親と子の本棚

誕生日の願いごと

子どもには本好きになってほしいけれど、どう選べばよいかわからない……。そんなときはこちらの「本棚」を参考にされてみてはいかがでしょうか。

タンポポをもったまま

『カルメラのねがい』より

カルメラは、キックボードにのって、畑のそばのでこぼこ道を快調に走っている。誕生日にもらったブレスレットがにぎやかな音をたてる。畑のこやしのにおいも、きょうは気にならない。マット・デ・ラ・ペーニャクリスチャン・ロビンソンの絵本『カルメラのねがい』のはじまりだ。
けさのこと。ろうそくを立てたパンケーキがテーブルにのっていた。

「ハッピーバースデー」の うたを うたってくれたあと、おかあさんは いいました。
「さあ、カルメラ。なんでも すきな ねがいごとを しなさい!」
でも、カルメラの ねがいは もう かなっていたのです。
おにいちゃんと おでかけの できる 7さいに なるのが、カルメラの ゆめだったのですから。

カートを押して、カルメラの前を歩くおにいちゃんは、くっついてくる妹がうっとおしい。それでも、コインランドリーの前で見つけたタンポポの綿毛に息をふきかけようとするカルメラに声をかける。――「カルメラ、ねがいごとは したのか? わたげを ふくときは、ねがいごとを するもんなんだよ」カルメラは、コインランドリーで洗濯をするおにいちゃんを手伝ったあとも、タンポポをもったまま、町へ出る。
タンポポをもったままのカルメラのあたまに、いろいろなことが浮かぶ。あこがれの「おやつマシン」――これが部屋にあれば、大好きなキャンディーがいくらでも食べられる。いそがしく働いているおかあさんが、すてきなホテルでゆっくり休んでいるようす。ようやく、この国に戻ってきたおとうさんがカルメラを抱きしめてくれるところ……。カルメラは、いったい何を願おうとしているのか。
ところが、家への帰り道、キックボードのタイヤがひっかかって、カルメラは、アスファルトの歩道にほうり出される。タンポポの綿毛も、ばらばらになってしまった。「あたしの……ねがいごとが……」としゃくりあげるカルメラの手をとって、おにいちゃんは、海を見下ろす崖までつれていく。

新しいスキー

『カルメラのねがい』は新刊の絵本だけれど、タンポポの花がいったんしぼんで、綿毛が飛びはじめるのは、春から夏のはじめにかけてからだから、11月号にはふさわしくないかもしれない。
エルサ・べスコフの絵本『雪のおしろへいったウッレ』は、冬の話。『カルメラのねがい』はアメリカの絵本だけれど、これは、スウェーデンの作品だ。主人公のウッレも、6歳の誕生日をむかえた。おとうさんは、新しいスキーをプレゼントしてくれる。早くすべってみたいのに、ことしは、なかなか雪が積もらない。

 けれど、ついに 冬は やってきました。
 クリスマスの 2しゅうかんまえに、おおきな雪が はらはらと まいはじめ、そのあと、まるふつかかん、ひるもよるも ふりつづいたのです。
 (中略)
 ウッレは どんなに うれしかったでしょう!

ウッレは、いそいで朝ごはんを食べて、あたたかい上着を着て、さっそく、スキーで森にむかう。森は、雪ですっかりきれいになっていた。ウッレは、冬の王様の魔法のお城みたいだと思う。そして、大きな声で呼びかける。――「ありがとう、やさしい冬王さま。やっと きてくださったんですね!」
呼びかけにこたえて、あらわれたのは霜じいさんで、ウッレは、冬王さまのお城に案内される。冬王さまは、「げんきのいい おとこのこ、とな。あえてうれしいぞ。」といって、ウッレにスケート靴を贈るという。

全部で四つの話

E・H・ミナリック『こぐまのくまくん』の第一話「くまくんと けがわのマント」でも、雪がふっている。

おお、さむい。
ほら、あんなにゆきがふっている。
こぐまのくまくんは、おかあさんにいいました。
「さむいよう。あんなにゆきがふっている。ぼく、なにかきるものがほしい」

おかあさんは、くまくんに何をしてくれただろう。
このほかに三つの話がおさめられていて、二つめが「くまくんの おたんじょうび」、四つめは「くまくんの ねがいごと」だ。

今月ご紹介した本

『カルメラのねがい』
マット・デ・ラ・ペーニャ 作、クリスチャン・ロビンソン 絵、石津ちひろ 訳
鈴木出版、2019年
おにいちゃんは、カルメラを海の近くまでつれていくと、「ほら、めを とじてごらん」という。「……ねがいごとを するんだ」と、カルメラは、目をとじる。
絵本のはじめには、作者の「わたしの祖父母、ヘズス&ナティビダ・デ・ラ・ペーニャと夢をもってアメリカへやってきたすべての人たちへ」という献辞がある。

『雪のおしろへいったウッレ』
エルサ・べスコフ 作・絵、石井登志子 訳
徳間書店、2014年
冬王さまのお城にむかう途中、霜じいさんは、小さなおばあさんを見つけて、どなる。――「また こんなにはやくに でてきおって。とっとと ひっこめ! 春になるまで、かおをだすな!」彼女は、雪どけばあさんだという。

はじめてよむどうわ1
『こぐまのくまくん』

E・H・ミナリック ぶん、モーリス・センダック え、まつおか きょうこ やく
福音館書店、1972年
第二話「くまくんの おたんじょうび」では、くまくんの誕生日だというのに、おかあさんがいない。そこへ、めんどり、あひる、ねこも、お祝いにおとずれる。

プロフィール

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)

1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学名誉教授。大阪国際児童文学振興財団理事長。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

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