、何のために何を書くのかは違ってきます。極端な話、場面によっては、むしろきれいに書かないほうがいい状況(きれいに書くことよりも素早く書くことのほうが重要な状況など)もあるわけです。そういった違いを無視して、ただ「きれいに書きなさい」と言っても、子どもは混乱するだけですし、たとえ素直に聞きいれて「きれいに書く」ようになったとしても、それは成績には結びつかないでしょう。
 「ノートの取り方の指導」の第一歩は、ただ「きれいに書く」ことを伝えることではなく、それよりもまず「ノートの使い方」を考えさせる(子どもがひとりで考えるのが難しそうであれば、一緒に考えてあげる)ということなのです。

1つ目のノートの使い方

 ノートの“使い方”には、大きく分けて3種類の使い方があると考えています。
 1つ目は、「メモ」です。新しい知識を得たときなどに、それを忘れてしまわないよう、記憶のバックアップとして一時的に何かに書きつけておく、という意味での「書く」行為です。
 この“メモ”は、記憶が薄れないうちに、どこかで時間の余裕を作って何かしらにまとめる、というのが“使い方”になります。まとめ終わったあとは、見返すこともあまりないので、そこでこの“ノート”の役割は終わりです。その意味では、必要以上に“きれい”に書く必要はありません(もちろん、後から見て何を書いたかがわからないくらい汚いのはまずいですが)。
 実は、「授業のノートをとる」というのも、本来はこの“メモ”を作成する、という使い方です。どんな形の授業であっても、基本的には、自分のペースで学習を進めていく、というわけにいきません。この場合、あとで見返して深めていくことを前提として、そのときに思い出すきっかけになるようなメモを作っておく、というのが「授業ノート」の本来の役割です。この“メモ”は、できればその日のうちに見返して、後述の“まとめノート”にまとめていく、というのがいいでしょう。もちろん、授業のペースにしっかりついていけて、授業中にその“まとめノート”並みの“メモ”が作れるのならばそれをそのまま“まとめノート”に流用してかまいませんが、あくまでも本質はそこではない、というのは意識しておく必要があるでしょう。

2つ目のノートの使い方

 ノートの使い方の2つ目は、「問題演習のためのノート」です(冒頭の“お悩み”のポイントの1つでもありますね)。とくに、算数の学習においては、「問題を解く」ときにそれをすべて頭の中で完結させることが難しいので、脳の「作業場」の延長として“書く”ということが必要になります。
 「作業場」の延長であるということは、当然、作業の種類によって場所を分けなければいけません。算数の問題を解く、という流れでいくと、「情報を整理するための場所」「答えをまとめるための場所」「計算をするための場所」という3つには、最低限分けておいたほうがいいでしょう。
 「情報を整理するための場所」には、問題文に書かれている情報を整理した図などを書いていきます。途中で分かった情報があれば、それも書き込んでいってかまいません。ここは、見たときに情報同士の関係がわかることが大事なので、ある程度整理して書いていく必要があります(これに関しては、きちんとした技術的な指導が必要なため、今回はあまり深く触れず、機会があれば、また別の回にお話ししたいと思います)。
 一方で、「答えをまとめるための場所」というのは、要するに「答案」を書く場所です。「答案を書く」というのは、「(どういう順番で解いたかを)誰かに伝える」ということです。(自習などで)その「答案」を誰かに見せる予定がなくても、「答案を書く」以上は、「誰かに伝える」練習ではあるはずです。ということはもちろん、これは“きれいに”書く必要がありますし、「わかりやすく」書く必要もあるでしょう(ちなみに、多くの参考書や問題集の「解説」はあくまで「答案」であって、「考え方」ではありません。冒頭のお悩みで書かれているように、“シンプル”なのはそういうことです。学習を進める上で、そこは意識しておいたほうがいいでしょう)。
 ざっくり言ってしまうと、前者が「答えを出すまでに書く場所」であって後者が「答えが出た後に書く場所」ということですが、「情報を整理する場所」と「解き方を書いていく場所」を分けることを意識するのは、問題を解いていきやすくするためにも重要です。時間の限られたテストであれば「解き方を考えながら答案も書いていく」必要がありますし、簡単な問題なら「頭の中で解きながら答案を作っていく」こともできますが、本来は「解き方を考える」ことと「解き方を書いていく」ことは、全く別の作業です。同時にやろうとすると、やはり難しいのです。まずは「どうやれば答えが出そうか」を考え、一度答えまで出してから、今度は「どうやって説明すればいいか」を考える、というように段階を分けることで、それぞれの過程に集中しやすくなります。お悩みにも「解き方も聞かれる問題では、解答用紙にはどうやって解いたかの説明をびっしり書いて長い」とありますが、その説明を一旦書いてもらったうえで、この内容を上手くまとめるにはどうすればいいか、を考えるステップをもう一段解追加すればいいのです。
 もう1つの「計算をするための場所」というのは、文字通り計算をするための場所です。冒頭のお悩みでも「暗算は苦手で筆算しないと正しい計算ができないのがよくないのでは」という旨が書かれていますが、こちらは「筆算しないといけない」ことそのものではなく、その「筆算」が「情報整理」や「答案」に混ざってくることがよくない、と言えるでしょう。ちなみに、この「計算をするための場所」というのは、答えがまちがっていた時にだけ、解いた直後に自分でチェックする、という“使い方”をするものなので、計算用紙にやってしまって解き終えたら捨てる、というのでも全然かまいません(ただもちろん、そのあとに保護者の方や先生などの“指導者”が、その子の解いている様子を分析したい場合は、そのチェックのために残しておく、という必要はあるでしょう)。
 いずれにしても、この「問題演習ノート」もあくまで「作業場」の代わりなので、その作業が終わったら(つまり問題を解き終えたら)あとはお役御免です。問題を解いていく中で得たものがあれば、やはり“まとめノート”にまとめていくので、「問題演習ノート」自体はあまり見返す必要がありません。

