小田先生のさんすう力UP教室

同じ模様を探してみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

こんにちは、最近は昔の歌をよく聞いている小田です。少し前は、電子書籍で「昔の漫画」にハマっていましたが、その熱が歌のほうまで来てしまいました。漫画にしても歌にしても、リニューアルだったりカバーだったりで、懐かしいものが目に付く機会が増えた、というのはありますね。自分のお金を自由に使える世代、ということで、ねらい撃ちされているような気はします。まんまとその策略に乗ってしまっているわけですが、懐かしい気持ちになってしまうのは仕方ありません。なんだかんだ言いつつも、気持ちよくお金を使ってしまっているので、それはそれでいいのでしょう。

さて、今回は図形の問題です。2019年5月号と同じく、「図形をしっかり見る」ことをテーマにした問題です。特別な知識やひらめきなどは必要ない問題ですので、お気軽にチャレンジしてみてください。

それでは早速行ってみましょう。

Stage53:同じ模様を探してみよう

例題

(ア)~(オ)の形の中で、回転させると同じ模様になるものをペアにしていくと、1つだけ余るものがあります。それはどれでしょう。

例題の答え

(エ)

※(ア)と(ウ)、(イ)と(オ)がペアになる。

まずは問題の意味を確認してください。5つある図のうち、「同じもののペア」が2組あり、1つだけ「同じ図がない」ものがあります。「1つだけ余るものを答える」問題ですが、意味が伝わりにくい場合は、「同じものを2組探す」問題としてしまっても構いません(あくまでやりたいことは「同じものを探す」ことなので)。

手を付けづらそうにしている場合は、まず「どれとどれが同じ?」と聞いてあげてみてください。同じものをペアにしていけるようであれば、引き続き温かく見守ってあげましょう。それでも難しい場合は、具体的に1つの図を指して「これと同じものはほかにある?」と聞いてあげてください。それでもやはり難しい、という場合は、それぞれほかの紙に写し取ってみて、実際に回転させて比べてみても構いません。

答えが出たら、「どれとどれが同じだったか」を聞いてみましょう。違うもの同士をペアにしてしまっていた場合は、「違う部分」を具体的に指摘してあげましょう。たとえば、アとイであれば「アは真ん中に塗られていないけど、イは真ん中に塗られているね」という感じです。イ・エ・オの違いは少し難しいですが、2マスぬられた長方形のどの頂点にもう一つのマスがくっついているか、を確認するのがよいでしょう。

解いてみよう

(ア)~(ケ)の形の中で、回転させると同じ模様になるものをペアにしていくと、1つだけ余るものがあります。それはどれでしょう。

 

解答

(カ)

※(ア)と(キ)、(イ)と(ク)、(ウ)と(エ)、(オ)と(ケ)がペアになる。

さんすう力UPのポイント

2019年5月号でもお伝えしたように、図形の学習のスタートはやはり「図形をしっかり見る」ということでしょう。冒頭で述べたとおり、今回も同じテーマの問題です。5月号では、実際に形と触れ合うなかで、はめ込んでみたりくっつけてみたりして、「同じもの・違うもの」の感覚を正しく修正していく、というのがポイントでしたね。しかし、今回の問題では、実際に切り取って(写し取って)回転させてみたとしても「くっつかない」「はみでる」といった直接的な違和感があるわけではありません。そういった意味では、今回のほうが少しレベルアップしている、と言うこともできるでしょう。

今回の問題でひとつのキーとなるのは「図形を言語化してみる」という姿勢です。「言語化する」ということは、「意識の上に乗せる」ということでもあります。たとえば、例題の解説にも書いたように、「イは真ん中が塗られている」と言うことができれば、真ん中が塗られていないアなどは、イと「違うもの」と言い切ることができます。たとえそれまで漠然と「似たようなもの」と見えていたとしても、それを言葉にした瞬間から、「別のもの」に見えるようになるはずです。

図形を学習する過程において、「言葉にする」というのはそれ自体がひとつの重要な要素です。学習を進めていくにつれて、様々な種類の「形」の名前を覚えていきますね。たとえば、単に「四角形」を考えみても、それぞれの特徴に応じて「台形」「平行四辺形」「ひし形」「長方形」「正方形」といった名前が与えられています。そしてそれらには、きちんと言葉にされた「定義」があります。その「定義」こそ、似た図形をひとまとめにできる特徴、違う図形を差別化できる特徴を「言語化」したものなのです。

もちろん、図形を自分で自由に言語化できるようになるのは、とても難しいことでしょう。今回の問題でも、まだまだ言語化するのが難しいということであれば、実際に図を写し取って回転させてみたりしても構いません。見比べてもわからない、ということなら、薄めの紙に写して重ねてみる、という方法もあります。ただ、可能な限りで構わないので、少しずつでも「図形を言語化する」という営みに触れる機会を増やしていってほしい、というのが、今回の問題のねらいです。


 いかがでしょうか。

3月にリニューアルした『東大脳さんすうドリル 計算編』に引き続き、同シリーズの『図形編』もこの7月にリニューアルいたしました! 図形の“感覚”を磨いていくためには、「実際に図形と触れ合うこと」と「基本的な図形と慣れ親しむこと」が重要なのですが、それらの要素をしっかり凝縮したドリルになっているのではないか、と自負しております。低学年でこれから図形の学習を進めていきたいお子さまだけでなく、高学年ですでに図形に苦手意識をもってしまっているお子さまにも、ぜひ楽しんでいただきたい一冊です。よろしくお願いいたします。

それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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