子どもと楽しむ料理の科学

ハンバーグを作るときによくこねるのはなぜ?

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

ひき肉を「こねる」理由とは?

 洋食の定番、ハンバーグ。今も昔も、小学生が好きな食べ物ランキングのベスト10にランクインし続けている人気メニューです。
 家庭料理としてもポピュラーで、普段家で作るという方も結構いらっしゃると思います。そんなハンバーグ、レシピを見るとたいてい「粘りが出るまでよくこねる」と書いてありますよね。「混ぜる」ではなく「こねる」、しかも「粘りが出るまで」。この作業にはどんな意味があるのでしょうか。
 今回は、ひき肉をこねる理由やハンバーグをおいしく作るコツについて、科学的に解説します。

ひき肉をこねると何が起きる?

 ハンバーグのタネをよくこねると、肉の繊維同士が絡み合い、タネが崩れたり割れたりするのを防ぐ効果があります。いったいどういうことなのか解説する前に、肉の成分について紹介しましょう。

 私たちが普段食べている「肉」とは、主に動物の筋肉の部分です。筋肉は主に「アクチン」と「ミオシン」という2種類のタンパク質で作られています。「アクチン」と「ミオシン」はそれぞれ集まって細かい糸のような形をつくっていて、糸がより合わさってひもやつなを作るように、これらがさらにたくさん集まって束になり、筋肉の繊維を作り上げています。

 この2種類のタンパク質は食塩水に溶けやすく、ひき肉に塩を加えて練り混ぜると、ひき肉に含まれている水分に塩が溶けて食塩水になり、そこへアクチンやミオシンが溶け出してきます。これをさらに練り混ぜていくと、溶け出したアクチンとミオシンが絡み合います。ひもをバラバラの糸にして、その糸を集めて丸めたような状態をイメージしてみてください。これが「粘りが出る」という状態です。塩の役目はただ味をつけるだけじゃないんですね。

 この状態で加熱すると、アクチンとミオシンが絡み合ったまま焼き固められるため、崩れにくくしっかりとしたハンバーグになります。また、絡み合った糸の間に水分が保持されるため、肉汁が流れ出しにくく、しっとりジューシーに仕上がります。

 より効果的に粘りを出すコツは「よく冷やした状態で手早くこねること」です。粘りを出すのに重要なミオシンは熱に弱く、20℃以上になると粘りが出にくくなります。ひき肉をこねているうちに、室温や体温でだんだん温度が上がってくるので、ひき肉やボウルはよく冷やしておき、あまり熱が伝わらないうちに手早くこね上げると良いでしょう。
 このように「肉に塩を加え、こねて粘りを出す」という操作は、ソーセージ作りにも使われていますし、魚肉でも同様の現象が起こるため練り物づくりにも活用されています。魚肉に塩を加え“練って”作るから“練り物”というのです。

ハンバーグを作るときによくこねるのは……

筋肉中のタンパク質をしっかり絡まらせて、崩れにくく、肉汁をしっかり閉じ込めたハンバーグにするため!

作り方/レシピ

ハンバーグ

材料(3~4個分)
合びき肉 300g
玉ねぎ 1/4個
パン粉 1/2カップ
牛乳 大さじ4
卵 1個
食塩 小さじ1/2
こしょう 少々
ナツメグ 少々
サラダ油

<ソース>
トマトケチャップ 大さじ2
ウスターソース 大さじ1

<付け合わせ>
パプリカ 1/2個(2cm幅に切る)
ズッキーニ 1/2本(1cm厚さの輪切りにする)

1.下ごしらえ

合びき肉とボウルは冷蔵庫でよく冷やしておきましょう。
玉ねぎはみじん切りにして、サラダ油大さじ1/2を入れたフライパンでよく炒めます。薄く色づいたら取り出し、しっかりと冷ましておきます。
パン粉に牛乳を加えてしめらせておきます。

2.こねる

合びき肉に食塩、こしょう、ナツメグを加え、粘り気が出てまとまってくるまでよくこねます。粘りが出てタネがまとまってきたら、1の玉ねぎ、牛乳にひたしたパン粉を加え、卵を割り入れてよく混ぜ合わせます。

3.焼く

2のタネを3〜4等分し、小判型にしてフライパンに並べます。
テフロン加工のフライパンを使用する場合は、油を加えず、常温の状態から肉を並べて加熱すると焼き縮みが少なく、ジューシーに焼きあがります。加工のないフライパンを使用する場合は焦げ付いてしまうので、よく温めて油をなじませてから肉を入れるようにしましょう。
中火で温め、ジュージューと音がし始めたら少し火を弱め、弱めの中火で4分ほどじっくり焼きます。

4.付け合わせを用意する

ハンバーグを焼いている間に付け合わせを用意します。
小さめのフライパンにサラダ油小さじ1を入れ、中火で熱します。
パプリカとズッキーニを入れ、両面に焼き色がつくまで焼いて取り出します。

5.蒸し焼きにする

タネの厚さの1/3程度まで色が変わったら、ひっくり返します。
ふたをして、弱火で4〜5分蒸し焼きにします。
中央に串を刺して、 澄んだ汁が出てきたら焼き上がりです。

6.盛り付け

お皿に5のハンバーグをのせ、4の付け合わせを添えます。
トマトケチャップとウスターソースを合わせたソースをかけて出来上がりです。

プラス知識! 家では合びき、お弁当には豚・鶏ひき肉がおすすめ

 お弁当用にミニハンバーグやミートボールを作るという方もいらっしゃるかと思います。一般的にハンバーグのレシピには合びき肉を使うことが多いですが、お弁当には豚ひき肉や鶏ひき肉がおすすめです。これは、お肉の種類によって脂がとける温度が違うためです。
 この連載の第1回「お弁当に鶏の照り焼きがピッタリな理由」でもご紹介しましたが、合びき肉に使われている牛肉の脂は40〜50℃程度でとけます(温度に幅があるのは、種類の違う脂が混ざっているためです)。温かい状態で食べる場合、肉の脂は完全にとけているので食感を邪魔することなくジューシーに感じられますが、冷えた状態で食べると白く固まってボソボソとするため、食感を悪くしてしまいます。
 豚肉の脂がとけるのは33〜46℃、鶏肉は30〜32℃程度。私たちの口の中は、体温である36℃前後なので、鶏肉の脂であれば問題なくとけますし、豚肉も全てではありませんが脂がとけるため、牛肉ほどは気になりません。豚肉で作ったハンバーグもなかなかジューシーでおいしいですし、鶏肉のハンバーグはさっぱりしているので照り焼き味や、醤油+大葉など、和風の味付けによく合いますよ。

9/26(木)更新の次回では、「魚の生臭さを抑えるコツ」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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