3つ目のノートの使い方

 ノートの使い方の最後の1つは、「まとめノート」です。これは、ふだんの学習の中で何度も見返したり、大きなテストの直前に見直したりするためのノートです。ある意味では、一番重要なノートと言ってもいいでしょう。授業や問題演習などで得た“新しいこと”を、さらに深めてまとめていきます。もちろん、教科やテーマ別に分けておいたほうがいいですね。“テーマ”というのは、内容に関してでもいいですが、たとえば「まちがえた問題」や「用語集」、「自分で研究したこと」などもそれぞれ“テーマ”の1つです。その中には、「授業で習ったこと」が入るときもあるでしょう。「授業ノート」と何が違うのか、といえば、「授業ノート」はあくまでメモであり、「まとめノート」はきちんと時間をとってまとめるノートだ、ということです。もちろん、先述の通り、授業中にきちんときれいにまとめる余裕があれば、授業ノートをそのまままとめノートに流用してもかまいませんが、授業後に「授業で習ったこと」をさらに自分でもいろいろと調べたり考えたりして「まとめノート」にまとめれば、大きく学習にプラスになるでしょう(要するに、それがいわゆる“復習”ということです)。

ノートを上手に使うようになる、たった1つのこと

 こうやって見てみると、「ノートをとる」と言っても、その中身は多様であることに気づきますね。ひとまず、単に「ノートをきれいに書きなさい!」というだけではあまり意味がない、ということは納得していただけたでしょうか。
 これだけいろいろと挙げていくと、じゃあどういうときにどう指導すればいいのか、と思う方もおられるかもしれません。それについては、すべてを一気に解決する根本的な方法が1つだけあります。それは、「勉強に対して前向きに取り組めるようにしてあげる」ことです。
 勉強が好きになれば、勉強に対して前向きに取り組もうという気持ちになれば、自然とノートの使い方も工夫するようになります。ノートが学習を進める上で、大きな役割を担っていることはまちがいありません。もっといろんなことを知りたい、もっとできるようになりたいと思ったとき、自然とそのためにどうノートを使えばいいかを考え、試行錯誤しながら、自分にとって一番いいノートの使い方を探していくことになるでしょう。
 実際、わたしもいろんな子どもを見てきましたが、勉強に対して前向きに取り組むようになった生徒は、例外なく“いつの間にか”ノートをうまく使えるようになっています。そういった子たちに「ノートの書き方について誰かに何か言われたりした?」と聞いてみても、「別にそういうわけではない」という答えが返ってきます。
 その意味では、「ノートの使い方」について周りが口うるさくいってしまうことで、勉強に対するやる気をなくしてしまう、というのが、実は「ノート指導」の一番の失敗なのかもしれません。
 まずは、ぐちゃぐちゃであっても、子どもが子どもなりにノートを書いていれば、「頑張って書いたね!」とほめてあげてください。そういった温かい目で見守りながら、「勉強の楽しさ」そのものを、ぜひ伝えていってあげてください。


  いかがでしょうか。
  そういえば、“くだらないこと”を毎回言っている、と最初に書きましたが、よくよく子どもの話を聞いてみると、他の塾の先生も、やはり授業中にオヤジギャグなどをおっしゃっていたりするようです。まじめな話をすると、人間は行動と感情が結びつく生き物なので、「楽しく勉強した時間」というのが、実はかなり大事なのではないかな、と思います。もちろん、オヤジギャグから生まれる楽しさは本質的には「勉強の楽しさ」ではありませんが、人生の早い段階でそういった時間を重ね、「よくわからないけど、勉強とは楽しいものだ」とまずは思わせることも重要だと思うのです。ご家庭でも、まずは「親御さんと和やかにおしゃべりをしながら(おやつでも食べながら)楽しく勉強する」時間を、ぜひ大事にしてあげてください。

 それではまた来月!

保護者の皆さまから算数のお悩みを募集します!

お子さまの算数の学習に関して、悩んでいることやお困りのことはありませんか。もしございましたら投稿フォームからお送りください。どのような内容でも大歓迎です!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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