小田先生のさんすう力UP教室

あてはまるものを探してみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、オリンピックのチケットもちゃっかり申し込んでみた小田です。前日くらいまではとくに申し込むつもりもなかったのですが、締切が半日伸びた、というニュースを見て、まあ滅多にあることでもないしな、と思い、当たればいいな、くらいの感じで申し込んでみました。さすがに開会式・閉会式は落選で、値段的には逆にほっとした部分もあるのですが、なんだかんだ言いつつ、また機会があればチャレンジしてみるかもしれません。
さて、今回は論理の問題です。「論理的思考力」とか「論理的に考える力」という単語はよく聞きますが、それって具体的に何なんだろう、と気になることはありませんか。今回は、そんな「論理的思考力」の中身を分析していきたいと思います。問題自体はそれほど難しくないですので、ぜひ気軽にチャレンジしてみてください。
それでは早速行ってみましょう。

Stage52:あてはまるものを探してみよう

例題

(ア)~(エ)のカードのうち、次の(i)、(ii)、(iii)すべてにあてはまるものを選んでください。
(i) ○の記号が書かれている。
(ii) 右上の記号は黒くぬられている。
(iii) ☆は書かれていない。

例題の答え

(ウ)

※ 他のカードが条件に合わない点
(ア) ○が書かれていない
(イ) 右上の形が黒くぬられていない
(エ) ☆が書かれている

問題の意味はいいでしょう。というよりも、今回は問題文をしっかり読むことそのものがメインのテーマです。まずは問題文(とくに条件のところ)を読むように促し、場合によってはお子さまに音読してもらってください。ひとりで読むのが難しい場合は、一緒に読んであげるのもいいでしょう。

お子さまが答えを出したら、本当に条件にあっているかどうかを一つひとつ一緒に確認してあげてください。すべての条件を満たしていれば正解、満たしていない条件があれば、具体的に「ここはそうなっていないね」と伝えてあげてください。

解いてみよう

(ア)~(ケ)のカードのうち、次の(i)、(ii)、(iii)、(iv)すべてにあてはまるものを、すべて選んでください。
(i) 左上には数字が書かれている。
(ii) 星(☆または★)が書かれている。
(iii) 黒くぬられた形は1つだけ書かれている。
(iv) 7以上の数字は書かれていない。

 

解答

(ウ)(キ)(ケ)

※ 他のカードが条件に合わない点
(ア) 黒くぬられた形がない
(イ) 7以上の数字が書かれている
(エ) 星が書かれていない
(オ) 黒くぬられた形が2つ書かれている
(カ) 7以上の数字が書かれている
(ク) 左上が数字ではない

さんすう力UPのポイント

お子さまが算数の学習を進めていくにあたって、その過程で「論理的思考力」を身につけていってほしいと思われる保護者の方も多いでしょう。「論理的思考力を身につけなければならない!」という話を聞くと、なるほど、と思ってしまいますし、「論理的に考える力が身についた!」という話を聞くと、それはいいことだ、と感じてしまうかもしれません。もちろん、そう思ったり感じたりすることは、別にまちがいではないのですが、しかし、冷静になって少し考えてほしいことがあります。それは、その「論理的に考える」とは一体どういうことなのか、そしてそうするためには具体的に何をどうする力が必要なのか、ということです。
「論理的思考」という言葉は、それ自体がとても漠然とした言葉です。そして実際、一口に「論理的思考力」といっても、いくつかの種類が考えられるものでもあります。その中で、算数の学習に役立てる、あるいは算数の学習の中で身につけていくことができるものは、どういうものなのでしょうか。
その疑問に対するひとつの答えとしては、「条件と照合する力」を挙げることができます。
算数の学習で「考える」必要のある場面のひとつは、やはり「問題を解く」ときでしょう。問題を解く、というのは、与えられた条件をすべて満たす「答え」を見つける、ということでもあります。たとえば、次のような問題があったとします。

ツルとカメがあわせて10匹います。足の数はあわせて24本です。それぞれ何匹いるでしょう。

いわゆるつるかめ算の問題ですね。これを「解く」というのは、「あわせて10匹」「足の数をあわせたら24本」という条件を満たすような「ツルとカメの数の組」を求めるということです。そういう意味では、この問題の「解き方」として、ツルとカメの数をあてはめていって「答え」を探してもいいわけです。「ツルが1匹カメが9匹」だと足の数は1×2+9×4=38本、「2匹と8匹」だと36本、……という感じで調べていくと、「ツルが8匹カメが2匹」のときに足の数が24本になるとわかります。
もちろん、数値が大きくなったり複雑になったりすると、単純に調べていくだけではなかなか答えが見つからないこともあるでしょう。そういった場面でも対応できるように「解き方」をいろいろと知っておくことも確かに大事です。しかしそれよりもさらに大事なことは、「条件にあてはまるものを探すことが一番の目的なのだ」ということを見失わないようにすることです。
その象徴となるのが、最後に条件と再度照合する姿勢でしょう。つるかめ算にもいろいろな「解き方」はありますが、どう解くにせよ、その過程でまちがいが入り込む可能性はゼロではありません。しかし、最後にもう一度条件と照合すれば、少なくともまちがえていたときに再度考え直すことはできるはずです。そのステップを挟むか挟まないかで、「正解」にたどりつける確率は大きく変わります。
自分の出した答えが本当に条件を満たしているのか、実際に確認することが、「論理の力」を身につける第一歩です。
今回の問題は、まずその「問題の条件と照合していく」ことの練習をする、というのがねらいです。
「世の中には正解のない問題がたくさんある。だから、正解のある問題ばかりを解いても意味がない」という話をしばしば耳にします。しかし個人的に、その主張には違和感を覚えます。何かを達成したかったり、困難に遭遇したりしたとき、それを「達成した」「解決した」状態というのは具体的に想定されているはずです。いわば、その状態を形作る要素が問題の「条件」であり、それを満たせば「正解」満たせなければ「不正解」である、ということができるでしょう。自分の状態と「正解」との差異を常に意識しておかなければ、「正解」からは容易に離れていってしまいます。「正解」から逃げずに「正解」と向き合う力を、ぜひ身につけていってほしいと思います。


 いかがでしょうか。

気候が安定しない時期に突入してしまいましたね。暑くなったり寒くなったり、というのも面倒ですが、雨になるのも個人的にはあまりうれしくありません。こういった時期は体調も崩しやすい時期ですので、お子さまだけでなく、ご家族の皆さまもどうぞご自愛ください。ちなみに、私はこの季節に備えて、そうめんを買い込みました。さっぱりしていて、体調が思わしくなくても気軽に食べられるところが魅力ですよね。あと、準備にそれほど手間がかからないところもいいです。ついでにいえば、買い込んでおけば、雨が降ったときに外に買い物に行かなくていい、というメリットもあります。そしてなにより「つゆ」つながり!……ということで、最近はそうめんばかり食べている毎日です。おいしいからいいですよね。

それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

まだZ会員ではない方

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