子どもと楽しむ料理の科学

魚の生臭さを抑えるコツ

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

旬のさんまをおいしく食べるには?

 さんまがおいしい季節ですね。塩焼きにしてスダチを絞ったり、蒲焼にして食べたり、この時期ならではの旬の味を楽しみたいものです。
 ただ、さんまなどの青魚は足が早く、生臭くなりやすいのが難点です。いつでも獲れたて新鮮なものを食べられればよいですが、実際にはなかなかそうもいきません。魚が苦手なお子さまも少なくありませんが、独特の生臭さもその一因となっているようです。
 今回は、旬のさんまをよりおいしく食べられるよう、魚の生臭さを抑えるコツについて科学的に解説します。

生臭さを抑えるには「酸」が効く

 魚の生臭さの原因は「トリメチルアミン」という成分で、これが揮発して鼻の嗅細胞(においを感じる細胞)に届くと「生臭いにおい」として感じられます。
 この成分はアルカリ性なので、お酢や柑橘類、梅、トマトといった酸性の食材と組み合わせると、中和されて揮発しにくい状態になり、においとして感じにくくなります。さんまにスダチを絞って食べたり、サバを酢でしめたり、青魚を使った料理にはしばしば酸性の食材が使われますが、これらは爽やかな香りをつけたり、酸味でさっぱりとさせたりする以外にも、生臭さを抑える役割があったのです。
 ほかにも、イワシを梅干しと一緒に煮たり、トマトソースを添えたり、サバのみそ煮に隠し味として少量のお酢を加えるのも効果的です。料理だけでなく、魚を調理した後の生ゴミにお酢やレモン汁を振りかけておくと、生ゴミの嫌なにおいが抑えられます。

 下ごしらえにお酒を使うのも同様の理由です。⽇本酒やワインは弱酸性であり、さらにアルコールや香りの成分にも臭いを抑える効果があります。そのため、⿂に少量の調理酒や⽩ワインを振りかけ、10分ほど置いて拭き取ってから煮たり焼いたりすると、⽣臭さを抑えることができます。
 よりしっかりとにおいを抑えたい場合にはお酢を使います。お酒よりも酸性が強いため、より強い消臭効果が期待できます。そのまま使うと酸性が強すぎて身が固くなってしまうので、同量のお酒で薄めたお酢を魚にまぶし、5〜10分程度置いてからよく拭き取って調理しましょう。お酢の酸味成分である酢酸の沸点は118.1℃。表面に残った余分なお酢は焼いたり揚げたりする際にほとんど蒸発してしまうため、料理が酸っぱくなる心配はありません。また、しみ込んだお酢がごく少量残ることがありますが、酸味というよりも、塩気やコクを強調して味をしっかり感じさせる隠し味としてはたらきます。
 このほかに、しょうゆやみその香り、しょうが、スパイスの風味によってにおいを覆い隠すのも有効です。特にみそは、細かい粒子がにおい成分を吸着する効果もあります。
 今回紹介する「サンマのソテーとミニトマトのソース」は下ごしらえにお酢とお酒を使い、さらにミニトマトのソースを合わせてにおいを抑えました。おつとめ品など鮮度があまり良くない場合や、魚の生臭さが苦手な人におすすめのレシピです。新鮮な材料が手に入る場合や魚の生臭さが気にならない場合は、お酢を省いたりミニトマト以外のソースを合わせたりしても良いでしょう。

魚の生臭さを抑えるには……

アルカリ性のにおい成分「トリメチルアミン」を中和するために、酸性の食材を使う!

作り方/レシピ

サンマのソテーとミニトマトのソース

材料(2人分)
サンマ 2尾
お酢 大さじ2
酒 大さじ2
塩 ひとつまみ
ミニトマト 6個
粉チーズ 大さじ1
オレガノ お好みで
オリーブオイル
薄力粉
粗びき黒こしょう

1.サンマを開く
サンマは頭と内臓をとって開きにする。(魚屋さんや魚売り場で頼むとやってもらえます。)
自分でやる場合:頭と内臓をとって血や血合いを洗い、キッチンペーパーでよく水気を拭き取る。中骨にそって親指を入れ、手開きにする。尾の付け根で中骨を折り、少しずつ外し、残った腹骨は包丁で削ぎ取る。

2.サンマの下ごしらえ

開いたサンマの身を、半分の長さに切り、塩、酒、お酢を合わせたつけ汁に5分ほどひたす。

3.野菜を切る

ミニトマトはへたをとって4等分に切る。

4.焼く

サンマの水気をキッチンペーパーで拭き取り、薄力粉をまぶす。
フライパンにオリーブオイル小さじ1を入れて中火で加熱する。サンマを、皮目を下にして並べ入れる。両面をこんがりと焼いたら取り出して、お皿に盛る。

5.野菜を炒める

フライパンにオリーブオイル小さじ1を足して温め、3のミニトマトを入れて炒める。ミニトマトに火が通ったら火を弱め、ヘラなどでつぶしてソース状にし、粉チーズと、お好みでオレガノを加える。
サンマの上にかけ、粗挽き黒胡椒を振ってできあがり。

プラス知識! なぜ魚は生臭くなるのか?

 魚が生臭くなるのには、実は海水の塩分濃度が関係しています。陸上に暮らす動物でも海のなかを泳ぐ魚でも、細胞内の塩分濃度は0.9%程度。一方、海水の塩分濃度は約3%もあります。
 細胞のなかと外で溶け込んでいる成分の濃度が異なる場合、「浸透圧」によって薄い方から濃い方へと水分が浸み出し、濃度を等しくしようとする力がはたらきます。野菜に塩を振ると水分が出てくるのと同じですね。
 このままでは、海の生き物は細胞から水分が絞り出され、キャベツの塩もみのようにしなびてしまいますよね。それを防ぐため、魚は様々なアミノ酸やトリメチルアミンオキシドといった成分を細胞内に溜め込むことによって、細胞内の浸透圧と、海水の浸透圧とが釣り合うようにしています。
 ところが魚が死ぬと、魚の表面に住み着いている細菌がトリメチルアミンオキシドに作用し、生臭さの正体であるトリメチルアミンという物質に変えてしまいます。これが、魚が生臭くなる原因です。ちなみに鮎などの淡水魚は、トリメチルアミンオキシドが必要ないので、海の魚のようには生臭くなりません。
 トリメチルアミンは温度が高いほどよく生成されるので、魚を買って帰ったらなるべく常温に放置せず、すぐに冷蔵庫に入れる、使う直前に冷蔵庫から出すなど、低温で保存するよう心がけましょう。

10/24(木)更新の次回では、「新米」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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