小田先生のさんすう力UP教室
図形のセンスを身につけよう
2019.4.25
9.1K
さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)
こんにちは、餃子が好きな小田です。最近は冷凍のおいしい餃子も増えてきましたよね。焼き餃子はまだまだ技術不足なのでなかなかできませんが、餃子スープならお手軽に作れるのがありがたいです。栄養バランスもいいみたいですしね。そのうち、おいしく焼く技術を習得したり、あとは蒸し餃子もできるようになったりしたいな、と思う今日この頃です。
さて、今回は図形の問題です。「問題」と言っても、パズルのようなものですので、まずは気軽にチャレンジしてみてください。
それでは早速行ってみましょう。
Stage50:図形のセンスを身につけよう
例題
図の(ア)と(イ)のパネルをそれぞれ何枚か並べて、(ウ)の形を作ってください。
例題の答え
今回の問題は、意味が分からない、というのはあまりないでしょう。お子さまが取り組むのを温かく見守りましょう。
定規を使うことは基本的に推奨していませんが、その代わり、多少きれいにかけていなくても、だいたい正しい感じに書こうとしていると感じたら、ぜひ正解にしてあげてください。目安としては、それぞれ使われている枚数が正しければ正解、としてしまっていいでしょう。
手が動かない場合は、まず「だいたいでいいよ」と声をかけてあげてください。それでも困っている場合や、なかなかうまく解けない場合は、(あ)や(い)の形を下記より印刷して切り取って実際に並べてみても構いません。できれば最初は枠なしで並べていくのがいいですが、それも難しそうなら枠の中に並べていっても大丈夫です。
★問題の印刷はこちらから★
正解かどうかの判定は、上記のように枚数で判断すればいいですが、枚数が多かったり少なかったりするときは、「こんなにたくさん入るかな?」「もう少し入るんじゃないかな?」とたずねてみましょう。また、曲線部分と直線部分の区別がついていないと感じるときは、「ここはまっすぐだよ」「ここは丸くなっているね」と伝えてあげてください。
解いてみよう
図の(ア)と(イ)のパネルを何枚か並べて、以下の形をそれぞれ作ってください。
★問題の印刷はこちらから★
解答
さんすう力UPのポイント
図形の学習をはじめる際、最初の一歩にあたるのは、やはり「図形をしっかり見る」ということでしょう。
これは子どもに限った話ではありませんが、人間というのは意外と「ものの形」をちゃんと見ていないものです。たとえば、興味のないアイドルグループのメンバーは全員同じ顔に見える、という話もありますね。意識して細部を見なければ区別がつかない、というのは、身に覚えがある人も多いでしょう。
もちろん、それが悪いと言っているのではありません。視界に入ったものすべてをしっかり見ようとすると、それはそれで疲れてしまいます。だからこそ、人はふだん漠然とモノを見ている、ということだと思うのですが、とくに図形の学習を進める際には、その事実を忘れてはいけません。
今回のような問題を実際に子どもに解かせてみると、最初から形を正確に書ける子は、ほとんどいません。たとえば、半円部分に(イ)を4枚入れたり2枚しか入れなかったり(図1)、というまちがいは、珍しいものではないのです。
カンの鋭い子であれば、書いてみてから違和感に気づくということもありますが、しかし一方で、自分の書いたものと問題の形を見比べて、それでも「同じ」に見えている子も、少なくありません。そのほかにも、(ア)を2つ並べるべきところで、(イ)を使ってしまったりする子もよく見かけます(図2)。当然、片側は凹んでしまうのですが、それも(ア)と同じように見えているみたいですね。
そういった状態の子どもたちに、まずやってほしいのが、実際に形をさわってみることです。(ア)や(イ)の形に紙を切り取り、実際に並べてみてほしいのです。そうすれば、半円には4枚も入らないこと、2枚ではたりないこと、曲線と直線をくっつけようとすると隙間ができること、そういったことが納得できるはずです。
誤った認識に対して、「違うでしょ」と言ってみても、あまり効果はありません。その子には“そのように見えて”いるからです。「違う」と言われてもなかなか納得がいかないでしょう。だからこそ、実際に形にふれて、自分の認識の誤りを納得できる形に持っていくことが大事なのです。
そうやって、図形とふれあう中で、自分の中の「形に対する漠然としたイメージ」を、少しずつ修正していってほしい、というのがこの問題のねらいです。
いかがでしょうか。
そういえば先日、なぜか過去にタイムスリップする夢を見ました。過去と言っても、私の記憶にあるくらいの過去なので、それほど昔ではないのですが、今では当たり前のようになっているものがなかった時期、というのを少し思い出した感じです。夢の中で印象に残ったのはなぜか電子マネーで、ピッとやろうと思ったけどできなかったんですよね。そのほかのものも含めて、思えば急速に便利な時代になったものです。いよいよ新元号となりますが、令和の時代も、また便利なものが増えて、きっといろいろと生活も変わっていくのでしょう。楽しみでもあり不安でもありますが、ほどほどに楽しみながら生きていければいいな、と思います。
それではまた来月!
文:小田 敏弘(おだ・としひろ) 数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。 公式サイト:http://kurotake.net/ 主な著書
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