子どもと楽しむ料理の科学

混ぜるだけ! カラフルラムネ菓子

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

ひんやり? しゅわしゅわ! ラムネ菓子の不思議

 もし今、手元にラムネ菓子があったら、一粒口に含んでみてください。ラムネが溶けるのと同時に、ラムネに触れている部分が少しひんやりするような気がしませんか? ラムネ菓子の種類によっては、口の中でしゅわしゅわするものもありますね。このひんやり感やしゅわしゅわ感には、ラムネに使われている材料の性質が関係しています。
 今回は、ラムネ菓子を食べると口の中がひんやりしたりしゅわしゅわしたりする理由と、手作りラムネの作り方について紹介します。

主な原料は3つ

 一般的なラムネ菓子のおもな原材料は、ブドウ糖、コーンスターチ(または馬鈴薯などのデンプン)、クエン酸の3つ。クエン酸は、柑橘類や梅干しなどに多く含まれる酸の仲間で、レモンのような酸味があります。これらのほかに色素や香料を加えて色や香りをつけているものもあります。
 ラムネ菓子のひんやり感を作り出しているのは「ブドウ糖」という糖の仲間で、果物やはちみつに含まれる甘味成分の一つです。果物やはちみつにはこれ以外にも「果糖」という糖が含まれています。また、上白糖やグラニュー糖、三温糖などのいわゆるお砂糖は「ショ糖」と呼ばれる糖が主成分になっています。

 さて、このブドウ糖には「水に溶けるときに周囲の熱を吸収する」という性質があります。ラムネを口に入れると、唾液に含まれる水分にブドウ糖が溶けるので、このとき口の中の熱を奪ってひんやり感じるというわけです。ショ糖も少しだけ熱を吸収するのですが、重さあたりの熱吸収量で比較するとブドウ糖はショ糖の約3倍の熱を吸収するため、よりひんやりと感じます。
 ちなみに、飴やガムなどに使われるキシリトールという甘味料は、溶けるときにブドウ糖の約2.5倍もの熱を吸収するので、一層ひんやりします。

 では、しゅわしゅわするのはなぜでしょうか。しゅわしゅわするタイプのラムネには、先ほどの3つの原材料に加えて「重曹(炭酸水素ナトリウム)」が使われています。重曹は、クエン酸と一緒に水に溶かすと、化学反応を起こし、二酸化炭素という気体を発生させます。これによって、ぶくぶく泡が立ち、口の中でしゅわしゅわと感じられるのです。
 また、この反応が起こる際にも、ブドウ糖が溶けるときに熱を吸収したのと同じように、周囲の熱を吸収します。そのため、しゅわしゅわ感と同時にひんやり感も感じるはずです。
 ラムネ菓子を作る際、ブドウ糖が手に入らない場合は、粉砂糖で代用することもできます。粉砂糖の主成分は、普通の砂糖と同じショ糖なので、ブドウ糖を使ったときのようなひんやり感は感じられませんが、重曹を使ったしゅわしゅわラムネにすると、クエン酸との化学反応によってひんやりするのでオススメです。

ラムネ菓子がひんやり、しゅわしゅわするのは……

「ブドウ糖が溶けるとき」と「重曹とクエン酸が反応するとき」に口の中の熱を奪い、同時に二酸化炭素の泡が発生するから!

作り方/レシピ

ラムネ菓子

材料
ブドウ糖(粉砂糖で代用可能) 50g
コーンスターチ(片栗粉で代用可能) 10g
クエン酸 小さじ1/4
重曹(しゅわしゅわにする場合) 小さじ1/4
<色水>
水 大さじ2
食用色素 耳かき1杯分

用意するもの
すり鉢、すりこぎ、粉ふるい、ボウル、バターナイフ、クッキングシート
型:小さめのクッキー型や計量スプーン。
小さじの半分量(2.5ml)の計量スプーンがあるとちょうど良いです。

※クエン酸や重曹はスーパーまたはドラッグストアで購入できます。掃除用のものと食用のものがあるので、必ず食用のものを使用してください。ブドウ糖はドラッグストア、食用色素はスーパーの製菓コーナーなどで購入できます。

準備

・水に食用色素を加え、色水を作っておく。

・ブドウ糖は、すり鉢で細かく砕きふるいにかける。

1.粉を混ぜ合わせる

ボウルにブドウ糖、コーンスターチ、クエン酸を入れてさっと混ぜる。

2.色水を加える

1に色水を少量ずつ加え、混ぜ合わせる。ぽろぽろとした塊ができ、強く押すと固まる程度になったらOK。
※水の量は合計小さじ1.5〜2程度が目安です。水を加えすぎると生地がべとついたり、やわらか過ぎて成形しにくくなったりするので、少量ずつ様子を見ながら加えましょう。
※白色のラムネを作るときは、色水の代わりにただの水を使ってください。
しゅわしゅわにする場合
2の後、重曹を加えてよく練り混ぜる。

3.型に詰める

2を型に詰めてよく押し固める。
クッキー型を使う場合は、クッキングシートの上にクッキー型を置いて5mm厚さに3を詰め、バターナイフなどでよく押し固めたら、型からそっと外す。
計量スプーンを使う場合は、スプーンいっぱいに3を詰め、よく押し固めたら、バターナイフなどを使って押し出すと上手に外せる。

4.乾燥させる

型から外し、クッキングシートなどの上に載せてしばらく乾燥させたらできあがり。
できたては、口に入れた瞬間ほろっと崩れてスッと溶けるソフトな食感、1日ほど乾燥させると、カリッとかみごたえのある食感に変わります。

プラス知識! 重曹で炭酸ジュースも作れます!

 重曹とクエン酸を使って、炭酸ジュースを手作りすることもできます。炭酸は、水に二酸化炭素が溶けたもの。飲み物を入れたボトルを密閉し、その中で二酸化炭素を発生させてしばらく置いておくと炭酸入りの飲み物に変わります。
 材料は水、砂糖、重曹、クエン酸。それから、500mlサイズの空ペットボトル(炭酸飲料のもの)を用意しましょう。ラムネ作りに使ったブドウ糖が余っていたら、砂糖の代わりにブドウ糖を使うとすっきりした甘さで飲みやすいです。
 ペットボトルに水250ml、砂糖小さじ4、クエン酸小さじ1弱を入れてよく混ぜ、冷蔵庫でよく冷やします。十分冷えたら、重曹小さじ1/2を加え、素早くペットボトルのふたを閉めましょう。重曹がだいたい溶けたら、しっかりとふたをして冷蔵庫に入れ、1時間ほど冷やしてできあがりです。氷を入れたグラスに注ぎ、香りづけにレモン一切れを絞ると微炭酸のレモンサイダーのような味になります。
 コップに水とクエン酸と重曹を入れて混ぜただけでも二酸化炭素は発生するので、見た目はしゅわしゅわして見えるのですが、ほとんどがそのまま空気中に逃げてしまうため、飲んでもあまり炭酸感はありません。密閉したボトルの中で反応させることで、二酸化炭素を逃さず、水に溶かすことができます。
 このとき、ボトルいっぱいに水を入れたり、炭酸飲料用でないボトルを使ったりすると、ボトルが破裂して危険なので、必ず炭酸飲料用のペットボトルを使い、水はボトルの容量の半分までにしてください。

7/25(木)更新の次回では、「卵の黄身だけ固めるには…」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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